表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/64

風に吹かれて 第十七話 『ハコブネ7/7』


 ここは、深夜の墓地である。


 ヒトダマのあかりを頼りに、一人の男が墓地に現れた。男は、陰陽師おんみょうじらしき衣装を身にまとい、肩には、スコップをかついでいた。


 墓地の外れに、石を積んで、墓標とした粗末な墓があった。男は、この墓にやってきた。


 男は、墓として積み上げられた石を、一個、また一個と運んでいき、取り除き、石積みの墓石を完全に取り除くと、今度は墓を掘り起こし始めた。土を掘り起こしていくと、それほど深くない場所に、小さな棺桶かんおけが姿を現した。その棺おけは、それほど傷んではおらず、棺おけの主が、納められてからそれほどのら時がたっていないことが見て取れた。


 男は、棺おけを墓穴から引きずり出し、棺おけのふたをやさしくノックし始めた。


「タロウ、タロウ、そろそろ起きたらどうだ。お前が頼んだとおり、『ハコブネ』が、消えたからこうやって、起こしにかかっているんだ。タロウ、そうやっていつまでも休んでないで、サッサと起きてこい!」


 すると、不思議なことに、棺おけの中から、何やら、ゴソゴソという物音が聞こえてきた。ゴソゴソという音は、大きくなり、やがて、ガタガタという音に変わった。小さな棺おけの中で、タロウが、激しく動き、くぎで打ち付けられた棺おけのフタを打ち破り、外へ、出ようとしていたのだ。


――ワンワン! ワンワン!


 タロウは、棺おけから、外へ飛び出してくると、再び、よみがえった喜びを表しているのか、あるいは、御主人の丸田肇に対して、次の行動にでることを要求しているのか、飛び跳ねながら、激しくえだしたのである。



 丸田肇は、袋に詰め込んだ硬貨をタロウの方に突き出した。


「タロウ、随分待たせたな。これから、本当の旅の始まりだ。この金を見ろ! キッチンカーを売り払い、それと、貯金箱を壊して手に入れた金だ。予定より、随分少ない額しか貯金できなかったが、足りない分は、このデブデブで、大きな腹に変わってしまった。バチが当たったのかな? 俺も、店のラーメンを食ってばかりいたことを反省しているよ」


――ワンワン! ワンワン!


「どこへ行くか、聞いているんだな。俺は『ハコブネ』が現れたとき、タロウが棺おけに入って休みたいなんて言い出すものだから、人生に希望をなくしてしまったんだ。だから、修行は、打っちゃつて、こんなラーメン屋を始めたりもしたんだが、今度、ちょっとしたきっかけがあって、人生に光が見えてきた。俺は、その光に向かって、旅を始めることに氏ようと思う」


――ワンワン! ワンワン!


 タロウは、丸田肇の言葉に反応して激しく吠えたてた。


「よし、タロウ、お前の考えているとおりだ。しかし、旅を止めて何十年というときが過ぎてしまった。そう、すっかり年を取って、思うとおりには行かなくなったんだ。だから、はじめは、旅になれるためゆっくりと進んでいくことにしようじゃないか。どうだい、俺の考えは?」


――ワンワン! ワンワン!


 タロウは、丸田肇に答えるように激しく吠え続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ