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The GORK オカルト探偵目川純は助手の女装高校生リョウが気になってしかたがない。  作者: Ann Noraaile ノラエイリ・アン
「沢父谷姫子の失踪」
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The GORK  3: 「どしゃぶりの雨の中で」

         3: 「どしゃぶりの雨の中で」


 その日、家に帰った僕は、早速、沢父谷から手渡されたDVDをデッキに入れてみた。

 円盤の表面にタイトルの類は一切ない。

 プレィが始まる短い空白時間に、嫌な予感がした。

 もしかしたらこれから僕の目の前で、沢父谷がくわえ込んだ男どもとのセックスシーンが展開されるのかも知れない。

 ・・屈折した意味のない冗談。

 何処かで、沢父谷とこのDVDに登場する男が、自分たちのセックスを見てる僕の事を、「カマには猫に小判」とかいいながら笑い転げているのかも知れない。

 僕は頭を振って、そんな妄想を消し去り、映像を待ち受けた。

 始まった映像内容は、僕のそんな危惧から近からずも遠からず、、だった。

 でも、それは少なくとも、沢父谷が自分自身で作成したプライベートDVDの類いではなかったようだ。

 おそらくこれは、裏の販売ルートに乗っかるような代物なのだろう。

 僕は、その手のDVDを、探偵事務所の所長から嫌というほど、講釈付きで見せられていた。

 こういった代物は、けっこう性犯罪ぎりぎりの所で撮影されるものが多い。

 そういうキナ臭い雰囲気が、付随していないと、何でもネットでダウンロード出来るような時代では需要がないのだそうだ。


 ただ沢父谷は、そういった裏のDVDに出ているわりに、現場でそれほど酷い仕打ちを受けている様には見えなかった。

 暴力シーンと言えば、女子高生の制服を着た(ちなみにその制服はウチの高校のそれではない)沢父谷がミッキーマウスのかぶり物を無理矢理かぶせられた上、ローションを力一杯、平手で制服の上から叩くようになすりつけれるといった訳のわからないシーンぐらいのものだった。

 ファーストシーンは、もっと気味が悪いもので、姫子が彼女の制服スカートから突き出た偽の男性性器に縄を括り付けられ、きつい顔をした女性に夜更けの街を引きずられる姿が映っていた。


「いやーん、そんなに強く引っ張らないで下さい。ちぎれちゃいますぅ。」

 昼間間近で聞いた姫子の声が、学芸会なみの演技力で、彼女のグロスリップを塗った口から漏れる。

 台詞まわしは恐ろしく下手なくせに、体技はまるでアクロバットダンサーレベルでぐねぐねと扇情的に動いた。

 女性の痴態に全然興味のない僕でも少し興奮したほどだ。


『アダルトのレンタルやネットのお陰だよ。素人さんのやることが凄くなったのはね。まず男が見るだろう、それをオンナに試してみたりねだってみたり、次にそれぞれの側の週刊誌とかがそれを煽り立てる。ちょと前なら凄ぇ変態行為だったのに今じゃ普通っていうのが山ほどあ。おまけにエロ見るのに、今じゃネットで落としたりな、レンタルショップにさえいく必要がないと来てる。幸福な時代だよ。でも何事にも過程ってか努力が必要だと思うんだよな。それで自分が手に入れたものの有り難みが判る。』

 所長の仏頂面を思い出した。

 超昔の特殊エロテープの収集家のくせに、現状を批判するとは笑わせるけれど、言っている事に間違いはないと思う。


 変態どもが「女子高生」相手に、思いつく限りの訳の分からないフェチ行為を次から次と展開していくDVD構成に、なんだかおかしみさえ覚え始めた頃、「そいつ」は突然、僕の前にその姿を現した。

 今から考えれば、奴は「そこ」で僕を待っていたのかも知れない。

 野外シーンの一場面で、大きな姿見鏡を使ったパートが登場するのだが、その姿見鏡の中に一瞬だけ映った男の影に、僕は衝撃をうけたのだ。

 何故かは、判らない。

 おそらく僕以外の人間なら、その男の姿は見逃されていただろう。

 その男の正体は、鏡が反射するという事を忘れ、たまたまカメラの片隅の視野に入ってしまった迂闊な撮影スタッフの一人だと考えるのが順当だからだ。

 DVD画像を静止して目を凝らしてみると、そこに額に丸いワッカが蚯蚓腫れのように浮き上がっている男がぼんやりと写っていた。

 こいつは、危険な男だ。

 僕には、それが判った。

 そしてそれを見てから、何故か僕は酷い頭痛に悩まされる事になったのだ。


 翌日、僕は姫子のプロポーズに対するなんの答えも出せないまま学校に行った。

 だが問題は起こらなかった。

 つまり僕からの「返事を待っている」筈の、当の姫子が学校を休んでいたからだ。

 次の日も姫子は休んだ。

 そして次の日も。 

 僕は、ついに姫子の担任に彼女が休んでいる理由を聞く決心をした。

 基本、「他人の事なんか、どーでもいい」ってスタンスを取ってる僕にとっては、一大決心だたった。

 たぶん、自分へ思いを寄せてくれた女の子への心配というより、DVDの中に写っていたあの男の存在がそうさせたのだろう。


 彼女の担任は後藤秀典という男で、僕たちの体育を受け持っている教師でもあり、比較的気軽な気持ちで声をかける事ができた。

 おまけに後藤はゲイだという噂だったし、、。

「理由が知りたいのはこっちの方だよ」と前置きした後藤は、沢父谷がなんの連絡もせず学校を休んでいること、その間、彼女の養育者である祖父母の家にも戻っていない事を綺麗な歯並びを見せながら僕に教えてくれた。

 どうやら後藤の説明の端々から、彼は姫子が男とできあがってしまって学校や家をふけているのだと推測しているのが感じ取れた。

 でもそんな事がありうるのだろうか?

 彼女は、学校や家から姿を消す前の日に、この僕に奇妙な「恋の告白」をしていたのだ。






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