風に吹かれて 第十二話 『ハコブネ2/7』
野々村一刀は、隠れ家のテーブルをボンと力任せに叩いた。
「全ては、ピノキオというロボットが、仕組んでいたことだ」
「私のことは、どうなるの、私に降りてきた予言も、ピノキオが仕組んだことなの。私は、私の予言に従って、あなたたちの仲間に加わったのよ!」
川上麗は、抗議した、そして、話題を変えようとした。川上麗は、ピノキオが、野々村一刀の暴言に耐えきらないと感じた。
「そんな細かいことまで構ってられないよ!」
野々村一刀は、川上麗の抗議を、心遣いを一笑に付した。というか、野々村一刀は、完全に、頭に来ていたのだ。
ピノキオは、何も聞こえてないかのように、無表情であった。
ピノキオは、このところ全く元気がない。死ぬ心配のないロボットとはいえ、これくらい落ち込んでいると、周りは、さすがに心配になる。しかし、野々村一刀には、川上麗のように、ピノキオに対して心配りできるような余裕はなかった。野々村一刀のストレスは、爆発寸前であった。
「あんまり、あくどいことするから、天罰が来ちゃったぜ。あんた、つまり、ピノキオっていうやつが、全てを仕組んでいたんだよな!」
野々村一刀の口からは、止めようもなく、愚痴が出てきた。
「あのとき、ピノキオやつ、何か汚い手を使って、俺たちと丸田肇を集めたんだな。そして、ゼーリック・ネズミ様とかいうところに、そして、ピノキオやつは、ゼーリック・ネズミ様の鼻ちょうちんを狙いすまして、間違えやがった。ゼーリックに食われそうになった。そして、そのときゼーリックのはなちょうちんが新たに膨らみはじめ、危機一髪で、ピノキオはそのはなちょうちんを吹き矢で破裂させることに成功した。そして、ピノキオのふるさととかいう不思議な町に、俺たちは飛ばされてしまったわけだ」
「俺たちは、ピノキオのふるさとという町で、俺たちは修業して、一人前の戦士になることができた。これは、感謝しよう。しかし、これはあまりに良く出来すぎた偶然だろう。そう思わないか?」
「案の定、突然、ピノキオのふるさとのあの町のある世界が滅びるとか、いう大騒ぎが起こった」
「ピノキオのふるさとの町の連中は、『世界』の四悪、つまり四天王を倒してくれと頼んできた。つまり、女王、ゼーリック・ネズミ様、兵器商人、ドクターMだ。俺たちは、世話になったお礼に、できることなら、彼らの力になってやりたかった」
「『しかし、そんなことで、この世界が救えるのかよ』という気持ちも強かったので、町の町長に、疑問をぶつけてみた。『あの四人を暗殺するのと、この世界を救うのとは、何のつながりもないように思えるというのは、理解できる。そこに、納得できない論理の飛躍があるのも確かである。しかし、運命なんていうのは、不如意なものであって、全く関係のない要素が、実は、真の原因だったことが、後になって、分かるなんてことは、歴史を見ればそこらじゅうに転がっているものなのである。ということで、うちの町の予言者の予言を真剣に考えてもらいたい。それは、君たちも、陰陽師という予言者の一人ならば、十分、理解してもらえると考えていた……』ということで、俺たちはうまい具合に説得され、この世界に暗殺者として、舞い戻ってきたわけだ」
「我々は、女王の暗殺に成功し、ゼーリック・ネズミ様も、もう一歩のところまで追い詰めた。まさに、ゼーリック・ネズミ様をあの世に送り込もうとしたときだ、あの『ハコブネ』が、『世界』に出現しやがった。それどころか、地上に墜落し、『世界』に大災害をもたらしたのだ」
「『ハコブネ』が、出現したというのは、俺たちにとっても、ピノキオのやつにとっても最悪の知らせであった。『ハコブネ』の出現は、ピノキオの生まれ育った町、俺たちの世話になった町があった世界が滅んで滅んでしまったことを意味していたからだ」
「ピノキオのやつは、完全に骨抜き状態になっちまった。俺たちは、『世界』から暗殺者として、追われる立場だというのに、……俺たちは、今こそ、コイツの力を必要としているのに、何という体たらくだ」
「ついさっきも、元気出せよと、肩を叩いてみたが、コイツからはスクラップ並みの空っぽの音しか帰ってこなかったぜ。
野々村一刀は、また、机をボンと叩いた。
川上麗は、『世界』の誰かが、野々村一刀の大声や、机をボン、ボン叩く音を敵が聞きつけてやってくるのではないかと心配になった。