天神まつり
あまがみまつり。漢字にすると天神祭。
ごくごく普通の高校生だった。
他の人と違うところがあるとすれば、両親がいなかったということだ。
離別でも離婚でも離籍したわけでもいない。
はじめからいなかった。記憶をさかのぼれる限りで、いないという結論に至った。
そして、祖母もいなかった。祖父もいなかった。
面倒を見てくれた親戚のおじさんが唯一の親代わりであった。
そんなおじさんも急に他界した。ほんとうに急だった。
その後ははやかった。
友人や先生の手助けのもとで、俺は高校生でいられた。
そんな暮らしをしていた高校生は、突然、化物に襲われる幻覚にあい、知らない女性と出
会う。
そして、帰宅する。
はじめて、学校をさぼったことを自覚する。
皆勤賞だったのにと後悔をする。
しかたがない。
そう言い聞かせながら、自身の部屋があるアパートへと向かった。
そして扉を開けようと思った時、違和感を覚えた。
カギがあわない。
鍵穴の途中まで入るわけでもない。
鍵穴の形が、カギと全く違う。何もかもが違う形だった。
鍵穴がカギを拒否しているかのようだった。
部屋を間違えたのかと表札を確認する。しかし、表札には天神祭とかかれていた。
まちがいなく俺の部屋であり、ここに住んでいたという自負がある。
じゃあ、ちがうカギだったのかとそう思った。
しかし、カギにぶら下がっている紙には、部屋のカギとかかれている。
頭が痛くなる。
とりあえず、友人のところへ行こう。そう思った。
日が暮れ始めている。そろそろ、学校も部活動も終わる時間帯だろう。
足早に、何かから逃げるように天神まつりは学校へ向かった。