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風に吹かれて 第七話 『天変地異2/5』


 我が輩は、ニャン太と申す者である。そして、我が輩の御主人様は作家Nと名乗る男である。


 親は、ない。作家Nは、「寂しいときがあったら私のことを親と思ってくれ」というが、そんな気持ちになっことはなかった、今もない。多分、今後もないだろう。しかし、ホンモノの親がだれだかわかっていれば、他人に自分ことを説明することが幾らか楽になるかもしれない。そこのところが残念である。


 さて、最初に我が輩が、自我というか、使命に目覚めた次第について、少しばかりお話ししたいと思う。それが、我が輩を知るための一番の近道ではないかと思う。


 それは、我が輩の主人の作家Nが、酔っ払っては、我が輩、ニャン太につきまとい、家の中から、庭から追いかけ回し、我が輩の様々な行動、習癖などを観察し、妄想を逞しゆうして、『ニャン太、旅日記』なる連載小説を執筆中の頃であった。


 我が輩は、『ラクリモーサ』なる題名の音楽からあるインスピレーションを得たのだ。俺は、作家Nの頭の中にだけのうそっぱちの旅ではなく、本物の旅にでることを決心した。『ラクリモーサ』は、モーツァルトなどの『レクイエム』で用いられる歌詞であり、我が輩の聴いたものは曲調にもモーツァルトのレクイエムを思わせるものがあった。、あの頃、町では朝から晩まであの曲ばかりが流されていた。そして、我が輩はその音楽の中に、暗号化され我が輩に届けるためだけに用意されたあるメッセージが含まれていることを感じ取ったのだ。


 ところが、あの『ラクリモーサ』という音楽を使って我が輩に送られてきたメッセージの真意は、バカで、飼い慣らされたネコであった我が輩には、訳の分らないものだった。我が輩は、それを理解しようとしてもできなかったので絶望した。我が輩は、もがき苦しんで一つの結論に到達した。


――旅にでよう、もっと、見聞を広めよう。でないと、あのメッセージの真意は、絶対に把握できないぞ。


 このようにして、我が輩は、作家Nの家を出て、旅を開始することになったのである。


 我が輩は、旅のいく先々で、賢人と呼ばれるものたちに面会を求めて、我が輩か、受けたメッセージについて意見を求めた。そのメッセージとは、次のようなものであった。


『ニャン太よ、この世界にはびこるようになった不正をただしてくれ』


 メッセージが、余りに抽象的すぎ、余りにぼんやりしたものであったために、どの賢人も我が輩に良い答えを与えてくれることはできなかった。


 しかし、それでも、我が輩はあきらめずに旅を続けたのだ。そして、我が輩は『この世にはびこる不正』という言葉が何を意味するのかついに突き止めたのだ。


『この世にはびこる不正』とは、最近、世界によく見られるようになった。予言、妖術、奇跡の類のことであったのだ!


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