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プロローグ
夢現なのに意識だけがはっきりと覚醒している。頭はぼんやりしているのに、そのぼんやりとした頭で理解できる。
気分のよい夢の中にいるようだ。そこで自分はなににでもなれるし、空想を広げこの世界の果てさえも見ることができる。
その状態のままどれくらいが過ぎただろうか。
「……やめないで」
不意に何者かから声がかかる。その声は透き通るような女性の声で、意識をそちらへ向けるともやがかかったような視界の中に少女が現れる。
「あなたは、他の人と違うもの」
はっきりと聞こえる。
「また、始めましょう」
おかしな夢だ。
意識がこの場所から遠のいていくのがわかる。夢から覚める惜しい気持ちがあった。
昨晩見た夢を覚えているだろうか、きっとこの夢も起きたら忘れてしまうのだろう。