キャラメイク
『Another Gate Online』をやる為には色々と下準備がいる。まずPCにゲームをインストールする。えーっと、フルインストールとライトインストールがあるんだ。なになに?フルだと約3時間でライトだと10分。……とりあえず最初の村とダンジョンはライトインストールでいいみたいだから、こっちにしよう。後で残りを落とせばいいや。
これで10分後にはゲームを始められるね。
じゃあその前にちょっと攻略サイトでも見てみようかな。
おお、やっぱり人気のあったゲームだからか、攻略サイトが多いなぁ。あ、でも更新止まってるとこがほとんどだ。まあねぇ。真希ちゃんによると、今は村からそのまま出れるVRMMOが主流みたいだし、有名なゲーム会社がVRのビッグタイトルを出してからはそっちに人を取られちゃって、『Another Gate Online』をやってる人は少なくなっちゃったみたいだね。
あ、ここ見てみよう。初心者にお勧めの攻略だって。
ほー。村から出て最初の森で、10日間スライムを倒さずに観察してるとレアなスライムが出るから、それを倒してコインをゲットするといいんだ。たまに宝石も落とすのね、ふむふむ。
10分経ったから、ゲームを立ち上げてみる。
まずVR機器を接続してください、か。うん、これでよし。で、最初はキャラメイクね。この中から選ぶか、写真を利用してキャラメイクを選ぶ、っと。
モニターにはかなりの種類のキャラが映っていた。人種も髪も、全部違う個性豊かなキャラたち。中には人間じゃないよね、っていうキャラもいる。猫耳とか。
私はどうしようかなぁ。めんどくさいから、このデフォルトの一番上の顔にしよう。ポチッ。
名前は一ノ瀬由真でいいね。ほー、ここで名前が重複してると名前を付け直してくださいって言われるんだ。ってことは初の一ノ瀬由真さんだね。名前がかぶってなくてラッキー。
モニターの指示に従ってVR装置をセットする。大きいゴーグルみたいな装置は、想像してたよりも重さはなかった。
キョロキョロと暗闇を見回していると、どこからか音楽が流れてきた。ちょっとクラシックっぽくていい音楽だね、って―――
音!音が大きすぎ!!!
鼓膜が破れるかと思ったよ!
私は急いでVR器をはずすと、音量調整を探した。えーと、あ、ここにある。これだったら装着したまんまでもボリュームの調整できそう。これでOKだね。
じゃあもう一回かぶって、っと。
テレレ~と流れる音楽のボリュームはバッチリだ。いいねいいね。
そっと目を開けると、そこには女の人が立っていた。だ、誰?
「初めまして、冒険者さん。私はナビゲーターのルルリア。これから冒険を始めるためのアドバイスをしますね」
金髪碧眼、清楚系美人さんの説明を聞く。MMO自体が初めてだから、ここはちゃんと聞いておこう。
とりあえず内容は普通だった。このゲームではプレイヤー同士で戦う事はできないこと。不適切な発言や行動はペナルティーになること。操作不能になった場合はGMを呼ぶこと。VR器を外す時は、必ずログアウトしてからにすること、などだ。
話を聞いたら、今度は職業を選択することになる。えーっと戦士、僧侶、魔法使い、シーフのどれか、ね。うーん。どれがいいんだろう。
「お勧めの職業ってありますか?」
一応、ルルリアさんに聞いてみる。すると小首を傾げて考えるポーズをした。
うわぁ。よくできてるな~。本当に目の前で生きて喋ってるみたい。
「パーティープレイはしますか?」
「なんですか、それ」
「仲間とパーティーを組んで攻略していくことです」
「う~ん。一人で冒険したいです」
ストレス解消のためにゲームするんだから、わざわざ他人と付き合ってストレスの元を作ることもないよね。
「でしたら、村人はいかがでしょうか」
え!?村人って職業?職業なの!?
目を丸くしていると、ルルリアさんが説明してくれた。
「村人でしたらLV10になるまで、自由に職業を変えられますよ」
ほーほー。ということは、戦士やってみてダメなら魔法使いとか転職できるんだ。それはいいかも。
「転職したい場合は教会にいる神官に話しかけてください」
「じゃあ、村人でお願いします」
「分かりました。では村人用の冒険者応援セットはアイテムボックスに入れておきます。他にご質問はございますか?」
「ないです」
「もし分からないことがあればステータスバーのチュートリアルをご覧ください」
「はい」
「ではこれで説明を終わります。こちらの門にどうぞ」
ルルリアさんが示した先には、さっきまでなかった光る門が存在していた。
「この門は、あなたをアナザーワールドに連れて行くゲートです。門の上部に行き先が書いてあって、通り抜けられるゲートは、このように光っています」
「通れないゲートもあるってこと?」
「はい。向かった先に強い敵などがいる場合は、危険ですので門が反応しないようになっています」
つまり、光ってる門だけ利用すればいいってことね。多分、LVが上がったら、他の門も利用できるってことかな。
まあ何はともあれ、行ってみますか!
「素晴らしい冒険をなさってくださいね」
そう言って微笑むルルリアさんに手を振って、金色に光るゲートをくぐる。
さて。これから冒険の始まりだね。