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The GORK オカルト探偵目川純は助手の女装高校生リョウが気になってしかたがない。  作者: Ann Noraaile ノラエイリ・アン
「沢父谷姫子の失踪」
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The GORK  8: 「愛するって怖い」Nパート

         8: 「愛するって怖い」Nパート


 スマホで嘉門を、夢殿の北にあるカフェに呼び出しておいた。

 前の件があるから、嘉門が僕の前に姿を現すかどうかは五分五分だったけど、彼はきっちり指定した時間通りに僕を待っていた。

 カフェのガラスドアに薄く映る自分の全身を最後にチェックして、僕は店内に入った。

 まあまあの化けっぷりだった。


 嘉門は店の奥のテーブル席にいたので、僕の姿はしばらく他の客に晒される事になった。

 いつもならその程度の事で、自意識過剰になったりはしないのだが、今日は少し勝手が違った。

 なぜなら今日の僕は、高慢知己で高飛車な女を演じているからだ。

 メイクだってお水系だし、いつもよりはるかにきつく濃い。

 シャネルのバイソン柄のフェイクレザーのショートジャケットも、ミニスカートも、いつもならコーディネイトに気を使って柔らかな印象になるように気を使うんだけど、今日はもろビッチだ。

 勿論、理由はたった一つ、これから始まる嘉門との駆け引きを有利に運ぶためだ。

 ともかく僕は店中の男達のねっちりした視線を引きずりながら嘉門がいるテーブルの前まで歩いた。

 すぐに座らないで少し脚を開いた状態で、腕組みをして嘉門の顔を冷ややかに見下してやる。


「なっ、なにやってんだ、座れよ。」

 それでも僕が何も言わないでいると、渋々、嘉門は自分の席を立って僕の為の椅子を後ろにひき始めた。

 勿論、ここはそんな作法が必要な高級カフェじゃない。

 これは主導権の問題だった。

 僕は黙って腰をおろすと、嘉門に見えやすいように意識しながら脚を組んだ。

 足首がキュッとしまって脹ら脛にそれなりのボリュームがある脚にはちょっと自信がある。

「何の用事だ?電話でも言ったろう、あんたが聞きたがっていた事は、あの男に総て伝えた。」

「総て?じょーだん。あんたみたいな奴が、警察でもやくざでもない只の探偵にホントのことを、みんな言うわけがないわ。」

 こんな時は、おもむろにハンドバックからバージニアスリムのメンソールでも取り出して火をつけ、一服した煙を相手の顔に吹きかけてやればいいんだろうけど、僕は一切煙草を吸わない。

 それに丁度、ウェイトレスが僕の為の注文を取りに来たところだった。

「何になさいます、」

 ポニーテールのウェイトレスが興味津々と言った顔で僕と嘉門の顔を見比べる。

 たぶん僕たちのシチュエーションを「多額のお金の必要なデート現場」だと思っているのだろう。

「アイスオーレ。」

 僕は嘉門から視線を離さないで短く答えた。

 ウェイトレスが「かしこまりました。」という前に、少し息をのんだ。

 おそらく僕の男声を聞きとがめたのだろう。

 勿論、ウェイトレスはすぐに立ち去った。

 この夢殿には、綺麗な女に見える男が結構いる事を思い出したのだろう。

「煙猿のこと、もっと詳しく教えてくれる?」 

 嘉門の細い目が一瞬見開かれる。

 僕の口から煙猿という名前が飛び出たことにショックを受けたようだった。

「冗談だろ、、金を積まれたって教えるものか、こっちの命が危ない。」

「煙猿はあの探偵が始末してくれる、、中途半端が一番危険なんじゃない。」

「けっ。あのオカルト探偵が頼りになるもんか、、。」

 僕はなんだか無性に腹が立ってきた。

 確かに所長は頼りないが、こんな男に馬鹿にされる謂われはない。

「あなた、目川がそこいらじゅうの暴力団にコネや貸しがあるの知らないんでしょ。それに一匹狼の煙猿を目障りに思ってる組織は多い。言ってる意味、判る?」

 前半は事実、後半は僕の当て推量だけど、恐らく的ははずしちゃいない筈だ。

 現に嘉門は僕の言葉に随分考え込んでいる。

「金を貰っても何も言うつもりはない、、だが、、金以外なら考えてもいいがね。」

 ほら来た。

 嘉門が僕の誘いに載った時点で、大体の予想がついていた。

 嘉門はまだ僕に未練があるんだ。

「お金以外って何よ?アタシの身体が欲しいなんて百年早いわよ。このマゾ豚君。」

 嘉門の表情が又、ひきつる。

「あんたこの前、アタシに蹴られながら感じてたでしょう。ばれてないとでも思ってた?マ・ゾ・ブ・タっ。」

「・・あんたの誠意だ。気持ちでいい。この俺にモノを頼んでいるんだという誠意で、、」

 嘉門の声が震えている。

 どうやらその震えは、マゾ豚と呼ばれた事に対する怒りではなさそうだった。

「この俺?随分、お偉いのね。それに誠意って何よ?」

 僕は、はぐらかすような口振りで言ってから、目を細めて見せる。

 嘉門の言う誠意が何であるか、なんとなく判った。

 この前、嘉門を痛めつけた時に、僕の履いたブーツにしがみついていた彼のあの動作は身を守る以外のものが含まれていたからだ。

 多分、嘉門は僕の身につけたものなら、なんでも気に入るに違いない。

「・・あたしトイレに行きたくなった。あんたの言う誠意が用意できるかも。」

「、、、なっ、ならちょっとだけ待ってくれないか。」

 嘉門の顔が急に輝いたかと思うと、彼はそのまま席を立ちカフェの外に飛び出して行った。


 僕の同級生で、嘉門にそっくりな奴がいる。

 そいつはヘテロで、ウチの女子生徒に邪な愛を抱いていた。

 まあ半分以上、ストーカーだ。

 奴は秘かに、その女子生徒の家から出る家庭ゴミを漁ったり、酷いときには、彼女をこっそりつけ回して、彼女が吐いたガムの食べ滓を拾ったり、鼻をかんだテッシュを回収したりする。

 だから僕は、嘉門が「誠意をくれ」と言ったときにピンと来た。


 僕が、『嘉門はもしかして唾を吐きかけたハンカチを渡した程度でも、十分満足したのかも知れない』と後悔し始めた頃、彼は汗だくになって帰って来た。

「これに入れてくれないか。それにこっちは替えの。」

 そう言いながら嘉門はコンビニの白い袋を押しつけてくる。

 ちらりと中身をみると新しいパンティと、食べ物を密封して保管する為のジッパー付きのビニール袋が入っていた。

 こいつなんで勝手に、僕の誠意がパンティだって決めてるんだ?

 それにこのビニール袋は何に使うんだ?

 僕が不思議そうな顔をすると嘉門は顔を真っ赤にして言った。

「それに入れると匂いがなくならないんだ。頼むよ。」

 恐ろしく真剣で恥じらいのない表情だった。

 この時点で嘉門の恋愛対象は、この僕からパンティに移り変わったのかも知れない。

「ふん、変態、、」

 僕は席を立ってトイレに向かった。



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