魔法を使ってみました ※
しばらくぷっちょんの可愛らしさを堪能した後は、もう一つの考察をしてみようと思う。
職業村人が魔法LV1を覚えるということは、つまり、私は魔法を使えるということになる。今まで使ったことがないけど、せっかくVRゲームをしているのだ。ここは魔法を試してみるのがセオリーだろう。
といっても、構えるのがスコップだとあんまりサマにならないんだけども。
「ファイア」
大ネズミを選んでファイアを唱えると、小さな丸い火の塊がスコップの柄の木の部分から飛び出てきた。でも一撃では倒せないらしく、反撃しようとこちらに向かってくる。
「ファイア」
もう一度魔法を当てるけれども、まだ倒れない。
仕方がないので、目の前に迫ってきた大ネズミを迷わずスコップで殴り倒す。
それでようやく大ネズミを倒せた。
「うーん。物理攻撃より魔法の方が弱いなぁ」
その時、ポーンと音が響いた。
『LV10になりました。
シャベル躁術を覚えました。
スコップ連打のスキルを覚えました』
「シャベル躁術……?」
LVが上がったと同時に新しいスキルも覚えたらしい。説明を読むと、シャベルの使い方がうまくなる、と書いてある。
び……微妙なスキルなような……
あ、でもスコップ連打のスキルは使えそうだよね。1回のダメージは小さいけど、ランダムで3回から5回のダメージを与えられるって書いてある。
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一ノ瀬由真
LV 10
職業 村人
HP 28
MP 29
STR 16
DEX 17
VIT 19
INT 25
AGI 37
MND 24
LUK 9
スキル
剣LV1
短剣LV1
弓LV1
魔法LV1
回復LV1
シャベル躁術LV1
スコップ連打
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うん。ステータス見ても強くなったんだかどうだか、さっぱり分からないね。
でもとりあえず剣とか魔法とかは、使えば使うだけ強くなるってことでいいのかな。ってことは、魔法もいっぱい使ったら強くなるってこと?
ちょっと試してみようと思って、どんどん魔法を使ってみる。
とりえあえず魔法だけで倒せるかやってみよう。
「ぷっちょん。ちょっと試したいことがあるから、下がっててね~」
「わかったー!」
ぷっちょんも安全なとこに避難させておいて、っと。
魔法が届く一番遠いところから魔法を放つ。
「ファイア」
そして少し後ろに下がって距離を取りながら
「ファイア」
さらに下がりながら
「ファイア」
3回目のファイアで、大ネズミは光に包まれて消えた。
「下がりながら魔法を打てば、ダメージを受けずに倒せるね。この調子で何度かやってみようっと」
ファイア以外のウォーターとかアイスとかサンダーも使ってみる。でもどの魔法を使っても、大ネズミを倒すには3回魔法を使わないとダメだった。
そのまま炭焼き場にいる大ネズミを狩りつくす勢いで倒していると、ポーンとお馴染みの音が聞こえてきた。
『魔力操作を覚えました』
やったー。何か覚えた!
魔力操作ってなんだろ。えーっと、魔力を使うのがうまくなる、だって。じゃあさっきと同じファイアでも少し違ってくるのかな。
大ネズミで検証すると、ファイアを打った時の火の玉の大きさに違いは見られないし、倒すのに3発必要なのも変わらなかった。
うーん。もうちょっと魔力操作のLVを上げるか魔法スイル自体を上げないとダメなのかな。
そういえば、LV10になったらスキルマスターからLV2のスキル本を買えるんじゃないっけ。よし、そーと決まれば。
「ぷっちょん。一度村に戻るよ~」
「おっけ~」
そう言うと、ぷっちょんはぴょんと跳ねて私の肩に乗ってきた。
「えへへ。このほうが移動が楽なんだもん。いいでしょ?」
かわいらしくプルプルしながらそう言われたら、いいよって答えるしかないよね。
急いで村に帰って、教会にいるスキルマスターからそれぞれのスキル本を購入する。それを読めば全部のスキルがLV2になった。
それからまた炭焼き場に戻って、魔法を試してみた。
「おお! 2発で倒せる!」
シャベルの先から出る火の玉はさっきよりも少し大きく、大ネズミも魔法2発で倒せた。
とりあえず満足して、今日はこれまでにする。
ぷっちょんのLVもまた上がったみたいだし、いい感じだね。明日は次の町に行こうかな、と考えて、大切なことを思い出した。
やばい。来週から期末試験じゃん!
さすがに試験勉強をちょっとはしないとね、ということで、村長さんにスミを渡して、一週間ログインできないからぷっちょんをスライムの森まで送ってから、ログアウトした。




