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第二章 それぞれの試練

不思議な剣の力を借り、女剣士として旅を続けるセーニャだったが目的はもちろん世界の平和を取り戻すためにドラゴンを倒しまわることだった。

だがそのためにはドラゴンバスターズにならなければいけない。

『ドラゴンバスターズ』それはこの世界で唯一ドラゴン退治を許された集団である。

ドラゴンバスターズとは、なまはんかな者による返り討ちの悲劇や、ドラゴンの報復によるその他の人々の被害をなくすために作られた制度である。

ドラゴンバスターズになるにはまず賞金稼ぎになり、経験と実績を積む決まりがあったが。

ギルドより認定されれば認定証の提示によりどの様な危険な場所であろうと通行を許可された。

「まずはギルドのある町を探さないとね!」

「私はレグスの村から出たことはないの!」

「道案内お願いね!」

彼女は一人きりで喋っていた。

当然答えは帰ってこない。

「そうそう!」

「鞘をはずさないとね!」

彼女は思い出したように腰にさした剣から鞘を抜き、鞘を背負っていた皮袋に仕舞うと剣に向かって再び話し始めた。

鞘から抜かれた剣は少女の問いかけに答える。

ただの剣ではない。

この不思議な剣は思考能力を持ち、鞘から抜かれれば会話も出来るのだ。


「そうだな、この先にあるヨルドという街にあったはずだ!」

「ありがとドラス!」

「まて、セーニャ!」

「ドラスとは何のことだ?」

剣はすかさずセーニャの呼び方に反応する。

普通ドラゴンを切る剣はドラゴンスレイヤーと呼ばれる事が多い。

「え、ドラスレじゃなんか変だし、ドラスだよね?」

ドラスレとは有名な剣の名で正式名称はドラゴンスレイヤーという。

ドラゴンを切るためだけに存在し、対ドラゴン用としてはこれ以上のものは存在しないとまでうたわれた伝説の剣である。

単純だがドラゴンバスターズを目指す者ならつい付けたくなる名でもある。

「断る!」

セーニャの持つその剣は形式にこだわらない。

当初セーニャがこの剣に対して使っていた堅苦しいしゃべり方も却下していたがその名だけはなぜか断った。

(ドラゴンを切る為だけのあんな奴と一緒にするな)

「バスターと読んでくれ!」

「バスターズだからバスターだ!」

「なによそれ、付け方はほとんど変わらないじゃない!」

自分の付けた名が却下され一瞬ほほを膨らますセーニャだったが。

すぐに笑顔を取り戻し。

「わかったわ、バスター」と答えた。

そうしてバスターとセーニャはヨルドの街で賞金稼ぎとなった。


仮面の男アレッシュ。

彼もまたドラゴンバスターズになるべく旅立っていた。

だが、彼の場合は仮面で顔を隠しているためドラゴンバスターズどころか、賞金稼ぎにもなれずにいた。

城の警備についていたこともある彼なら素性を身分を明かせば賞金稼ぎどころかその数々の功績によってすぐさまドラゴンバスターズになることさえかなったかもしれない。

だが今の彼は身分を明かそうとしない。

そのため賞金稼ぎになるところか賞金首と疑われることさえあった。

彼にとってはすでに名誉も誇りもない。

だがドラゴンバスターズの称号さえあればどこを通るのにもこそこそしたり強行突破したりする必要はなくなる。

武器や防具、食料を手にするにしろ闇屋や裏商人から非合法な値段をふっかけながらも手にする必要はない。

「こうなったらドラゴンバスターズから直接認定証を強奪してやる!」

かくしてアレッシュは唯一ドラゴンバスターズの認定をしているギルドのある街へと向かうことにした。


格闘家タイソー。

ドラゴンとの戦いを求めドラゴンバスターズになることを心に決めたタイソーだったが賞金稼ぎになるためギルドで申し込むと素手のため相手にされなかった。

だがタイソーが頑として引かなかったためある一枚のパンフレットを渡された。

それはとある城で行なわれる剣術大会のパンフレットであった。

そこの城主は剣術好きで年に一度剣術大会を開いているらしい。

そしてまだ大会有史以来剣術使い以外が優勝したことは一度もないらしいが。

 マジックユーザーや格闘家の参加ももちろんOKらしい。

「この大会で優勝出来たならドラゴンバスターズとして許可します!」

「トロフィーなり賞状なりを持って認定所のある街にどうぞ!」

ギルドの担当者はやれやれといった様子でそう言いタイソーをあしらった。


確かにタイソーは剣術使いやマジックユーザーを倒したことはあるが正統派のタイソーにとって異種派との戦いはそう多くはなかった。

だがタイソーは

「よっしゃぁ!」 

「おいらが優勝いただきじゃあ!」

と意気揚々と大会に向かった。

白いドラゴンに命を救われたマリーンはそのドラゴンにオーロラと名づけ最年少の賞金稼ぎとして活躍していた。

宮廷魔術師のフレイヤから回復魔法のみ手ほどきを受けていたマリーンは大人顔負けの回復魔法の使い手である。

オーロラを町外れに隠れさせ一人でギルドに向かった彼女は街の人々に自慢の回復魔法を施し、まんまと賞金稼ぎになることに成功した。

まさか、あれほどの回復魔法を使えるものが攻撃魔法のひとつも使えないとは誰も思いもよらず、マリーンは史上最年少の天才魔法使いとして華々しくデビューした。


魔法には回復魔法、攻撃魔法など色々の系統の魔法があるが魔術師たるもの攻撃魔法を学ぶときには同様に回復魔法も学んでいた。

戦いと破壊のみをのぞむ黒魔道士ならともかく攻撃した相手が戦意を失ったならばすかさず回復魔法で治療にあたるのは当然とされていたからだ。

だからマリーンの見事な回復魔法を見た人々は攻撃魔法のほうも威力がすさまじいがゆえにそれを回復させるために回復魔法も相当の修練をつまなければならなかったのだろうと思い込んだ。


かくしてマリーンはオーロラとともに賞金首を追いかける毎日であった。

オーロラの得意技はファイァーブレスという強烈な炎の息である。

この炎に巻き込まれたものは屈強な賞金首といえどひとたまりもなく、すぐさま降参する。

するとマリーンはある程度回復してやり、ギルドに連れて行ってから全快してやる。

むろんオーロラのことは強く口止めして。

そんなことを繰り返す後マリーンの回復魔法はさらに協力になり。

かせいだ賞金もたいそうな額になった。

だが、マリーンの目的はそんなことではなかった。

自分達の城を滅ぼし全てを奪ったものたちへの復讐。

そんな思いをマリーンは一日たりとも忘れたことはなかった。

マリーンは復讐の手助けをする者を雇うために金を貯めていたのだ。

だが、マリーンにはもうひとつ気にかかることがあった。

ほうぼうを回るうち色々な噂を耳にしたが自分の住んでいたリーンバルト城はドラゴンに滅ぼされたことになっている。

だが、攻めて来たのは明らかに人間だった、そして自分を救ってくれたのは他ならないこのドラゴンである。

そして途中で襲われていた村も人間の仕業だった。

全てとは言い切れないがドラゴンの仕業にみせかけられた事件がいくつもあるに違いない。

そういえばドラゴンバスターズというドラゴン退治専門家の話を耳にしたがそのなかにはドラゴンの仕業と騙されて復讐のためドラゴンバスターになった人もいるのではないだろうか?

「決めた!」

「ドラゴンバスターズを雇おう!」

そうすればこの謎も少しは明らかになるかもしれない。

何よりドラゴンバスターズなら強力な戦力になることは間違いないのだから。

そしてマリーンもまたドラゴンバスターズ志願者が集う街に向かった。


元宮廷魔術師フローラ。

彼女が持ち出した魔道書には呪いの力を強化する魔法イビルブーストについて記されていた。

彼女は親友の仇であるドラゴンを滅ぼすためにその禁術を使うことを決意する。

イビルブーストの力を用いてドラゴンの呪いを利用すれば自らの魔法力を上乗せしてドラゴンと化することが出来る。

そうすればドラゴン+自分の魔力と知を兼ね備えた最強のドラゴンが・・・

友の敵のためその術を使うことを決意したフローラだったが、そのためにはやらなければならないこともいくつかあった。

まずドラゴンの呪いを受けるために手ごろなドラゴンを倒さねばならない。

その下準備として賞金稼ぎになろうとしたフローラだったが魔術協会からの手配書がギルドにも回ってきていたのでそれもままならなかった。

しかしフローラはビジョンという一定時間自分の姿を変えて見せられる魔法を覚えていたので窮地の度にフレイヤに化けて逃げおおせていた。

尚フローラは、まだこの魔法については未熟なため全身を変えることは不可能だったが顔だけフレイヤに変えていた。

だが所詮は一時しのぎだった。


そうだ、ドラゴンに倒されたドラゴンバスターズを利用してやろう。

イビルブーストはもちろん人間にも効く、ドラゴンに倒され死んだ人間の肉体を傷つけこの魔法を使えばその人間の姿でずっといられるか。

あるいは多少の魔力を使う程度でその力を維持できるだろう。決まった。まずはドラゴンバスターズの後をつけ、その後は・・・

フローラは邪まなる考えをもちながら死亡率の最も高いであろう新入りバスターズを求めてドラゴンバスターズ認定を行なっている街へと向かった。

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