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BACK HAND  作者: 空月メア
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出会いと別れ

それは寒い日の夜の出来事だった。

凍える手に息を吹きかけ、暖をとる。

その瞬間、目前におおきな化物があらわれた。

ついに幻覚がみえはじめたのだと、生意気にも死を覚悟した。

だが、次に覚めた時、見えたものはボロボロの天井だった。


???「ぐっどもーにんぐ。」


俺は誰かに話しかけられている。

そしてその誰かは、女性であることを理解した。


俺「あ……あの、ここはどこですか?」


声は出た。

そして、今現在、自身がどのような状況にあるのかということを確かめたいと願った。

しかし、起き上がることはできない。


知らない女性「ここは私のdeskで、そこは私のbedだ。」


知らない女性はそう答えた。

顔は見えない。

俺は、言うことを聞かない体にムチを打ち、体を起き上がらせる。

まぶしい光が顔を照らす。

どうやらここは、三階以上はある建物のようだ。窓からの景色がそれを理解させた。


俺「あ…あの、あなたはだれですか?」


おそらく、30代であろうか。

女性との、それも年上の女性とのかかわりは全くないのだが、年齢の予測はできる。

そして、長く青い髪色がとても印象的だった。

敵意はないが、油断は禁物だ。そう自然と感じた。


知らない女性「それって、Who is you?ってこと?私の名前を知りたいなら、まずは君の名前を教えてよ。What is your name?」


英語を混ぜてくるのはなぜなのか。しかし、初対面の相手で、年上の女性。

加えて、そのことを気にする余裕もない。

俺は自分の名前を答えた。


俺「天神。天神まつり。まつりの漢字は祭。」


素直に答えた。

しかし、青髪の女性からは何の返答もなかった。

しばらくの沈黙がよぎる。

そして、雲が太陽を覆い、窓の光が途絶えたとき、女性は口を動かした。


知らない女性「うん。私の名前は天上。天上ちさと。ちさとの漢字は千里。」


そして、天上千里は言葉を続けた。


天上千里「ここは、とあるビルの3階で、私の仕事場兼家でもある。つまり、私のテリト

リーだ。それで、まつり君は昨日、どこにいたか覚えてる?」


俺がどこにいたのか。

俺は脳の記憶を巡らせる。

その刹那、地響きのような音とともに、頭痛が響き渡った。

声が出せない。何も見ない。匂いもない。何も聞こえない。

ただ、痛みだけが聞こえる。痛みだけが俺を知っている。


???「まつり君!!」


その言葉で俺は、元居た場所へと引き戻される。


天上千里「まつり君!!まつり君!!」


俺の肩を揺らしながら、天上千里が叫んでいた。

とても初対面とは思えない。

まるで、長年、生活を共にしてきたものに対する叫びのようだった。


天上千里「大丈夫?とりあえず、私はこれから用があるから、しばらく休んでるといい。扉を出て、右手にトイレ。冷蔵庫のものは適当に食べていいから。」


そう言い残すと、天上千里は走り去っていった。

とても速かった。そう感じただけかもしれない。

だが、気づいたときには天上千里の姿はなかった。

体は動かなかい。立つこともできない状態だ。

そして、体が自由に動くようになった時。

冷蔵庫を開けた。お腹が空いていた。最後のご飯はいつだっただろう。

何を食べたのかすらも覚えていなかった。

とりあえず冷蔵庫を開けた。

中には、大量のパンが詰まっていた。

そして、そのパンの種類はさまざまであった。この様子だと、自炊という概念は彼女には

ないということだけは理解できた。

手前にあったパンを1つ、手に取る。何の味かは気にしなかった。

パンは冷蔵庫だけではなく、野菜室や冷凍庫、さらには製氷機にまで詰められていた。

天上千里にとってのパンは何なのだろうか。

そもそも、大きな冷蔵庫なのに用途がパン入れなのか。

見ないふりをした。

そして、壁にかけられた服、ジャケットを手に取り、それを羽織った。

おそらく、天上千里のものである。

しかし、自身が着ている服は薄手であった。

外は冬の季節で、寒い風が吹いている。

なりふりかまっている場合ではない。

昨日の記憶はないが、それ以前の記憶は存在する。

自分がどこに住んでいて、どこの学校に通って、何をしていたのか。

その記憶は存在する。

とりあえず、家に帰ろう。

そう決意して、重たい扉を開けた。


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