第三章 集結のドラゴンバスターズ
ドラゴンバスターズの認定を行なっているギルドのある街はこの辺りでカールンの街のみであった。
そのカルーンの街にドラゴンバスターズ認定にやって来た若者はその日は二人いた。
幾人もの賞金稼ぎを打ち倒した女剣士セーニャと、もう一人は先の剣術大会で素手にもかかわらず優勝を
なしとげたタイソーであった。
二人はギルドにて功績を示すとすぐさまドラゴンバスターズとして認定された。
これでドラゴンバスターズとして自由に行動できると思った二人だったが渡された認定証を手にしてあぜんとなった。
認定証として与えられたのは細工の施された大きめのメダルだったがそれはかけらでしかなかった。
そう、ちょうど一つのメダルを五つに割ったうちの一つずつという感じだった。
いぶかしむ二人に対してギルドの職員はこう告げる。
「確かにあなた方二人をドラゴンバスターズと認定します!」
「しかしドラゴンを倒すには最低五人のドラゴンバスターズが必要です!」
「ですが、タイソーには剣術大会の城主から!」
「セーニャにはほうぼうのギルドからも推薦状が届いております!」
「特例としてドラゴンバスターズの委任権も与えましょう!」
そう言うと職員は二人にメダルの残りの破片三つを差し出す。
「ですが、くれぐれも心に留め置いてください!」
「ドラゴンバスターズとして早く活動したいがために誰かれかまわず!」
「力量の無いものにまで任命した場合は自らの命を危険にさらすはめになると!」
そしてとりあえず三つのメダル片はセーニャが預かることになった。
かくしてセーニャとタイソーはチームを組み他のドラゴンバスターと成りうる人材を探すこととなった。
認定証であるメダル片を身に着けた二人はドラゴンに戦いに赴く以外ならどこでも自由に通行できるようになった。
二人は自己紹介もそこそこに次の地へ向かおうとしていたが街を出て近道のため森を通り抜けている時に二人の男女が立ちはだかった。
アレッシュとマリーンである。
全身を甲冑に包んだ鉄仮面の男はこう言った。
「ドラゴンバスターズの方々とお見受けする!」
「悪いが認定証を置いていってもらおうか!」
そして綺麗な衣装を身にまとった少女はこういった。
「ボディガードになって!」と
待ち伏せしていたアレッシュとマリーンは互いに気づかず、偶然にも同時に飛び出してきただけなのだが。
セーニャとタイソーの目には凶悪な賊がどこぞのお姫様をかどわかしたついでに自分たちにも害を及ぼうとしているとしか思えなかった。
「というわけでタイソー、あの娘をお願い!」
こいつは私が倒すから、とセーニャは瞬く間に剣を構え仮面の男に切りかかっていく。
タイソーも自分がその男の相手をするよりは得策と考え。
「心得た!」
と答えると少女の救出に向かう。
アレッシュは仮面のため少し視界が悪い、しかも背が高いため14歳の少女であるマリーンを見落としていたのだ。
マリーンの方はアレッシュもついでに雇うくらいのつもりがあったので特に気にしてはいなかった。
「くっ!」
アレッシュは剣を抜く間もなくセーニャの剣を食らってしまった。
軽く脅す程度だったのでまだ剣も出していなかったし、太身の剣なので咄嗟の動きにはやや遅れてしまう。なによりセーニャの一閃は見事だった。
だがしかし、アッシュとて並の腕前ではなかった。
咄嗟に小手の部分で剣撃を受ける。
そしてそのまま二人は膠着状態に陥った。
この女・・・。
女剣士など別に珍しくもないが、そんじょそこらの腕前ではない。
勝てないではないだろうが、ドラゴン以外に本気で戦うのもばかばかしい。
アレッシュはそう考えながら女剣士の出方を待った。
セーニャのほうは先ほどからタイソーのほうをちらちら見ている。
どうあらあっちのほうが気になるらしい。
タイソーはどうやら無事少女を保護したらしい。
「無事彼女を保護したみたいね!」
「このまま去るなら見逃してあげる!」
とセーニャは剣に込めた力を緩めていく。
アレッシュはこの女がなにか勘違いをしている事に気づき無言で頷いた。
するとセーニャは剣を引いた。
アレッシュは少し後ずさりしたあと。
「待て、とりあえず話がしたい!」
と切り出した。
「剣を預からせてくれる!」
とセーニャが手を差し出すとアレッシュは無言で剣を地面に置いた。
セーニャは剣を受け取りタイソーに預け、そして四人で話し合いが始まった。
まずは仮面の男が語りだす。
「俺の名はアレッシュ、ドラゴンとの戦いを求めるものだ!」
「ゆえあって姿は明かせぬため、ドラゴンバスターズの認定証を強奪しようとした!」
続いて幼い少女が。
「マリーンです!」
「父と母の敵を求めて賞金稼ぎになりました!」
「でも、一人ではちょっと・・・」
「みなさん雇われてください!」
セーニャは。
「私は世界の平和の為ドラゴンバスターズになりました!」
と簡潔に済ました。
タイソーもまた。
「おいらは腕試しのためドラゴンと戦いたかったからなったんだど!」
とお気楽かつ簡潔にすました。
するとセーニャの腰にかかった剣がぶるぶると震えだした。
バスターである。
彼は告げたいことがあると剣身を震わすのである。
一同の注目がセーニャに集まる。
セーニャは仕方なく皆に打ち明けることにした。
セーニャは剣を構え、鞘を抜く。
するとおもむろにバスターが語りだした。
「なるほど、なにやら皆訳ありの様子!」
「セーニャよ、仲間にしてはどうだ?」
「うおっ!」
一同が喋る剣に驚く。
しかしセーニャは何事もなかったかの様にあと三人のドラゴンバスターズが必要なことを告げた。
セーニャは乗り気ではなかったがタイソーもバスターも賛成だったのでアレッシュとマリーンを仲間に加えることにした。
ともあれこれであと一人である。
だがその前にマリーンもバスター同様に皆に知らせておかなければいけない事柄があるといった。
そんな四人の様子を伺っていた者が一人居た。
フローラである。
彼女は体を透明化させられる魔法クリアーを使っていたため誰も気づかなかった。
しかし突如マリーンが呼び出した白いドラゴンに驚き気を失ってしまう。
気を失うと同時に魔法の効果が消え突然姿を現したフローラに一同は再度驚くわアレッシュとタイソーはオーロラに戦いを挑もうとするわで一時大混乱に陥ったが気を取り戻したフローラもそこそこの使い手の魔法使いだと解るとフローラも仲間に加わった。
むろんフローラは思惑を隠したままであったが。
そしてアレッシュも仲間であるマリーンのドラゴンである以上快く思わずとも受け入れる他はなかった。
タイソーは別にドラゴンを憎んでいるわけではなかったので戦いたいという好奇心だけおさえた。
ここに以上の五人によるドラゴンバスターズが出来上がった。