神頼みと代行
夜になり、生徒達には質素な食事が提供された。
認識されない俺には配給されないので、王族用の料理から少しずつ取り分けて食べた。
その後、男女で分かれて宿舎に入った。
男女別で浴場はあるが、数百人が一度に使える広さではない。
お湯焚きする自動機能はなく、木材を燃やして温める旧式のお風呂だ。
シャワーもなく、桶にお湯を入れて頭から流す。
ほとんどの者は文明の落差で精神的なショックを受けていた。
そんな中、俺は女子がいる宿舎の中で待機していた。
風呂にはまだ入っていない。
着替えるスペースにはいるがな。
兵士達がやってこないとも限らないし。
ずっと風呂場にいたらのぼせるし。
最初は女子と一緒に風呂に入るつもりでいたが、一度に浴場に入る人数が多く、風呂場に入りきらないから、というのが最も残念な理由だ。
それを抜きにしても、絶望している彼女達をどうにかしようとは思わない。
「これからどうなるんだろう……」
「怖いよ……」
「いっそ、死にたい……」
誰一人、嘘でも明るく振舞える女子はいなかった。
おそらく男子の方も似たような感じだろう。
浴場から女子がいなくなり、ようやく俺も湯を浴びることにした。
浴びてから気づいたのだが、シャンプーやボディーソープもない。
せめて丁寧に洗い流そう。
それから頭を空っぽにして湯につかっていると、女子が一人だけ浴場に入ってきた。
三年の生徒会長だったか?
名前は……忘れた。
長い黒髪、スタイルはよく、凛とした佇まい。
全体的に白い肌だが、手足が少しだけ日焼けしている。
噂では成績すべてがオール十らしい。
そんな完璧に見える彼女の表情は他の生徒と同様に暗い。
いくら能力的に優れていようが、俺のようなチートに恵まれない限りくつがせない状況だ。
生徒会長が僕の隣に足を下ろし、体育座りをして、顔を伏せた。
「神様……どうか、私たちをお救いください……」
どうしようもないからこその神頼み。
異世界召喚のタイミングで現れなかった神は、今後現れるのか?
俺としてはぜひとも礼を言いたいところだ。
「お願いします……お願いします……」
彼女にも聞こえないだろうが、俺は口を開いた。
「神がその言葉を聞いているかどうかはわからない。けど、たとえ神が願いを聞いていなかったとしても、俺が代わりに引き受けてやるよ」
なんといっても、その素晴らしい裸を拝ませてもらった礼にな。
ちょっとずつ書き進めていきます。
ブクマ・評価して頂けるとうれしいです。