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クリスタル・トラオム  作者: TAKAYA
第一章 曙光
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一話 そして廻り出す①

人生は初のオリジナルモノです。御指摘、ご感想等御遠慮無くどうぞ。

 遥かな昔この世には“無”しかありませんでした。そう、何も無かったのです。

 しかしその“無”の世界に突如一つの存在が生まれました。

 その存在は何もない“無”に“世界”という名を付け空間や星や大地や命と言ったモノを次々と創られていったのです。

 それがこの世界“トロイメライ”の誕生の始まりでした。そして人の歴史の始まりでもあります。

 トロイメライに生まれた人々は自らの創造主たる存在を『女神 アンファング』と呼び崇め、アンファングは人々に『理力りりょく』という力を与えたのです。

 人々は女神からの恩恵を使い永い時間をかけ文明を築いていきました。

 澄み切った空、豊かな森の深緑、光を受け煌く海、穏やかな人々の営み、自然の中で穏やかに過ごす精霊や妖精、そして神獣達。

 アンファングの庇護の下、世界は平和を教授し幸せな日々を送っていました。

 しかしある時、女神アンファングの光の世界に闇を与える存在が生まれたのです。

 その闇は自らを『女神 ツェアシュティーレン』と名乗りトロイメライに魔物や魔人を産み落とし世界を破壊しようと暴れまわりました。

 アンファングは人々を守る為人々の中から選んだ数十人の勇者と共にツェアシュティーレンに立ち向かいました。

 光と闇の戦いは激しく勇者達は次々と倒れ大地には無数の屍が積み上げられていきました。

 しかしアンファングと生き残っていた勇者たちの光の刃が遂にツェアシュティーレンを貫き討ち果たしたのです。

 そして自らの創造主たるツェアシュティーレンを失った闇の勢力の生き残りはトロイメライの遥か北の地に逃げ込みました。その海に隔てられた遠い北の地を何時しか人々は“闇の大地”と呼ぶようになりました。

 勝利を得て人々を守った女神アンファングでしたが自身も深く傷を負いその命に危機が訪れていました。

 アンファングは生き残った勇者達にトロイメライを託す旨を伝えると何時覚めるともしれない永い永い眠りへと付いたのです。

 勇者達はアンファングの身体を誰にも分からない場所に安置しアンファングに代わり世界の平和を守る事を誓い合いました。

 それが『八神国』の誕生の瞬間でした。


          ~~~『トロイメライ誕生譚』より~~~



 トロイメライ誕生より幾星霜、人類は始まりの国である『八神国』以外にも国を建て何時しか領土を奪い合う争いの次代を迎えていた。

 “我こそが絶対の王なり”と叫ぶ者もいれば“この争いを鎮める為に”と掲げる者――――――理想や欲望によって広がる戦火は消える素振りすら見せず人々の心は絶望に染まり、女神の名を呟きながら見えぬ平和を願う日々が続いた。

 だがその儚い祈りを砕くかのように人々を驚愕させる事態が発生する。

 それは北の海よりやって来た―――――御伽噺だと思っていた『闇の大地』より魔族と名乗る者達が侵略してきたのだ。

 始まりの国である『八神国』すら大小の争いをしていた為、人類の敵とも呼べる魔族を目の前にしても纏まりきれず次々と敗走し国が滅ぼされていった。

 “助けてと…”と“救いは無いのか…”と希望を砕かれた人々の嘆きが空と大地に響き渡りこのまま世界が闇に染まるのも時間の問題、と思われていた。

 だが各国より国の枠を超え集った騎士や戦士、理術師(りじゅつし)が独自に連合を結成。怒涛の勢いで押し寄せていた魔族の侵攻を止め、そして一気に反抗に出た。

 数多くの勇者が力尽き地に倒れていくが人類連合は遂に敵の中核たる者を討ち取る事に成功し、魔族達は北の地へと押し返されていく。

 多大な犠牲を出したこの戦の後、世界各国で不戦協定や不可侵条約が結ばれ久方ぶりに世界から大きな争いが消えたのだった。

 後に『人魔戦争』と呼ばれる戦から五十年の月日が流れた――――――――――





 ☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆





 汽笛を鳴らし車輪からブレーキ音を響かせながら列車が駅のホームへと進入し停止する。

 列車の中に居た乗客たちは各々扉を開けホームに散ってゆく。急いでいる者、周囲を忙しく見渡している者、待ち人に出迎えられている者など様々だ。

 そんな集団に混じり一人の少年がホームの外へと足を急がせていた。

 自然な感じに流されるショートウルフに近い茶色い髪に少しのあどけなさと力強さを宿す黒い瞳。

 白の半袖シャツに赤いベストに藍色のジーンズ風のズボン、黒のスポーツシューズを身に着けており年相応の活発さを感じさせる。

 荷物である手提げ袋を担ぎ、改札を潜り駅から出た少年は駅前から見える町並みを見渡すと、


「懐かしいな、あんまり変わってないや」


 笑みを浮かべながらそう呟やいた。


「ここがマスターが通っていた学校がある街なんですね!」


 突然少年のシャツの中から小さな女の子が這い出し少年に向けそんな質問をした。

 ポニーテールにされている薄紫色のセミロングの髪、髪と同じ瞳、そして膝下の白いワンピースに身を包んでいる女の子はシャツから這い出ると自身の背中にある四対の半透明の羽根を震わせ中空に飛び立つ。

 『妖精』この世界の住人の一種であり人里には滅多に姿を見せない。『妖精』と一言で表したが様々な種族がおり各々特殊な力を持っている。それ故に希少なタイプの妖精は人に狙われる事も少なくない。


「そうだよリリィ、あれから四年か~早いな」


 リリィと呼ばれた妖精の女の子は羽根を震わせ高く飛び上がると上空から街を見渡し始めた。

 彼等がいるこの町は八神国の一つでもある『カダルローナ王国』の南方に位置する港町であり、この国で一番最初に『理術』の研究が始まった場所でもある『理術都市 トリーシュ』だ。

 首都である『王都カダル』に次ぐ大きさの都市であり、そして国最大の港を持つ都市でもある為かなりの活気に満ちている。

 歴史もある為、王都から離れているにも関わらず昔からこの都市にある『トリーシュ学園』には上級貴族の子息、息女が通っているのも有名な話である。



「マスターッ!あの大きい建物がトリーシュ学園なんですかー!」


 町並みを見渡していたリリィが森側に建つ一際大きな建物を指差しながら眼下の少年にそう声をかける。

 街の中心部から離れた森に面した場所に建てられているのがトリーシュ学園である。

 六歳から十二歳までの初等部、十三歳から十五歳までの中等部、十六歳から十八歳までの高等部が入っている為敷地面積は驚くほど広大だ。

 通常は初等部に入ればエスカレーター式に次の学年にあがるのだが少年は訳があり中等部に上がる前にこの学園を去っていた。

 その時の事は少年にとっては思い出したくない分類の記憶であり、本来なら戻って来たくは無かったのだ。

 しかしこの数年で変わった少年の環境と―――――学園を去る時に友達と交わした些細な約束が少年を再びこの街へと舞い戻らせたのである。


『またこの学園に帰ってきてね!約束だよッ!』


 今でもはっきりと思い出せる子供同士の約束。だが少年が覚えていたとしても相手が覚えているとは限らない。まぁ少年はその辺りは気にしていない様だが。

 少年は手提げ袋の口を開くと中から一通の封筒を取り出し中身を引き出した。そして取り出した紙を広げると紙にはこう書いてあった。


『ゼオルート・マグナス殿


 この書面をもってトリーシュ学園 高等部への編入を許可致します。

 つきましてはこの書類を持参の上、お早めに学園へとお越しください。

 お越しの際にはまず最初に学園長室をお尋ねください。

 では貴方がいらっしゃるのを楽しみにしています。


       トリーシュ学園 学園長 ザーク・リスリング   』


 少年、ゼオルートは書類を確認すると再び封筒へとしまい学園の方へと足を進ませる。リリィはそれを見ると急いでゼオルートの元へと舞い降り彼の右肩へと腰掛けた。


「マスター!ワタシ学園生活すっごい楽しみです!」


「いやいや学園に通うの僕だからね?……一緒にいるんだから同じか」


 耳元ではしゃぐリリィに話をあわせながらゼオルートはトリーシュの街を進んで行く。

 

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