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第十一話 夏樹は文化祭実行委員長

 「というわけで、文化祭実行委員長には布良を据える」

「はい」

「副委員長は相馬がやれ」

「……それはどういう意図で?」

「お前はある程度俯瞰した場所に据えつつも、しかしリーダーという気質では無いからな」


 ごもっとも。

 生徒会は今日も会長の独壇場だ。自信を取り戻した会長はてきぱき指揮していく。

 しかし相変わらず、人の使い方が巧いなぁ。会長の横には新会長と副会長の二年生の女の子二人が座っている。さらに会長を挟んで横には男子の新副会長。三人とも、同学年の評判が高いのだが、会長が言うには、まだまだだそうで、俺はとりあえず学校一つくらい掌握できる程度にはしたいそうだ。


「俺は民主主義は嫌いだ。正しい選択肢も、阿保な民衆は選ばない事があるから。俺は阿保は嫌いだ。馬鹿は好きだが。俺が馬鹿だからな。独裁制最高! 世界には強力なリーダーこそが必要だ!」


 とのことだ。

 まぁ、そんなものだろ。


「日暮先輩。前会長が、私は日暮先輩の助っ人に入れと」

「あ、あぁ」


 陽菜とは別ベクトルの真面目さがある子だ。名前は東郷恵。最初聞いた時、凄くアンバランスな名前だなぁと思った。ごついのに柔らかい名前だ。新副会長。くるくるの黒髪に眼鏡が特徴的だ。


「まずは何をするのですか?」

「とりあえず、夏樹と話し合いだな」

「わかりました」


 もう一人の後輩ちゃんは会長に着くようだ。夏樹にも、男子副会長がついている。

 しかし、前生徒会の副会長の意義がわからねぇ。新副会長は級副会長につけろよ。ご意見番と参謀に着けるって……しかしながら、僕につかせて何を学ばせたいのか。陽菜に着けたほうが良いと思うよ。生徒会の仕事を学ばせるなら、なんて、会長はそんなもの後で覚えろとか言うのだろうな。

 生徒会の事務仕事なんて、陽菜にお任せで全くやったこと無いし。うわ、そう考えると本当、僕はこの生徒会でいつもお茶飲んでるだけじゃん。まぁ、良いや。


「夏樹。とりあえず段取りとかある?」

「あるよー。じゃあ、早速だけど、会計は陽菜ちゃんが持ってくれることになってるから、それと学級委員長と各部活の部長集めてオリエンテーションだね、最初は」

「へぇ」


 そう言われてもいまいちイメージが湧かないというか、そもそも、初心者だ僕は。


「……日暮先輩、もしかして……」

「相馬くんは新人君だよ。入ったの二年生の後半だから」

「えっ? そうなんですか?」

「うん。君が夏休み明けに副会長に立候補しろとスカウトされた感じで」

 どこかがっかりした雰囲気を滲ませる東郷さん。まぁ、そりゃそうだろう。だってお互い初心者だもん。何か学べると期待していた彼女からしてみれば、そうなってしまうのも無理はない。

「いえ、でも、わずかに先輩なのも事実ですし、学ぶこともあるでしょう」


 東郷さんはそう小さく呟いた。前向きなのは良い事だ。

 でもなぁ。一人の方が動きやすいんだよなぁ。まぁ良いか。最悪置いて行けば言い。むしろ置いていかれる可能性もあるし。気楽に行こう。

 気楽に気楽に。そう。 

 しかし、よく考えれば、会長、パソコンを弄っているのはよく見るが、事務仕事丸投げだな。うん。


「相馬君」

「どうした?」

「予算の分配については会議で決めるとのことですが。既にこれだけの嘆願書が」

「全部捨てちまえ」

「何故でしょう?」

「会長ならそう言う」

「正解だ、相馬。全て通してしまえば民衆はこのリーダーは御しやすいと考える。しかし、反映させつつもこちらの意見を優先させれば、民衆の声にちゃんと耳を傾ける賢王と映る。その違いは大きい。よって朝野はその嘆願書をまとめて俺の机に出しておいてくれ」

「わかりました」


 さらっとめんどくさい事を押し付けて行く会長であった。

 去年もそうだが、文化祭は前生徒会の最後の仕事として、要職に名を連ねるのは前生徒会のメンバーだ。しかし、実質メインで仕事をするのは新生徒会になる。

 さてと。今回は乃安とか君島さんに頼らずともどうにかなるようにしたいな。うん。トラブル起きませんように。


「そうだ、相馬」

「何?」

「お前がよく一緒にいる後輩二人も、新生徒会に入れたいのだが。お前や布良が抜ける穴は大きい、それに、事務仕事における朝野の穴も大きい。いや、正直朝野が来てから事務仕事の締め切りがギリギリになる事が無くなったからな」

「いやいや。それは本人に言ってくれ」

「お前から頼めば楽なのによ」


 妙に信頼してくるな。本当。まぁ良いや。聞かなかったことにしよう。最近の僕は、そう割り切れるようになっている。これも成長だ。生徒会の仕事の中で、僕は学んだ。世の中、どうにもならないことがあると。それは、会長ですら学校の断固反対で通せなかった意見があった時。何だったかな。そうだ、もういっそのこと、職員室のクーラーを潰すか、夏場の授業はコンピューター室など、クーラーの完備された部屋でやるべきだと。そんな無茶苦茶なことを、残暑にブチ切れた会長は提案したのだ。

 結果はどっちもNO。職員室で留まらず、校長室まで戦火は及んだ。教育委員会まで乗り込もうとした会長だったが、その前に残暑が落ち着いてしまい、戦争は終わった。

 あれは激しかった。僕は参加しなかったけど。

 思えば毎回、会長と一部の支持者の戦争で、役員は毎回、あまりやらないな、こういうこと。

 そして、会長は未だ、慣習を打ち破る力はまだない。まだ、学生の範囲を抜け出したことはできていない。まだ、力が無い。大人たちが容易に握りつぶせる程度の力しかない。

 空が青い。これからどんどん寒くなる。面白いのは、寒さは命に関わる、暑さは別に大丈夫だろ、そんな扱いをするようにヒーターはあれど、クーラーは無い事だ。

 本当に、面白い。


「あの、日暮先輩、なんでボーっとしているのですか?」

「やる事無い」

「みんな書類作成とか忙しそうですけど」

「うん」

「誤魔化すように前会長とチェス始めないでください」

「いや、できないし。あっ、陽菜。あれどうなった?」

「……剣道部の件でしたら、扇風機を二台追加することで話は着きました。丁度近くで在庫処分セールで扇風機が安く売られていたので」

「そっか」

「それと、クーラー事件を盾に揺すってみたら、先生方快くヒーターの方も、まぁ、火災のリスクがあるので、部室ごとには置けませんが、武道館と体育館を温める程度ですけど。冬の部活中の使用許可を認めるように話をつけられました。流石は相馬君。提案通りにやってみたらうまく行きました」


「ありがと」


 横で東郷さんが、滅茶苦茶イライラしているのがわかる。誤魔化すように会長のクイーンをルークで取る。そのルークはナイトに取られる。あと三手でチェックメイトだけど、その前に終わるな。また負けだ。

 負けとわかったので投了。

 鞄を担ぐ。


「明日は会議だ。頼んだぞ」

「ん。それじゃ」

「えっ、帰るのですか?」

「うん」


 既に陽菜も夏樹も鞄を持っている。

 平時なら普通の光景。しかし、文化祭前には異常な光景に映っているのだろう、東郷さんには。でも、動くなら明日だ。今何をしても意味はない。とりあえず、彼女に教えたいのはそこら辺かな。


「……生徒会は、遊びの場なのですか……」


 そう呟くのが聞こえた。ある意味間違いでは無いし、でも、正しくもない。

 僕に教えられる事なんて、たいしたことは無いけど、なるほど、会長が僕につけた理由がわかった。果てしなく面倒だし、上手くいくかは博打だけど、僕の上位互換ができるかもしれない。後輩が成長する姿は、見てみたい。







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