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ジェドの町の町長さん

決算がやっと終わりました……

 さて、気を取り直してジェドの町の町長さんにスライム大好き倶楽部の定例会のお知らせを渡さなくちゃね。えーっと、町長さんはどこにいるのかなぁ。


 1階にはいなかったので2階を探すと、それらしきドアを発見。さっそく開けてみると、そこにはメイドさんがいてお掃除をしていた。康太さんのようなミニスカロリメイドじゃなくて、髪を一つにまとめた古式ゆかしいロングドレスのメイドさんだ。


 そのメイドさんが部屋に入ってきた私たちに気がついて、箒を動かしていた手を止めて声をかけてきた。


「お客様ですね? ジェドの町の町長とメイド協会の会長の、どちらに御用でしょうか?」


 顔を上げたメイドさんは、眼鏡をかけていて知的な感じだ。まだ20代っぽいけど、思ったよりも年齢が高くてちょっと意外。ゲームだから、出てくるメイドさんは私と同じ女子高生くらいの年だと思ってた。


「あ、えーと。町長さんに渡したいものがあるんですけど」


 ここってメイド協会の会長さんもいるんだね。ってことは、メイドさんを雇えるのかなぁ。ちょっと楽しみ。


「なるほど」


 そう言うと、メイドさんはまとめていた髪をバサッっとほどいた。綺麗にまとめられていた紺色の髪が背中に広がり、今までのお堅い雰囲気とはガラッと表情を変える。そしてそのまま机の方に回って窓を背にした。


 そして机に両手を置くと、切れ長の瞳を少し細めた。


「私がジェドの町の町長のヒルデガルトだ。それで、どのような用件かな?」


 え、メイドさんじゃなかったんだ。と、びっくりしながらも、預かっていたオルサの村長さんからの手紙を渡した。

 すぐに読み始めた町長さんは、ふむ、と言いながら銀縁の眼鏡を指でクイと持ち上げた。


「なるほど。ではこれを持ってきたということは、君もスライム大好き倶楽部のメンバーなんだね?」


 口調まで変わった町長さんの目は、私の肩に乗ったぷっちょんに向いている。その視線を感じて、ぷっちょんが頷くようにぷるるんと揺れた。


「そうです」

「なるほど。確かにその子は素晴らしいスライムだ。珍しい虹色スライムというだけではない。その色艶や形が素晴らしいね。しかもとても君に懐いている。……うん。いいスライムだ。大切にするといい」


 褒められたのが嬉しいのか、ぷっちょんが肩の上で跳ねた。おおぅ。それ、着地に失敗したら肩から落ちるから気をつけてねぇ。


「由真、ボクいいスライムだって! いいスライムだって!」

「うん。ぷっちょんはいい子だよ~。可愛いしね」


 えへへ~と笑いあうのを、町長さんが優しい目で見ていた。

 町長さんもスライム大好き倶楽部のメンバーだしね。嬉しそうに弾むスライムを見ると笑顔になるのは仕方ないよね。


「それで、君たちも次の定例会には出るんだろう?」

「あ、はい。オルサの村長さんから誘われましたけど、まだ定例会を開く街には行けないから、急いで行けるようにしようと思ってるんです」


 定例会を主催するのはオルサの村長さんだが、定例会が開かれるのはトルムの街だ。どこにあるのかは分からないけど、村、町、という感じで集落の大きさが変わっているから、街、となるとかなり人のたくさんいる場所なんだろうと思う。ジェドの町から近い場所だといいんだけどなぁ。希望はここからゲートで行ける街だけど、どうなんだろう。


「ふむ。では私からの依頼で、トルムの街の領主に手紙を渡してもらおうか。そうすればすぐに君もトルムに行けるぞ」


 ここで、ポーンとアナウンスの音が響いて新しいウィンドウが出た。


『ジェドの町の町長から、手紙を配達するクエストを頼まれました。

 引き受けますか?

 はい  いいえ』


 ここはもちろん『はい』一択だ。クエストを受けました、というアナウンスが流れて、町長さんから手紙を渡される。


 やったね。これで次の街に行けるよ。どんな街かなぁ、楽しみだなぁ。

 定例会が開かれるまでにはちょっと時間があるから、それまでの間にもう少しレベル上げもしておきたいところだよね。


 いや、だってぷっちょんが育ったら、何か凄い必殺技を覚えるかもしれないじゃない。そしたらそれを皆さんに披露して自慢するなんてことも、あるかもしれないでしょ。

 村長さんによれば、定例会って、自分のスライムがいかにかわいくて強いかを自慢するところらしい。とすれば、もちろんぷっちょんが一番かわいいのは当然としても、私としては強さも自慢したいとこなのよね。もちろんLVでは適わないだろうけど、そこは必殺技でカバーするってことで。


「では、よろしく頼む」

「はい。ちゃんと届けますね」


 えーと、そしたら後は、メイドさんを雇うくらいかな。そういえばここって、メイド協会の会長さんがいるんだっけ。町長さんに紹介してもらえば、ちょうどいいよね。


「あ、あと、メイド協会の会長さんがどこにいるか教えてもらっていいですか?」

「そちらにも用があるのかね?」

「ええ。オルサの村に家があるんですけど、そこでメイドさんを雇いたいと思って」

「ふむ……では、少し待っていなさい」


 そう言うと、町長さんは下ろしていた髪をまとめて、紐で結い上げた。最初に見た、完璧なメイドさんスタイルだ。そして両手をエプロンの前で交差して、ニッコリと笑った。


「私はメイド協会の会長もしているんですよ。それで、ご用件はなんでしょうか?」


 ええっ。町長さんがメイド協会の会長さん!?

 しかも口調がガラっと変わってるし。






このお話の中ではMMOでキャラが特定の動作をすることを、エモーションから取って「エモ」と呼んでいます。

確か以前やっていたMMOでは感情を表す動作、という意味で「エモ」と呼んでいたような気がするので、そう書いています。

でも、本来は動作だとモーションという呼び方になるのでは、というご指摘がありました。

ちなみに今やってるMMOでは「エモ」でも「モーション」でもないので、全く参考になりません。

「エモ」と「モーション」のどっちを使うのか、ちょっと悩んだのですが、「エモ」でも大丈夫そうなら「エモ」にしてしまおうと思います。

エモエモ書いてると、思わず舌を噛みそうですね。

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