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ガーラ湯沢にて

作者: 長光一寛

ガーラ湯沢にて


このスキー場はもう何度も来ている所で、地形はほぼ私の記憶にインプットされており、従って、新奇さが少なく飽きてきましたが、興味を維持するために、それぞれの滑降に課題を付します。風景を見ながらゆっくり滑り降りるとか、初心者用のゆるい斜面のコースをできるだけ直滑降する等。下山コースができてからは、しばらくこれに執着しましたが、下に行くほど気温が高いため雪が湿っていて滑りにくくなる。


さて、そんなことで、今回はゲレンデの営業終了時刻には山頂にいて、沈む夕陽を受けた雪山を鑑賞してからゴンドラ駅まで硬い雪を楽しみながら最後の一本としようと思いました。


それで、運転終了時刻ぎりぎりに乗ったリフトで、山頂にゆき、湯沢高原に対峙する西日を受けてピンク色の雪峰群を見渡し、夕陽が沈むにつれ少しずつ陽を受けている面積が頂のほうに縮んでゆき、赤みも薄らいでゆくのを時間をかけて眺めました。自分の居るところはもう陽が当たっていません。足元の雪は硬く凍り始めて歩くとカリカリ鳴ります。


名残り惜しそうに山頂にたたずんでいたスノーボーダーやスキーヤーたちは少しずつ減っていき、ついにあたりにゲレンデスタッフしか居なくなると、ショートスキーの私はゆっくり下ってゆきます。


途中でストップして、また、血の気のなくなりかけた瀕死の人の横顔のような白い山々の嶺を見ます。そしてついに臨終のときがせまります・・・。


ゲレンデスタッフたちが、客がみな下ったことを確かめるためそれぞれのコースをしらみつぶしに下ってきます。雪嶺はついに色彩を失い、空の薄くなった青とまぶしさを失った雪の白のみが残ります。上からスタッフが「どうかしましたか」と心配そうにたずねます。


「いえなんでもないんです」というジェスチャーをして、私は沈む太陽に遅れじと、雪を削って下っていきました。





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