人には認識できないはずの妖精
手のひらサイズの小人が俺の周りを飛び回る。
「ねえねえ、なんでみえてるの?」
「きゃ~、こっちみるな~」
「こっちがみてるからじゃないかなぁ」
「でもほかのにんげんはみえてないよ」
「なんでだろ~?」
「なんでかなぁ」
変だな。
すげぇウザイはずなのに、少しだけホッとした。
ただ、周囲を飛ばれるのは鬱陶しいので三体とも両手で掴んだ。
「「「きゃ~!」」」
「お前ら、俺が見えているんだな?」
「うん、みえてないよ」
「そうそう、みえな~い」
「みえてなーい」
こいつら……。
「嘘をつくならこのまま食べるぞ」
「「「こわ~い!」」」
それぞれの小人の上半身まで口に入れ、噛まずに嘗め回した。
あむっ、一人目はイチゴ味。
あむっ、二人目はソーダ味。
あむっ、三人目はメロン味。
「「「ぎゃ~!? べとべとだ~!」」」
「で、本当のことを話すか?」
「うう、はなす、ぐすん」
「はなさな……はなす~」
「はなしたくな……はなすよぉ……」
拒否されそうだったのでもう一度味わってやろうとしたが、素直になったようだ。
まったく、面倒なやつらだな。
「で、なんで俺のことが見えてるんだ?」
「こっちのせりふだよ」
「わたしたちはにんげんにみえないのに~」
「なんでみえるのぉ?」
お互いに「???」と首を傾げるばかりだ。
なるほど、どちらにもわからないということがわかった。
「じゃあ次だ。なぜ俺には魔法が使えない?」
「つかえないというか」
「あいしょうがわるいというか~」
「あってないというかぁ」
意味がわからん。
「相性が悪いとはどういうことだ?」
「もってるまなと、いってるまながちがうの」
「ちが~う」
「べつべつだよぉ」
マナ? 真名か?
「マナってなんだ?」
「ひのまながあれば、ひをつかえるの」
「みずのまながあれば~、みずをつかえるの~」
「かぜのまながあればぁ、かぜをつかえるのぉ」
マナは真名ではなく、属性を指しているらしい。
「俺には火のマナも、水のマナも、風のマナも持ってないから魔法を使えなかったのか?」
「「「うん」」」
まじかよ……。
詠唱とかポーズが間違っていたわけではなく、魔法に必要なマナとやらを持っていないから魔法が使えない。
なんだそれ、だいぶショックだぞ。
「あーあ。あいつらは三つとも使えてるのに、なんで俺は一つのマナも持ってないんだ?」
「あるよ」
「あ~る」
「あるあるぅ」
「え? あるのか!? なんだ、何があるんだ?」
マナとやらがあれば何かしらの魔法を使えるはず。
召喚直後の高揚感が再びきた!
「やみだよ」
「くら~いの」
「こわぁいの」
「闇? 暗いとか、恐いって、どんな魔法を使えるんだ?」
三人の小人はぶるぶると震えた後、何も話さなくなった。
これ以上聞いても話してくれそうにないので、小人達から手を離した。
「「「にげろ~!」」」
小さな羽をばたつかせて、あっという間にどこかへ消えてしまった。
ちょっとイジメすぎたか。
「あんた、どういうつもり?」
後ろから声がしたので振り向くと、またもや一人の小人がパタパタと飛んでいた。
ちょっとずつ書き進めていきます。
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