第二章・後 日常?
光が脳内を駆け抜け、重力が頭上と足元を上下し、音が全身を刺激する。
不思議な刺激が唐突に終わりを告げたところで、感覚に現実が戻ってくる。
視界にあるのは、事務室。デスクに置かれた書類と実験器具。何人かの白衣姿がゆったりと動き、温かいコーヒーの香りが鼻腔を抜ける。
「あ、室長。おはようございます」
「おはよ。俺にもコーヒー頂戴〜」
挨拶してきた女性は微笑を浮かべ、給湯室に入っていく。
それを見た魔法使いは、自分のデスク――室長の机に向かい、山積みになった書類を目撃する。
「…ねえ、これなんとかなんないの? 俺、研究一本で行きたいんだけど」
「だったら事務員でも雇ってください。あんたが、儲けた金は全部給料と研究費に回してんのが元凶なんです」
言った愚痴に返答したのは、別のデスクで作業していた男の白衣姿。
だよなー、とため息をついて書類を捲る。少しでも片付けなければ。
ここは、ローマにある王立魔法学院。その、魔法使いが室長を務める研究室だ。
魔法学院では、所属する教授や研究員に部門ごとに研究室が宛がわれ、日夜技術の発展を目指して活動している。主な研究科目は経済学、農業中心の生物学、そして魔法学。
先ほど、魔法使いが屋敷からこの部屋に来た「テレポート」も、魔法学院で大成された術であり、いわばほぼ独占技術だ。
――それにしても、
煩雑な会計の計算をしながら魔法使いは思う。
――あの子のあの顔、すごい可愛かったよな〜。
テレポート前を思い出して、顔がにやけた。
『台所に、ブランチ用の――お持ちでしたよね?』
――もう、モノローグをつけるなら「褒めて褒めて!」ってぐらいの顔で、抱きついて頭も体もワシャワシャ撫で回したいのをどれだけ堪えたか。
髪をくしゃくしゃにするだけで踏み留まったのは努力の結果だろう。
――一昨日の夜も、耳気持ち良かったし、ちょうどな大きさの抱き枕だったし。
そこまでやるなら最後までヤッちまえよ、と誰かが言っている気がするが。
『セックスには愛がないとね』
――小さい女の子を無理矢理襲うのは心が痛むしね!
世間一般ではそれを意気地無しとか言う。
――…別に、元々世話係として買ったんだし、書庫の整理とかやってもらうんだしー。
今している、引っ越しの片付けが終われば、書庫の整理と帳簿付けの仕事をしてもらう。
――読み書きは注文通りだけど、計算も出来たのは幸いだね。
事務職の資質は十二分にあるだろう。
――それにしても、
書き終わった何枚目かの書類に判を押して一言。
「多すぎない? コレ」
「だったら手を動かしてください」
冷たい、と少し落胆して、やはり書類は見たくないと机に突っ伏す。
「どこかに、事務職の能力が十分にあるやついないかなー」
言って、
「ん?」
気付いて、
「…」
笑った。
HEYジョン!
このパート、蚊ほども進んでないばかりか状況説明しかしてないんだぜ!ありえないだろ!
所謂蛇足な設定補足
魔法使いの研究分野
彼が研究しているのは、魔法の波長や周波数を調節する技術です。魔法は音や光と言った波の一種と考えられており、簡単に言うと物理の友達です。
で、魔法使いはそれのコントロールを研究しており、心とか思念に応用したのが一章の翻訳ネックレス。音に応用したのが、snow whiteで出てきた魔電信機。そして、魔力そのものを調節するために、電気で言うバッテリーのようなものも開発しています。
魔法は工業や商業にも広く使われているので、需要のあるバッテリーを開発した魔法使いにはかなりの特許料が入っているわけです。
2013/7/6
バッテリーじゃなくてコンバーターでした
すいません(´・ω・`)