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夜襲

― ギルド職員寮 ―



装備品を回収する為に職員寮のドアを開けると、食堂の2人が持ち出す荷物を選んでいるのが見えた。


邪魔にならない様にそっとドアを開けると、ドアの上に取り付けてある小さなベルが鳴った。

小さいが良く響き渡る金属音に気付いた食堂の店長が作業を続けながら、「お客さん、知ってるとは思うけど昨日から休店だよ」と言った。



「いや、上の荷物を取りに来ただけだ。 あと、上に荷物を置いたままにしてもいいか?」

「なんだ、あんただったか」

「不満だったか?」

「いやいや、折角のお客さんだ。 荷物なら置いておいてもいいが、盗まれても知らないぞ」


「……そのときは、どうにかするさ」

「そうかい。 なんか食って行くか?」

「後で食べれるようなものを頼む」


「分かった」

「荷物を取ってくるから料理が出来たらその机の上にでも置いといてくれ」



部屋に戻り、クローゼットの奥に立て掛けておいたMGL140を掴み取り、弾倉を上にスイングアウトさせて、弾が装填されていないことを確認してから引き金を引いた。

シアが落ちた瞬間に『カチン』と撃鉄が作動して小気味良い金属音が鳴ったのを確認してからM433多目的榴弾を、一発ずつ弾倉に込めてから元に戻し、スプリングを巻き上げる為に左方向に弾倉を回転させ、規定の位置でセーフティーを掛け、スカウトバックに括り付けて一階の食堂に向かった。




「随分と早く来たな。 そこのテーブルの上に置いてあるやつだ。 持ってけ」

確かにテーブルの上には、薄いバケットが置いてあるが……

(多すぎないか? この量は……)

1人で食べる量としては、明らかに多い。


「さっきから外から覗き込んでいるあんたの仲間の分だよ。 食材を使える時に使っておかないと無駄になっちまうからな」

笑いながらそう言って、窓を指差した。





「そうだ、3日ぐらいであんたが戻ってくるなら、好きに使ってくれ。 むしろ戻ってきたときに腐った食材が放置されている方が迷惑だからな」

「店長、準備終わりましたよ。 早く行きましょう」

「分かった……店を閉めるぞ。 じゃあ、気を付けろよ」

そう言って食堂の2人は、ギルドへと向かって行った。


職員寮の外に出ると、サーニャが馬を引いて待っていた。

「待たせたか?」

「来たばっかりですから大丈夫ですよ」


「……10分以上も前からか?」

「え、バレていたんですか? 気付かれていないと思っていたのに」

「いや、あれで気付かない方が珍しいと思うぞ」

「そうですか?」



ギルドに向かう人の流れを避けながら関所に向かうと、街の至る所に昨夜の戦闘の痕跡が残っていた。


「酷いですね……綺麗だった街並みが、たった半日でこんな状態になるなんて……」

「そうだな……」


紛争で何度も見てきた光景がそこにはあった。





「……岡崎さんが、乗馬が出来ないなんて意外ですね」

サーニャが俺の前に座り、馬を操っている。



「元の世界では、馬では無く他の移動手段だったからな」

「へぇ~そうなんですか。 今度、基本的な魔法と一緒に教えてあげますよ」

「ああ、そうしてもらえると助かる」


そういった話をしながら馬を進めて行くと、関所が見えてきた。



― サウスホルン南部 関所 ―



関所に向かうと既にクルト達が待っていた。

「現地にいる冒険者から情報では、あいつらの野営地はここにあるらしい」

そう言って地図を表示させて場所を指差した。


サウスホルンの街からはそう遠く離れていない場所に大規模な野営地を構築しており、情報通り数日中に侵攻してくるつもりらしい。

「グスタフの連中、最近の人員不足で冒険者と農民達を徴兵したらしいぞ」

「寧ろ、忍び込み易くなるから大歓迎なんだけどね」



「そうだ、ギルドで冒険者たちにこれを配っていたんだ。 普段だったら金貨2枚もする物を無料(タダ)で配布するなんて滅多に無いよ。 ほら、あなた達の分だ」

クルトがポケットの中から出した何かを投げ渡してきた。


それを落としそうになりながらキャッチして見ると、数字5桁のダイヤルが組み込まれた銀製品だった。

(ダイヤルが回る…… もしかして、無線機のような物か? いや、まさかな……)

「これは?」確証を得る為に小声でサーニャに尋ねた。

「それはですね、遠く離れたところにいる人と話す為の魔法具です。 私も欲しいとは思っていたんですが、余りに高かったんで買えなかったんですよ」

どうやら無線機のような物という推測は正解だったようだ。


使用者同士で同じ番号にダイヤルをセットしてから、突起を押し込むと他の使用者と連絡が取れるらしい。

なお、今回無料で配布されたのは、ランクとしてはかなり下の物で、場合によっては他人に会話を盗聴されることもあるとのことだ。


「じゃダイヤルを46384に合わせて。 あとは適当に身につけておいて」

「分かりました。 試してみますね」

《聞こえる?》


「一応は聞こえるが、近いから意味が無いと思うんだが……」

「あ、それもそうですね」

サーニャが笑いながら言った。






次第に街が遠ざかって行き、緩やかな坂を登り始めた。



始めて馬に乗ったが、意外と順調に進んで行く。







― サウスホルン南部 山岳地帯 ―



そして、陽も高く登った頃に目的地に到着した。

この地点から、山を越えたところに連中のキャンプがある。


馬から降りて、頭部を撫でてやると首を垂らしながら心地よさそうに鳴いた。


「ここから先は歩きか」

「そうなりますね」


「僕達は、連中に紛れ込んで食糧とかに火を付けて使えなくすればいいんだよな?」

「ああそうだ。 準備が出来たら教えてくれ」

「分かった。 じゃあ僕達はこのまま馬で向かうよ」

「不味いと思ったら離脱するようにしてくれ。 あとサーニャもクルト達と行った方がいいんじゃ無いか?」

「嫌ですよ。 岡崎さん1人で行かせると危ないじゃないですか」


サムがクルトを指で指しながら、「こいつ、弱そうに見えてもギルド主催の剣術大会で優勝者だ。 逃げる程度なら何とかなるだろ」と言った。

そして、野営地へと続く道を進んで行った。



「じゃあ俺達も行くか」

「ええ、行きましょう」


ゴツゴツした岩肌が剥き出しになっている道無き道を歩き始めた。


一歩進む度に、足元から風化した岩が割れる感触が伝わってくるので、踏み外さないように注意しながらコンパスを頼りに2時間程歩き続けていると、視界が一気に開けた。



遠くから見えないように注意しながら稜線上を移動して、野営地が見渡せる目的の地点へと到達した。

バックパックを地面に置いて、バックパックに取り付けてあった双眼鏡で野営地を見ると至る所で煙が昇っており、夕食の用意をしているようだ。



《聞こえているか?》クルトからだと思ったが、サムからのようだ。

《聞こえている。 どうした?》

《もう少しで目的地だ。 あ~今、連中の野営地に入った。》

《了解。 位置を確認するから手を挙げてくれ。》

双眼鏡でサムらしき人物を捉えてはいるが、念の為に確認することにした。


《は? 何を言っているんだ? あんたが居る位置からここが見える筈無いだろ。 ……右手を挙げたぞ。》

双眼鏡の中央で、サムが周りを見渡しながら手を挙げるのが見えた。


《確認した。 そのまま作戦を続行してくれ。》

《……分かった。 クリス達にも伝えておくぞ。》

《頼んだ。》



既に空は茜に染まっていて、1時間も経たないうちに陽は沈むだろう。


「やっと目的地に着きましたね…… 疲れました……」

「お疲れ様。 やっぱりクルト達と一緒に行った方が良かったんじゃ無いのか?」


「こんなに歩くとは思っていませんでしたから…… やっぱりそっちの方が良かったかなぁ」サーニャが苦笑しながら言った。

「まぁ暫くの間何もすることが無いから休んでいていいよ」



再び、双眼鏡を覗き込んで目標(指揮官)を探し始めていると、人の流れが急に変化した。



急激な変化に困惑しながら情報を集めていると、野営地に夕食の配給が始まったことを知らせる旗が風で揺られているのが見えた。


どうやら、旗が登ったことにより兵士や農民達が夕食を配っているテントに並び始めたようだ。

冒険者や傭兵は殆ど行列には並んでおらず、自分達で用意した夕食を食べているらしい。



行列が出来ている炊事用のテントでは無いもう一つのテントから数名の騎士が台車で料理を運んでいるのが見えた。

実戦的とはとても思えないきらびやかな甲冑を着ていることから察するに恐らく近衛騎士だろう。


そのまま双眼鏡で騎士達を追跡すると、野営地のほぼ中央にあるテントへと入って行った。



そして俺は、標的(ターゲット)を発見した。



伏射姿勢を取りながら狙撃銃を構え、スコープを覗きこんだ。


スコープによって拡大された視界の中で標的は、最後の晩餐になるとは思わないで悠長に夕食を食べている。


《こっちの準備はもう大丈夫だよ。》口調からしてクルトだろう。

《兵士たちが夕食を食べ終わったら作戦を開始してくれ。》

《分かった。 じゃあ逃げる為の道でも探して待ってるよ。》

脱出ルートは全く考えていなかったらしい。

《了解した。》





農民達や兵士達が夕食を終えて殆どの者がテントへと戻って行き、まだ外に残っている兵士は酔い潰れてしまったようだ。

クルト達が作戦を始めるのが見えた。


野営地にある食糧庫や装備品に火を放つのが見え、一度付いた炎は瞬く間に隣のテントへと延焼していった。


火事を知らせる鐘が野営地に響き渡り、近衛騎士に囲まれた標的がテントから飛び出してきた。


右往左往している標的の頭部に照準を合わせて引き金を引いた。

放たれた弾丸が放物線を描きながら標的の頭部を貫いた。



標的は、地面に脳漿を撒き散らしながら乾燥した大地に崩れ落ちた。

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