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メイドさんを雇います

 ジェドの町長さん兼、メイド協会の会長さんであるヒルデガルドさんは、さっきとはガラっと雰囲気を変えて微笑んだ。どこからどう見ても、できるメイドさんにしか見えない。


「メイドを雇いたいということでしたが、基本は一カ月単位での雇用になります。最初の1週間は試用期間という事で、料金は頂きません。ただし、試用期間で雇えるのは三人までとなります。また、試用期間の間のメイドの業務は、お勧めするクエストの紹介となります」


 あら残念。メールの受け取りとかはしてくれないんだ。


「もし試用期間内にお気に召したメイドがいなかった場合、次に試用期間でメイドを例えるのは一か月後になります」

「つまり、最初の一週間はタダで、その間は三人までチェンジ可能ってこと? 三人チェンジした場合は、お試し期間で最長3週間無料で雇えるってこと?」

「そうなりますね」


 ふむふむ。お試し期間を利用して一週間ごとにメイドさんをチェンジして無料でメイドさんゲット、っていうのは無理なわけね。するつもりもなかったけどね。


「それから、半年、一年、三年での長期雇用契をする場合は、割引が効きます。どのようなメイドがいるのか、ファイルをご覧になりますか?」


 執務机の横にある棚に向かったヒルデガルドさんは、そこから何冊かのファイルを取り出して机の上に置いた。ページをめくると、3Dのようにメイドさんの姿が浮かび上がる。その横には簡単なプロフィールも書いてあった。


 ふむふむ。なになに。

 マイさん、16歳。クリーム色の髪の毛に青い目のちょっとぽっちゃりさん。得意なのは掃除。


 なるほど。

 次はどんな人かな。

 ヒルデガルドさんからファイルを受け取って、自分で探してみる。


 ロージーさん。17歳。茶色の髪で茶色の瞳のショートカットのつり目さん。得意なのは整頓。

 次はシナモンさん。17歳。藍色の髪で水色の瞳のおとなしそうな人。得意なのは造園。 


 造園が得意って凄いなぁ。うちには必要ないけどね。


 次の人を見るけど、どれもこれも代り映えがしない。テキトーに見た目で選べばいいかなと思っていたら、気になるメイドさんを見つけた。


 金髪碧眼の女の子なんだけど、なんとなく雰囲気が親友の真希ちゃんに似てる。

 特異なものは料理、だそうだ。ゲームだから実際に食べられるわけじゃないけど、それでも料理が得意っていのは女子的にポイントが高いんじゃないだろうか。


 誰を選んでも同じだろうし、この子にしてみようかな。


「じゃあ、この人をお試しで雇いたいです」

「かしこまりました。では、手配しておきますね。少ししたら由真さまのご自宅に伺います」

「お願いします」


 うふふー。これでメイドさんゲットだー。これで家に帰ったら、お帰りなさいお嬢様、とか言われるのかな。むふん。楽しそう。


「あ、そうそう。由真さんはもうクリスマスイベントはご存知ですか?」


 そーいえば、そんなのがあるってゲームにINする時に見たような。どこで受けられるんだろう?


「赤い帽子をかぶった人が村の中を歩いているので、ぜひ探してくださいね」


 どうやら歩きまわってるらしい。普通、そういうNPCってドアの外で待ち構えてるもんじゃないのかな。あ、でもVRMMOの場合はよりリアルを求めて歩き回ってるんだろうか。


「では、以上でメイド協会の会長職は終了いたしますが、よろしいでしょうか」

「あ、はい。ありがとうございました」


 ペコリとお辞儀をすると、顔を上げた先のヒルデガルドさんはもう既に髪の毛をおろしてイケてる町長さんモードになっていた。

 早業だぁ。


「ふふふ。それにしても嬉しいことだね。君のスライムのような可愛い子を見れるとは。そうだ。スライムが大好きなお菓子があるんだが、食べるかい?」


 もちろんぷっちょんの答えはイエスだ。それが欲しくてついてきたんだもんね。

 ヒルデガルドさんは机の引き出しから袋に入ったお菓子を取り出した。なんていうか、すぐ出せるようになってるとこが、スライム大好き倶楽部のメンバーなんだなぁって思う。


「これはルコの実を砕いてクッキーにしたものでね。スライムの大好物なんだよ」


 クッキーの真ん中にルコの実がデンと乗っていて、これはあれだ。中華街で見るアーモンドクッキーに似てる。


 ぷっちょんは大きくぷるるんとしながら肩の上で跳ねた。


「由真! ボク食べていい?」

「もちろんいいよー」


 その返事を聞くやいなや、ぷっちょんは大きくジャンプして執務机に飛び乗った。椅子に座って頬杖をついたフルデガルドさんは、それをニコニコしながら見守っている。

 ほんとにスライムが好きなんだねぇ。


「いただきまーす!」


 ぷるるんとさざ波のように体を揺らしたぷっちょんは、クッキーの上に乗るとそれを体で包み込んだ。クッキーを食べるというより、ほとんど捕食だ。体の中に取り込まれたクッキーは、七色にチカチカと光る体の動きに合わせて、どんどん消化されていく。

 スライムには内臓とかはないらしく、そのまま消えていくクッキーに、ぷっちょんは「おいしー」と嬉しそうな声を上げた。


 ルコの実のクッキー、そんなに好きなんだね。どこで買えるか、聞いてみないとね。

 


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