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逃げよ竜~The dragon's escape~  作者: 煌星 猪良(きらぼし いら)
4/4

友人の書いていたのはここまでですね。まぁ、これも(以下略)

 それから俺と鱗は、父さんに言われた通り、夕食の後はすぐにそれぞれの部屋に入った。

 鱗の部屋は一階、囲炉裏の向こうの部屋で、俺の部屋は、一部屋の二階全体だ。


「…………」


 俺は布団の上に座り、父さんと母さんの妙な様子について考えてみる。どう見ても何かがおかしい、絶対に何か裏がある……そうは思う。

 でも、一体何がおかしいのか、裏にあるものは何なのか、具体的なことに心当たりがない俺は、それ以上思考を進めることはできなかった。


「……ああ、分からねえ! 今日はもう寝る!!」


 やがて俺は、そう独り言を言うと上着を脱ぎ、寝る時の格好である半裸の状態になる。

 そして、脱いだ上着を置こうと後ろを向いた時、置いてあった鏡がふと目に入り、俺は動きを止める。

 俺の目は、鏡を通して見る自分の背中の、肩甲骨の間を向いていた。そこにあるのは、広げられた二枚の翼のような形の、青い大きめのあざだ。

 翼の形は、鳥のものではなく滑らかで角ばった、まさに竜が持っているもののような形。

 それも、驚くほど鮮やかで左右対称、まるで刺青いれずみを入れたかのような痣だ。


「生まれた時から……こんなものがなあ…………」


 俺は痣を見つめながら、また独り言を呟く。というのも、この痣は俺が生まれた時から、今と変わらないくらいの鮮明さで背中にあったと、母さんが話していたからだ。

 普通に考えれば、痣の鮮明さからも、到底信じられるような話じゃない。だが、俺は生まれた時から同じような痣を持っていた人間を、この目でしっかりと見ていたから、母さんの話はすんなりと信じることができた。その人間っていうのが……


「お兄ちゃん……」


 するとここで、突然横から俺を呼ぶ声が聞こえ、俺はすぐにその方を向いた。そこには、パジャマ姿で少し深刻そうな顔をした、妹の鱗が立っていた。


「鱗……? どうした……」


 俺は眉をひそめてそう言いかけたが、その時に自分の上半身が半裸であることに気付き、慌てて布団で上半身を覆って叫ぶ。


「わっ! い、いきなりなんだよ! 俺の部屋に入るときは一声掛けろって……」


 だが、そこまで言ったところで、鱗は深刻な表情のまま、静かな声で切り出した。


「お兄ちゃん、私…明日の『竜狩り』…行っちゃいけない気がするの」


「……は?」


 鱗の言葉に、きょとんとした俺は慌てるのを止め、呆けた声を出す。鱗はさらに続けた。


「明日の『竜狩り』……上手く言えないんだけど、すごく嫌な感じがするの。何て言うか、そうね…………」


 ここで鱗は、一旦言葉を切って頷くと、一層深刻そうな顔をして続けた。


「行ったら……もう帰ってこれない……みたいな……」


「……り、鱗……?」


 鱗のただならない様子に、俺は軽く息を飲んで呟く。するとすぐに、鱗は首を横に振り、作り笑いをした顔で言った。


「ううん、『竜狩り』が村の恒例行事だから、行かなきゃいけないことは分かってるの。こんな時に、変なこと言ってごめん。じゃあ、お休み……」


 そう言うと鱗は、きびすを返し、そそくさと階段を下りていった。


「…………」


 その時、押し黙ったままの俺の目は、最初は階段を下りていく鱗の背中を見ていたが、すぐに彼女の足首に向いた。鱗の足首にあったのは、俺と同じような感じの痣だ。

 だが、それは翼の形じゃなく、少し縦長の六角形の模様が、いくつか規則的に並んでいる、そう、ウロコのような形の痣だった。

 ここまで言えばもう分かるとは思うが、俺がこの目で見た、生まれた時から痣を持っていた人間……それは、鱗のことだ。

 当時俺は2才だったが、狭い範囲で小さく目立たないながらも、あまりにも鮮やかで規則正しい、それでいて綺麗な縦長六角形の痣は、幼い俺の記憶に刻まれるには、十分すぎるぐらいに印象的だった。

 そんなことを思ってるうちに、鱗は階段を下りていき、ついに見えなくなる。


「…………なんだったんだ……? あいつ……」


 俺はまた独り言を呟くと、布団の上に横になり、また考え始める。明日の『竜狩り』に行っちゃいけない……?なぜだ?

 あいつは俺によく冗談を言うが、あの顔は冗談を言う時の顔じゃなかった……。何か変な夢を見て、現実とごっちゃにでもなっているのか……?

 いや、認めるのはしゃくだが、あいつは高校に通っていない俺なんかよりも、はるかに頭は良い。

 そんなあいつが、夢と現実の区別が付かなくなるなんて、俺でもならないことになるものか……?

 何よりも……父さんと母さんに似たのか、あいつもたまに変なところで、やたらと勘が鋭いしな……。


























 じゃあ、まさか本当に、何かが……起こる……のか…………?



 それからしばらく俺は、我ながら自分らしからず長く考え続けていたが、そのうち疲れてしまったのか、気が付いた時には睡魔に捕らわれており、深い眠りに就いていたのだった。

この作品の執筆は基本的にとても遅いです。

なので、更新は気長に待っていただけると嬉しいです。

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