シマさん色々説明してくれる
「ところで、君のその名前って、もしかして本名?」
「がっつり本名ですねぇ」
真希ちゃんにも危険って言われたんだけど、SNSならともかく、ゲームではみんな本名だと思ってたよ……だから真希ちゃんに、「由真はしっかりしてるようでいて、たまにすごく抜けてる」ってよく言われるんだよね。
「本名だとマズいですか?」
「芸能人の名前とかならともかく……同じ名前の芸能人はいないですよね」
「いませんねぇ」
「こういう、ネットゲームって初めてですか?」
「はい」
「……あんまり怖がらせたくはないけど、ネットゲームにはいわゆる出会い厨みたいなのがいるから、気を付けたほうがいいですよ。ストーカーもどきになることもあるから、どこに住んでるとか、高校の名前とか、そういうのは喋らないほうがいいです」
あ~。まあ、確かに。
一応、身バレしないようにしようとは思ってるけど……それに誰かとつるむ予定もないし。
「このゲームって一人だと遊べないんですか?」
「う~ん。コンテンツによっては、誰かとパーティーを組まないときついことがあるかもしれない。ボス戦なんかは、そうですね」
「ボスって倒さないとダメなんですか?」
「そうですね。倒さないと、先に進めない場合もあります。ただ、テイマーかサモナーになれば、一人でクリアできるかもしれません」
「テイマー? サモナー?」
トリマーの親戚みたいな名前だなぁ。ペットのトリミングしちゃうぞ。
「テイマーは魔物を仲間にして戦って、サモナーは精霊を仲間にして戦います。えーっと、由真さんは、テイマーのジョブなんでしょうか」
「ジョブって職業ってことですか」
そう聞くと、シマさんは頷いた。そして膝の上のぷっちょんを指さす。
テイマーってことは、魔物を仲間にする職業ってことだよね。確かに虹色スライムのぷっちょんを仲間にしてるけど、私はテイマーって職業じゃないんだよねぇ。
「えーっと、職業は村人です」
そう言うと、シマさんはもう一度ぷっちょんを見て、そして首を傾げた。
「村人にテイマーのスキルなんてあったかな?」
スキル欄にテイマーがあるかどうか聞かれた私は、もちろん首を振った。だってそんなのがあったら、もっとたくさんのスライムを仲間にしてるもん! 目指せ、スライムハーレム!
「とすると、村人固有のスキルじゃなくて、何か違う要素でテイムできたってことか。そうだな。喋ってるし、レアな個体なのには違いない。そうすると……」
何やら考えこんだシマさんは、よかったらどうやってぷっちょんを仲間にしたのか教えて欲しいと頼んできた。別に隠すことでもないので、ぷっちょんがいかに可愛いかを語りながら、今までのことを教えてあげる。
「スライム大好き倶楽部か!」
シマさんは激しくそこに反応した。
ふふ。やっぱりスライム好きが認められるのは嬉しいからね。シマさんも欲しいんだろうね。でも絶対にあげないよー。っていうか、譲渡不可になってるから、どうやってもあげられないんだけどね。
「大型アップデートが11月15日にあったのは知ってる?」
「そうなんですか? 私、始めたのがそのすぐ後だったんで知らなかったです」
「それで一週間くらい前にまたアップデートがあってね。その時の告知で『隠しクエスト、スライム大好き倶楽部は終了しました』って出たんだ。それで誰もそのクエストを知らなかったから、スライム大好き倶楽部って何だろうって話題になってたんだけど……そうか。新規じゃないとできないクエストだったんだね」
ふ~ん。じゃあたまたま私は運が良くてそのクエストを受けられたって事なんだね。っていうか、そのおかげでぷっちょんを仲間にできたのか。わーい。隠しクエストさん、ありがとー!
「しかも喋る虹色スライムを仲間にできるとか……これは、荒れるなぁ」
「荒れる?」
「あ~。運営への抗議で荒れるってことだよ。多分なんだけど、スライム大好き倶楽部のクエストができたのって、多くても10人以下なんじゃないかな。由真さんがスライムの森に通ってた時に、他のプレイヤーに会ったかい?」
ぷっちょんに会うにはスライムの森へ10日間通わないといけない。その時に他のプレイヤーには一切会わなかった。だけど違う時間に通ってたって可能性もあるんじゃないのかな。
「新規のプレイヤーって、わりと攻略サイトを見てプレイする人が多いみたいで。今は新規応援でお使いクエの経験値が上がってるから、スライムの森で10日間レアスライムの出現を待ってるよりも、さっさとLV10まで上げて次の町に行って、そこでガンガンLV上げするっていうのが主流になってるんだよね」
えー。じゃあ私がチラっと見たあのサイトは古かったってことかな。古いなら、古い情報だって書いておいてほしいよ。
あ、でも、そのおかげでぷっちょんと会えたんだっけ。
すみません。古い情報で良かったです。攻略サイトさん、ありがとう。




