間話 夏樹には何の花。花の日特別編。
「相馬君、花のプレゼントは如何でしょう?」
「どうしたの、急に?」
「いえ、私のリサーチですと。花束が欲しい女性が多いそうです」
思わず腕を組んだ。だって、邪魔じゃん。花束。持ち帰るのにも困るし、ゴミになりそうだし。だったら花壇なりそこら辺の地面なりに生やしておいた方がお互い有益だろう。
「今、いやいや、くだらない。邪魔だし。とか考えませんでした?」
陽菜が僕の心情を少し過激に察してくれた。なら、また別の案を……。
「乃安さん。相馬君の服をお願いします」
「了解です!」
あっ、あはは。
いつぞやのように、僕は二人のメイドに両脇から抱えあげられて連行されてしまいました。人って強制的に着替えさせること可能なんだ。良い勉強になりました。
花屋の店先に並んだ色んな花を見ていた。なんて始まりの歌があった気がする。
なんで突然花束なんて。
陽菜と乃安があーでもないこーでもないとか色々話し合っている。思わず欠伸が零れそうになるが堪えた。
「相馬君はどちらの色合いが夏樹さんに合うと思いますか?」
「僕はねぇ、夏樹はひまわりが合うと思うんだ」
適当に素直な気持ちを答えた。
「じゃあ、ひまわりでお願いします」
「畏まりました」
えっ? ひまわりの花束ってあるの? ねぇ、あるの? あんな馬鹿みたいに背が高いんだぜ。しかも陽菜と乃安が提案したものと全く違うのに、僕の意見があっさり通りやがった。
「相馬君。大輪と小輪。どちらが」
「小さい方で」
乃安がなぜかクスクスと笑って。
「相馬先輩、どんだけ好きなんですか。良いですねぇ」
とか言った。
そのままの足で、僕は夏樹の家に連行された。別に行くのは良いけど。いや、理由はわかっている。だって、夏樹の誕生日を当日に祝えなかったのだから。
八月一日のことだけど。
プレゼントは事前に送った。多分陽菜は、それだけじゃ足りないと言うつもりだな。
「ならとことん、付き合うか」
電車を降りる。ここまでくれば、もうすぐだ。
マンション、呼び鈴を鳴らして鍵を開けてもらい、エレベータに乗り。待っていた夏樹に花束を差し出した。
「知っていますか? 先輩。ひまわりの花言葉、愛慕ですよ」
「えっ?」
「しかも小輪にはあなただけを見つめるというものがあります」
「へ、へぇ」
「知らないで選ぶとは、流石です。先輩!」
乃安はからかうように笑う。
「でも先輩、気持ちはちゃんと伝えないと駄目ですよ。記念日を義務のように物贈るだけで終わりなのは、いただけません」
「うっ」
「先輩、何かそう言うところありますよね」
痛い所を突く我が後輩。
うん。そうだな。うん。これからは、めんどくさがらないようにしよう。




