強制労働か、魔法の特訓か、選べ
メイティア王女の言う通り、生徒達には労働が課せられた。
砦作り、農作業には九割の女子が向かい、残りの女子とすべての男子は魔法の特訓を始めた。
いいねぇ、魔法。
これこそ異世界の醍醐味だ。
ただ、その魔法を覚えた後に待っているのは魔物や人相手の殺し合いだ。
戦闘を恐れた女子が大半で、魔法につられなかっただけ賢い選択かもな。
奴隷から解放された時に戦う術を持てる未来を捨てたことにもなるから、どっちが賢いかはこの先次第。
つまりは俺の活躍次第ということだ。
「はぁ……はぁ……」
「さっさと動け、愚図が!」
「いっ! 叩かないでよ!」
「叩かれたくなければ早く動け!」
「動けばいいんでしょ、動けば……」
砦は元より存在するが、その補強と拡大のために運ぶ石は重そうだ。
台車はなく、木の板に縄をつけ、板の上に石を置いて運ぶのだからしんどいだろう。
農作業でも重い物を運ぶ。
機械が存在せず、楽をできる作業はまったくない。
体力のない者にはなおさら過酷な環境だ。
そんな彼女達を見て、俺は心底誰にも認識されないことを喜んだ。
次は魔法の特訓をしている奴らを見てみようか。
「火の精霊よ、荒ぶる炎となり、目の前の敵を燃やし尽くせ、ファイアボール!」
「水の精霊よ、すべてを呑み込み、鎮めたまえ、ウォーターショット!」
「風の精霊よ、煙を押し流し、切り刻め、ウィンドカッター!」
生徒達はとてもとてもとても恥ずかしそうな顔で魔法を詠唱していた。
見ているこっちもつられて恥ずかしくなるのだが、魔法を教えている兵士達にとっては当たり前のことだからか平然としていた。
「恥ずかしがるな! 敵を前にして詠唱が遅れれば死ぬかもしれないんだぞ!}
「いや、だってさぁ」
「言い訳するな!」
「いぎっ! くそ、やりゃいいんだろう」
俺の場合は誰かに見られるわけでもないし、生徒達に混ざって一緒に練習してみるか。
「火の精霊よ、荒ぶる炎となり、目の前の敵を燃やし尽くせ、ファイアボール!」
……んん? 何も出ない。
「水の精霊よ、すべてを呑み込み、鎮めたまえ、ウォーターショット!」
出ない。
「風の精霊よ、煙を押し流し、切り刻め、ウィンドカッター!」
出ない! なんでだよ!!
もしかしてチートの代償か!?
精霊が一切呼びかけに応えてくれないのって、俺が誰にも認識されないからなのか!?
あんぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
ふざけんな! 俺にも使わせろよ魔法!
激しい憤りを感じていたら、何やら声がした。
「ねえねえ、おこってるの? おこ?」
「ぷぷぷ~。ひとりでかっこうつけて、は~ずかしーんだ~」
「だ、だめだよぉ、ぷふっ、かわいそうだってばぁ」
ものすごく、かなりうざい感じの妖精らしき三体が俺の目の前に現れた。
ちょっとずつ書き進めていきます。
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