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お嬢様のためならば

作者: 下菊みこと

お嬢様のためならば

俺はなんだってできるんです。


はじめまして、こんにちは。俺はアヴェリーノ・マルシャン。公爵令嬢であるニコレット・ラフィヌモンお嬢様の専属護衛をしています。


ニコレットお嬢様の専属護衛になるにはそれはもうかなり苦労しました。でも、それを我慢してニコレットお嬢様の専属護衛になれたのは、他でもないニコレットお嬢様のおかげなのです。だから今の生活には不満がないどころかむしろ充実しているくらいです。まあ、護衛という役割を担う以上毎日気を抜けませんが。


そんなニコレットお嬢様との出会いは、十年前のある日のことでした。


ー…


あの日、裕福な商人の息子だった俺は家族と一緒に馬車でお出かけしていました。…その時、山賊に襲われたのです。父と母が無残に殺されて行く中呆然として動けないでいると、ニコレットお嬢様の馬車がちょうどそこを通りかかって、ニコレットお嬢様が専属護衛達に命じて助けてくださったのです。ニコレットお嬢様は、今にも泣きそうな顔でそれでも笑いかけてくださいました。よく頑張ったわね、もう大丈夫よ。そう言って抱きしめてくださったニコレットお嬢様に、酷く安心してようやく泣くことができました。


いくら裕福な商人の息子とはいえ、俺は一人で生きていくにはあまりにも幼かったため、ニコレットお嬢様が気遣ってくださり、ニコレットお嬢様の将来の専属護衛としてラフィヌモン家で引き取ってくださいました。


それからはニコレットお嬢様の専属護衛として恥ずかしくない教養、そしていつ如何なる時にもニコレットお嬢様を守る為の武術を徹底的に叩き込まれました。それに必死に喰らいついていけたのは、もう一度あのお優しいニコレットお嬢様に会いたかったから、そして今度は俺がニコレットお嬢様を守りたかったから。


そしてある日、ついにニコレットお嬢様の専属護衛として側仕えすることが出来ることになりました。


「お、お久しぶりです!ニコレットお嬢様!俺…っ!あの時ニコレットお嬢様に助けていただいた!」


「ああ、あの時の子犬さんね?覚えているわ。こんなに大きくなって…色々覚えることが多くて大変だったでしょう?よく頑張ったわね。これからは専属護衛として、よろしくね」


「は、はい!」


俺の頭を撫でながら微笑んでくれるニコレットお嬢様。俺はこの時、改めてお嬢様のためならばなんだってできると思い、それを心の中で誓約しました。


ー…


そして時は流れ、ニコレットお嬢様もお年頃になりました。ニコレットお嬢様はそれはそれは美しく、更にお優しくなられました。俺も専属護衛として鼻が高いです。


ただ、ニコレットお嬢様の生まれながらに決められた婚約者、ブレーズ・ロワ王太子殿下は最近男爵令嬢のノエミ・ヴュルギャリテにうつつを抜かしているのだとか。


これも専属護衛の仕事と思い、ノエミとブレーズ王太子殿下の浮気の証拠を集め、さらに事あるごとに何故かニコレットお嬢様を陥れようと虐めの冤罪をでっち上げようとするのを阻止します。


…ニコレットお嬢様には幸せになっていただきたい。でも、この愚かな王太子の元ではニコレットお嬢様は幸せになれない。


だから俺は、旦那様にブレーズ王太子殿下の浮気と、ニコレットお嬢様を陥れようとした件の証拠を持って直談判しに行きました。


「旦那様!このままではニコレットお嬢様が不幸になってしまいます!今ならブレーズ王太子殿下の有責で婚約破棄を出来ます!どうかご決断を!」


「…うむ、わかった。この事は私に任せなさい。私としても愛娘を不幸にさせる結婚などごめんだからね。報告、ありがとう」


「はい!では失礼いたします」


ー…


その後。ラフィヌモン家から婚約破棄を突きつけられた元王太子殿下は、後ろ盾を無くした上に男爵令嬢風情に誑かされた愚かな王子として廃嫡された。王太子位は第二王子殿下が継いだ。元王太子殿下は男爵令嬢の家に婿に入ったようだが、夫婦喧嘩の絶えない不幸な結婚になったようだ。


そして、ニコレットお嬢様は。


「ねえ、リーノ。そろそろ私の婿に入る話、受け入れてはもらえないかしら?」


「またそのようなご冗談を…恐れ多くも烏滸がましいことです」


何故か俺に猛烈にアピールして来ている。正直嬉しいが、俺はニコレットお嬢様の幸せが第一。俺では力不足だろう。


「何度も言うようだけれど、私、本気よ?私のためにここまでしてくれた貴方となら、幸せな結婚が出来ると思うの」


「お嬢様…」


「それに私、貴方を愛してしまったのだもの」


ね?お願い!と小首を傾げるニコレットお嬢様はそれはそれは可愛い。思わずぐらっと来た。


「私、諦めないわよ。覚悟しておいてちょうだい」


「俺は絶対に屈しませんよ」


「それも私のためなのでしょう?」


「…ええ」


「なら、私と結婚してちょうだい。それが私の一番の幸せだわ」


お嬢様は手強い。なんとか自分を律しなければ…。お嬢様のためならば、俺はなんだってできるんです。だから、この恋心は隠し通してみせますとも。

なんだってできるんです

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