表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

虫退治

 リックさんの家は教会の裏手にあった。ドアを叩いて家の中へ入ると、日に焼けた小太りのおじさんがいる。おじさんは家の中でも麦わら帽子をかぶっていた。


「おや、君は新しい村人の由真くんだね」

「こんにちは。村長さんの紹介で来ました」

「ああ、虫を退治してくれるのかな」


 リックさんによると村の畑にキャタッピという虫が現れて、一生懸命育てた作物が被害に合ってしまって困るので、それを倒してほしいという事だった。


 キャタッピかぁ。多分、イモムシ系のモンスターなんだろうなぁ。あんまりグロくないといいんだけど。


「分かりました。じゃあ10匹倒してくればいいんですね」

「よろしく頼むよ。キャタッピは体当たりしかしないけど、気をつけて行くんだよ」


 ほーほー。キャタッピの攻撃は体当たりだけってことね。こういう風に、戦うモンスターのことを教えてくれるんだね。まあ最初は懇切丁寧に教えてくれるのがセオリーだしね。


 それでは虫退治に行ってみようか!


 ぷっちょんと一緒に噴水広場のゲートの場所へ行く。すると今まで光っていなかった『村の畑』行きのゲートが光っていた。

 ぷっちょんと一緒にゲートをくぐると、そこにはキャベツ畑が広がっていた。


「おー。キャベツだ」


 確かにイモムシの好物はキャベツだもんね。さーて、キャタッピはどこかな。

 キョロキョロと辺りを見回すと、キャベツを丸のみしているイモムシがいた。でもその体は小型犬くらいの大きさで、イモムシと言うにはかなり大きい。


「うえぇ」


 あれを倒すのかぁ。血とか出るのかな。色は緑かな。それってキモイなぁ。


 もし倒す時にリアルに緑の血とか青い血とかが出てきたらどうしよう。そしたらこのゲームを続けるのは無理かも。

 でも、最近はそういうの規制されてるみたいだし、大丈夫かなぁ。


 確か5年くらい前にリアルな描写を売りにしてたVRゲームが発売されたんだけど、戦闘や流血がリアルすぎてトラウマを抱えるプレイヤーが増えたり、人を傷つけることに対しての抵抗が少なくなって犯罪をおかすプレイヤーが出たことから、販売中止になって、VRゲームに対する規制もかなり厳しくなったのだ。その頃はかなりTVとか新聞で騒がれたからよく覚えてる。お母さんも、それでVRは教育に悪いとか言って、我が家では一切禁止だったもんね。


 だからそんなにグロい流血表現はないはずだけど、と思いながらキャタッピに近づく。

 キャタッピは近づいただけで襲ってくるタイプのモンスターじゃなくて、こっちが何かしない限りは襲ってこないノンアクティブと呼ばれるタイプのモンスターなので、すぐそばまで寄って観察することも可能だ。


「……どこからどう見てもイモムシだね」


 これって大きくなったら、やっぱりモンシロチョウになるのかな。でもイモムシがこの大きさってことは、蝶になったら巨大なモンシロチョウになりそうだよね。そして蝶ってよく見たら結構グロい顔をしているよね。


 うん。あんまり遭遇したくない。


 やっぱり虫タイプのモンスターはあんまり好きじゃないなぁと思いながらシャベルを構える。気分はすっかりガーデニング好きによる害虫退治だ。


「ぷっちょんは危ないから私の後ろにいてね」

「由真、大丈夫?」

「うーん。多分?」


 モンスターと戦ったことってないけど、お使いクエでLVも上がってるし、なんとかなるんじゃないかな。

 それにモンスターのLVが私より高い場合は、赤とかオレンジで名前が表示される。でもキャタッピの名前は白だから、同格か格下ってことになる。だったら普通に倒せるはずだよね。

 最悪、死んじゃってもLV20まではペナルティーなしで教会で復活できるし。


 キャタッピに向かってシャベルを振り上げると、シャベルがそのままうにょ~んと伸びてスコップになった。それをそのままキャタッピに叩きつける。

 するとキャタッピは悲鳴も上げずに光に包まれて消えた。その後には何やら牙のようなものが落ちている。

 拾ってみると『キャタッピの牙』と書いてあった。これがキャタッピのドロップアイテムなのかな。


 それにしてもイモムシに牙なんてあったっけ? まあキャベツをモリモリ食べてるんだから、牙くらいはあるか。


 納得して次のキャタッピを探す。すぐ近くのキャタッピを倒した時には何もドロップしなかった。


 そうして10匹のキャタッピを倒し終ると、クエストが完了しましたという表示が出る。後はまたリックさんのところへ行って報告すればいいだけだ。


 するとぷっちょんが後ろで私を呼び止めた。


「由真、由真。ボクね、ちょっと大きくなったみたいだよ!」


 振り返ってよく見ると……うん。分かんない。いやだって、スライムが一回り大きくなっても、ぷるぷるしてるから分からないよね?


「だからー。ステータスバーで仲間ってとこ見て! ね? 大きくなってるでしょ」


 七色にキラキラと光るぷっちょんはとても嬉しそうだ。そして確かにステータスバーからぷっちょんのステータスも見れた。自分のステータスもちゃんと見てないから、こんなとこで見れるとか気がつかなかったよ。


 そしてぷっちょんはLV2にレベルアップしていた。

 おおー。それで大きくなったんだ。いやでもちょっと待って。このままレベルアップしたら、どんどん大きくなるってこと!? そしたらLV99とかになったらどうなっちゃうの? あれ、『Another Gate Online』ってLV1000とかもいなかったっけ?

 え? え? ぷっちょんってば、いつかLV1000のスライムになっちゃうの? そしたら小山サイズ? それって、もはやスライムじゃないんじゃないのかな???





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ