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序章
「千鶴」
あの人が私を呼ぶ。
耳が聞こえなければいいのに。
「先生、結婚するつもりなんだ」
優しく、少し照れくさそうに微笑んでいる。
目も見えなければいいのに。
「彼女と」
幸福の声も、幸せそうな2人の顔。
私には聞こえない。
届かない…。
―2ヶ月と一週間後―
「田村ァ」
呼び声に振り向く。
途端に日光が顔に当たった。
なんだ奴か、同級生の男子が沢山、寄り集まって何しているのやら、私は新学期だというのに不機嫌な心持ちだ。
私、モテないのよねぇ。
「先生、一つだけ質問があります」