夕闇
私は何故か、女性の視線から目が離せなくなっている。
絵は高価そうだが、何と感想を言って良いのか分からない絵だ。
女性は立ち上がるとビロードのカーテンを開け、日光をその部屋に入れようするようだ。
雨が降り出している。
女性は振り向くと、
「あなた、この絵が欲しい?…だめよ。あなたにはコレをプレゼント」
猫型のペンダントだ。
私は黙ってそれを受け取る。
「…ありがとう…」
俺はその様子をジッと聞いていたが、雨が止んだようなのでもう帰ろうとする。
彼女は盗人だから、これを見てどう思うだろう。
母親はこの事を知って居るのだろうか。
…まぁいい。女性の正体は分からないが、裏口に置いて置けばビックリしてくれるだろう。
私は何だか朦朧とした気持ちで店を出る。彼女の正体は…分からなかったが、帰り道、一匹の子犬を見つける。
抱きかかえ、話しかける。
「あなた、どこの犬?」
「それ俺の犬だぜ」
「あなた…たしかクラスメートの…」
「知らねえよ。お前、盗人だろう?そのペンダントも盗んだ物なのか?」
「…違う」
女性は一人、壁の絵を見つめ。投げキッスをする。
「あなたも大きくなったものよね。お母さん」