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テイマーさんと遭遇

 階段を上がりきると、そこには赤い屋根の三階建ての家があった。オルサの村では平屋、ジェドの他の家では二階建てしか見たことがないので、三階建てっていうのはお金持ちの証明かもしれない。

 お金持ちほど高いところに住んでるっていう法則があるとしたら、もしかしたらこの世界の一番のお金持ちは、スカイツリーみたいな塔に住んでるのかも。結構そこに強いボスがいたりしてね。


 さて、村長さんが言ってた、おいしいお菓子ってどんなのだろうなぁなんて思いながら、ジェドの町長さんのトコっぽい家の玄関に向かうと、不意に横から声をかけられた。


「こんにちは。虹色スライムのペットなんて珍しいね」


 いつの間にそこに現れたのか。ミニスカートのチャイナドレスを着た子が、玄関のドアの横に立っていた。もちろん知らない人だ。


「こんにちは……?」


 なんでいきなり声をかけられたのか分からずに答える。それにしても……この子のキャラって濃いなぁ。

 チャイナドレスの丈はミニで、黒いシルクの艶のある生地に、銀糸で胸元に龍の刺繍がされていた。ちょっと動いたらばっちり下着が見えちゃいそうなドレスのスリットからは、すんなりと伸びた足を惜しげもなくさらしている。足元のパンプスは、刺繍に合わせて銀色。

 セミショートの髪は白く、ちょっと釣り目で勝気そうな目の色は血のような真っ赤だ。そして左目は眼帯で覆われている。


 チャイナのミニはともかく、なんで眼帯? チャイナか海賊か、どっちかのテイストにして欲しいよね。


 あ、ひょっとしてあれかな、左目に別人格が宿っちゃってる系かな。そういうの、厨二って言うんだよね。真希ちゃんが、そのうち康太さんがそういう恰好するんじゃないかって怖がってたっけ。いくら何でもそれはないよ、って言ったけど……


 康太さんのキャラを思い出してう~んと悩む。


 魔法少女と眼帯チャイナと、どっちがアリかなぁ。

 ……うん。魔法少女の方がいいよね。


 それとも康太さんみたく、こういうアニメキャラとかがいて、コスプレ感覚とか。う~ん。アニメは詳しくないから分かんないや。康太さんなら詳しそうだけど。


 名前の表示色は青だからプレイヤーだよね。AkaNeって書いてあるから、アカネさんって名前かな。


「一ノ瀬由真さんってさ、このゲーム始めたばっかり?」

「そうですね」

「そーなんだぁ。ねね、お願いがあるんだけど。私ね、テイマーやってて、珍しい魔物を集めてるの。あなたはテイマーじゃないからそのスライムはペット枠だと思うんだけど、ペットだったら譲渡可能だから、私に譲ってくれないかな」


 はあ? 初対面でいきなり何なのこの人。


「ごめんなさい。お断りします」


 友達でも何でもない人に突然ぷっちょんを譲れって言われて、はいどうぞ、って答えるわけないよね。いや、初対面じゃなくてもダメだけどね。

 ちなみに、小首を傾げて胸の前で手を組んだお願いポーズしてもダメなものはダメだから。

 っていうか、そういうのって女相手には効果ないと思うんだけど。


「もちろん、タダとは言わないよ。100万コインでどうかな。それくらいあれば、かなり冒険するのも楽になるよ」


 100万コインが多いのか少ないのか分からないけど、康太さんに、それの何十倍もの資産をもらってるから意味ないんだよね。

 それにどんなにお金積まれても、ぷっちょんは渡さないんだから!


 私とアカネさんとの会話にぷっちょんが心配になったのか、少し青い色になっていたけど、なだめるように撫でてあげたらいつもの虹色に戻っていた。


「別にお金とかいらないです。ぷっちょんは私の仲間だから、譲れません。他を当たってください」

「他に持ってる人がいないからお願いしてるんだよ。ね、お願い。クエスト手伝ってあげるから」

「必要ありません。話はこれだけですか、じゃあ失礼します」


 アカネさんのことはサクッと無視して町長さんの家へ入る。


 なんかドアの向こうでもっとお金払うからとか色々言ってるけど、ぷっちょんを譲る気はないので、無視だ、無視。大体、なんでこんなに可愛いぷっちょんを他の人にあげないといけないのよ。私がこのゲームをやってる理由のほぼ99%はぷっちょんと遊べるから、なんだからね。ぷっちょんがいなかったら、楽しさ皆無になるじゃん!


「ゆ……由真。ボクのこと、いらなくなっちゃうの……?」

「そんなのあるわけないじゃん。ぷっちょんはずっと私のパートナーだから」

「由真ー! 大好きだよー!」

「ぷっちょん、私もー!」


 これが人間同士ならハグするところだけど、あいにくぷっちょんはスライムなのでナデナデしかできない。撫でても感触ないけどね。

 う~ん。こうなると、最近噂の五感ポッドVRっていうのを試してみたくなるね。なんか朝のニュースで画期的とかって取り上げられてたんだよね。もちろんぷっちょんと一緒に、だけど。


 でもシマさんが言ってたとおりになったなぁ。


 テイマーっていうのは魔物を仲間にして戦わせる職で、LV100になると転職できる。でもそれとは別にペットっていうのがあって、戦闘で戦わせることはできないけど、職に関係なく、誰でも好きな魔物をペットのように連れ歩くことができるらしい。

 ただし、ペットはゲーム内では買えない。課金して公式のホームページでガチャと呼ばれる福引みたいなのを回して、卵をゲットするのだ。もちろん卵の中身は分からない。ゲーム内アイテムとして手に入れた卵をアイテムとして使用してみて、初めてそれがどの魔物の卵か分かる。


 そしてテイマーがゲットした魔物は、ゲットしたテイマーしか扱えないけど、ペットは一回だけ他人に譲ることができる。

 これは、課金しなくても、課金してる人と同じように遊べるようにしなくちゃいけないって決まってるかららしい。


 シマさんが言うには、多分ぷっちょんもそのペット枠なんじゃないかってことだった。もしペット枠だったら、一回は取引することができるから、クエストを手伝ってあげるから譲れ、とか、初心者目線からすると大金だけど、ベテランにとっては少ないお金で譲れ、って言ってくるんじゃないかって心配してくれてたのだ。


 これからもそういう人が出てくるのかなぁ。

 ちょっと面倒だけど……ぷっちょんを守る為だったら、私がんばるよ! ぷっちょんは絶対に誰にも渡さないんだからね!


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