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始まりの村

 ゲートをくぐると、そこは真っ暗な部屋で、やがてたくさんの流星が周りに煌めいた。そして目の前にまた光るゲートが現れる。一歩踏み出すと、ゆっくりと周りに光が満ちてきた。


「おや、新しく来た住人のようだね。ようこそ、始まりの村、オルサへ」


 その光の中に人影があった。ゆっくりとその姿が現れる。いかにも人の良い村人、という顔をした中年の男だ。そして段々と周りの風景が鮮明になる。


 私たちがいるところは小さな広場のようになっているところだった。広場の中心には噴水があり、それを囲むようにしていくつかのゲートが並んでいる。そのゲートから少し離れた場所に、いくつかの建物がある。それぞれの建物には「町役場」と「よろず屋」と「教会」と書かれていた。


「ひょっとしてこの村に来るのは初めてかな?私はオルサの村長のドルフだ。もし良かったら村の中を案内してあげるよ」


 ほーほー。こうやって最初にプレイヤーをゲームに慣らすのね。これはいわゆる、チュートリアルかな。もちろん、このゲームは初めてなので、お願いします。ついでに自己紹介もしておく。自己紹介、大事だしね。


 といっても、始まりの村は、一番最初に訪れる村だけあって狭い。ちょー狭い。あっという間に案内は終わった。


「君は運がいいね。ちょうど一軒だけ空き家があるんだ。ここだよ」


 最後に村のはずれにある一軒家に案内される。見た感じワンルームくらいの狭い家だが、ベッドもあってちょっと休憩するには十分だと思う。

 試しに椅子に座ってみると、椅子に座った感触はなかったけど、視点が少し低くなっていた。

 ほーほー。座った高さから見た部屋、って感じなのね。VR凄いね。


「一カ月間、この家の利用がなかった場合や、冒険者になって村を出る場合は残念ながらこの部屋に住む権利はなくなってしまうから、気をつけるように」

「ちなみに、家が空いてなかった場合は、新しく来た村人さんってどうなるんですか?」

「その時は、仕方がないから次の村に行ってもらうか、冒険者になってもらうかしかないねぇ」


 どっちみち、次の村に行かされる、ってことか。

 っていうかこの家を利用できるのって、現時点で私だけってことだよね。それだけ村人を選ぶ人がいないのか、それとも廃れたゲームだから新規でプレイする人がいないだけなのか、どっちだろう。


「村役場の中にある掲示板はこまめにチェックしておくといいよ。他の村人が頼みたい事が紙に書いて張ってあることがあるから。それじゃあ何かあったら村役場に来るといい。分からないことがあったら教えてあげるからね」

「はーい。ありがとうございます」


 お礼を言って、村長と別れる。


 さて。次は何をすればいいんだっけ?


 VRだと、ゲームしながら攻略サイトを見るっていうのができないのは不便だね。私はあんまりゲームはしたことないけど、分からないことがあったらすぐにPCで調べるタイプだから困っちゃうなぁ。


 でもまあ、冒険だしね。攻略サイト見ないで遊ぶのも楽しそうかな。せっかくの初のVRMMOだし。


 確かに『Another Gate Online』は発売されて10年たつゲームだから、攻略サイトを見れば効率的な攻略法はたくさん載っているだろう。でも、私がしたいのは、そういう作られた道じゃない。このゲームは自由度が高いって聞いてたし、色んな遊び方ができるはず。だったら……


 攻略サイトはできるだけ見ないで、好きなことだけやろうかなぁ。


 行き当たりばったりでも、いいんじゃない?


 あ、でも、まずは先立つものが必要だよね。そしたら特別なスライムをゲットするのが一番かな。

 スライム……村の中には、いないよねぇ?


 よし。こういう時は、困った時の村長さんだ!


 早速、さっき案内された村役場まで行ってみる。そこには大きな机があって、村長さんが書類らしきものにサインをしていた。おお、リアル。


「村長さーん。すみません、スライムってどこにいますか?」

「おお。一ノ瀬由真じゃないか。スライムならスライムの森にたくさんいるぞ。おお、そうだ。ついでに薬草も10個ほど取って来てくれないか?」


 そこで目の前に吹き出しが出た。


『クエストを表示します。

 村長の依頼を受けますか?

 はい   いいえ 』


 ほーほー。こんな風にクエストを受けるんだ。なるほどねぇ。ここはやっぱり『はい』で。

 指でポチっと空中の文字を押す。すると


『クエスト 村長の依頼を受けました。

 スライムの森で薬草を10個取ってきてください。

 後でクエストの内容を確認したい時は、クエスト欄を見てください』


 という吹き出しが出た。


「そういえば道具屋がスライムのゼリーが欲しいと言っていたぞ。スライムの森に行くなら、ついでに依頼を受けていくといい」


 村長さんがさらにクエストを教えてくれる。


 あー、でも、十日はスライムを倒さないでそのままにしないとレアなのが出ないみたいなんだよねぇ。だから、それはパスかなぁ。


「とりあえず一度スライムを見てみたいだけなんで、その依頼は今度にします」

「そうか。では気をつけて行くんだぞ。装備や持ち物をちゃんと確認しておくように」


 そーいえば装備とかチェックしてなかった。さっそくチェックしてみようっと。




 

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