第ニ話:日常とシリアス
「おーい一輝。昼休みだぞー!」
「…………」
「一輝くーん? おーい!」
「……起きてるよ。はぁ、何が悲しくて男なんかに怒されなきゃいけないんだよ……」
「なっ! せっかくいつも起こしてやってるのに、なんだその態度は!?」
一輝の言葉に頬を膨らませ、大げさに怒ってみせる友人A。
「んぐっ……何か今、どこかで俺を小馬鹿にしたヤツがいたような……」
「んなの、このクラス、いやこの世界中誰もが思っている事なんだから今更だろ」
「面識ない人にまで馬鹿にされてるの!? つかなんで!?」
「風の噂が流れてるんだろ」
「なんの噂が流れているんだーー!!」
脱兎の如く教室から飛び出し、泣きながら駆けていく友人の背を見守りながら一輝は苦笑する。
「うん、今日もあいつは絶好調だな」
「もう! またそうやって和樹君をからかって」
一輝達のやり取りを見ていた一人の女子生徒が窘めながら近づいてくる。
彼女の名前は三上 真由美。一輝とは幼馴染みという関係を持っている。
ちなみに――
「なんだよ。早く誠也の所にでも行ってやれよ……あいつの彼女なんだからさ」
先程、教室から跳び出した新井 和樹を含め、いつも一緒に連んでいるもう一人の友人。
二個離れたクラスに在籍している狭霧 誠也がこの真由美の彼氏だ。
今からほんの半年前に誠也からの告白で交際を始めた二人だったが、その頃から一輝と真由美の関係は少しギクシャクしたものになっていた。
考えられる理由としては、長年一緒だった幼馴染みが、自分といつも一緒にいた友達と付き合ったから、というのが妥当なのだろう。
しかし、それが関係を拗らせた理由ではない。
というのも、本当は一輝もあまり理解できているわけではなかったのだ。
ただ、その半年前の告白された晩の事。
真由美から相談された一輝は、自分でも分からないほど気が滅入っていた。
そしてつい、「真由美の好きにしたらいいじゃんか」などと答え、それに真由美が大激怒。
次の日には真由美と誠也の関係は友達から恋人へと変わっていたのだった。
その日を境に、一輝は真由美から距離を置くようにしていて、真由美自身も気まずそうに過ごしていた。
一輝としては、真由美が誰かと付き合うなんて考えた事もなかったし、彼もあの一言であんなにも怒られるとは予想だにしなかったのだろう。
これがこの約半年間での話なのだが、どうしてこうなったのかは訳が分からない。
「……い、今は誠也君の事は関係ないでしょ……!」
真由美が一輝の言葉に即座に反応する。
「それに最近まではあまり俺に話しかけてこなかったのにさ」
「そ、それは……その、だって……」
あの日の事を気にしているのだろうか。
口に出そうとしては何度も首を振り、言葉を続けようとしない。
そんな真由美の様子に、一輝は身に覚えのないほどのイライラが募っていくのを感じる。
「あーはいはい。分かったよ。今度は和樹に乗り換える気なのか? そうやって俺の友達をみんな――」
「―――っ!!!」
一輝が真由美から視線を外しながら、情調的に話し出した直後、彼の左頬を乾いた音が鳴った。
「~~っつぅ……!」
そしてジンジンとした衝撃が遅れてやってくる。
そこで一輝は初めて頬を叩かれたのだと気が付いた。
「なっ、何するんだ……よ……」
いきなり叩かれた怒りにまかせ、真由美を怒鳴ろうと立ち上がるが、すぐにその勢いを無くす。
真由美は泣いていたのだ。
ぽろぽろと大粒の涙を流す瞳は、一輝の事をじぃっと捕らえている。
しかし、その瞳には力がない。
「わ、私が……あの時どういう気持ちで……貴方に……一輝に相談したと思ってるの……?」
泣いているせいで震える喉から絞り出すようにして出した声は、聞き取るのがやっとなぐらい小さかったが、一輝には何故かその言葉が心にグサリと刺さり、反響するように聞こえる。
次第には片や叩かれ、呆然と立ち尽くし、もう片方は涙を流しているという奇異な光景に、教室内が騒めきに包まれていく。
その様子を察した真由美は、未だに流れる涙を隠すように押さえながら教室から出て行く。
後に残ったのは、教室の騒めきと生徒達の視線の的になっている一輝のみとなったのだった。
感謝コーナー!
龍賀様、夜神様、始音 レイト様感想ありがとうございました!
うん、今回はいきなりの感謝コーナーから始めてみました。
特に意味はない。
さて、今回は少しだけ話を進めようかなぁとか思っていましたが……まぁこんなものでしょう。
え? 進んでない? んなのわかっとるわーい!!!!
はいごめんなさいです。
んー今話はどうだったかなぁ。
なんか意見が聞きたいです。
というわけで、今話に関する意見大募集しています。
ので、皆様、ぜひ感想の方をよろしくお願いします。
ではまた次回~!




