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作戦会議

押し付けた拳銃で3回放った弾丸が、チェーンメイルを貫き、心臓を破裂させ男の生命維持機能を奪い去った。


その場にしゃがみ込み、男が身に付けていた物を調べ始めると、革袋の中に硬貨や食糧の他に上質な洋白紙を使った書状が入っていた。


倉庫内に自分以外居ないことを確認してから上の狙撃地点に戻り、チェストリグの中のフラッシュライトを取り出し書状を見ると、蝋封されていた痕跡があった。



~~~~~~~~~~

今回、君達に依頼したい仕事は、君達が普段から襲撃しているサウスホルンにいつも以上の襲撃をして欲しい。


何故かというと、あそこが交易の中心となっているせいで、我々の収益が減ってしまっているからだ。

君達が襲撃した後に、我々の騎士団が略奪をしてから火事に見せかけて焼き尽くす手筈になっている。


……そんなことをしたら、稼ぐ手段が無くなってしまうと思っているなら安心して欲しい。

この仕事を完遂してくれたら、グスタフ領への立ち入りと君達が所属する騎士団を設立することを約束する。



グスタフ領 領主 グスタフ・アレクサンダーソン

~~~~~~~~~~



(……これは、今すぐにギルド職員に渡す必要がありそうだ)

今、盗賊達を迎撃することよりも大規模な脅威に対抗することの方が優先順位が上なので、狙撃銃を掴み取り、先程よりも爆発の頻度が多くなった街の暗闇に紛れて商業ギルドの方へと向かって走り出した。



路地を抜けて大通りに出た瞬間に、視界の隅から何かが飛翔してくるのが見え、反射的に飛んできた反対側へと身を投げ出した。


投げ出した瞬間に、目の前の木箱に何かが直撃して、着弾した部分が紅く光りながら膨らみだして爆発した。

「クソッ!!」と叫びながら、その場で身を丸くしたのとほぼ同時に背中に木片やガラスが降り注ぎ、肌が露出しているところに痛みが走った。


背負っていた狙撃銃を手で探ったが、本来あるべき位置には無く、手元から離れ先程吹き飛んだ木箱のあった場所に転がっていた。


MP7A1をレッグホルスターから抜き、セレクターをフルオートにスライドさせて右前方に転がり込みながら攻撃魔術を放ってきた男に照準を合わせトリガーを引き、手元に軽い衝撃を感じながら相手の姿勢が崩れるまで撃ち込み続けた。


ボディーアーマーすら貫通する4.6x30mm弾が容易に男の防具を貫徹して、男がその場へと崩れ落ちた。


仰向けの姿勢のまま、狙撃銃へと手を伸ばして掴み取り、各部に異常の無いことを起き上がりながら確認して、立ち上がった。



「おい、あんた大丈夫か!?」

爆発で、耳障りなノイズが響いているが、一応何と言っているのかは理解することが出来た。


槍を持ち、革製の防具を身に纏ったクリスだった。


「ああ、...何とか大丈夫だ。 耳鳴りが酷いがそれ以外は問題無い」

「そうか、であんた何をやっていたんだ!?」胸ぐらを掴んできたが無視して、マップケースからそれを取出し、クリスに見せた。


「あぁ? 何だそれは? 」

「さっきまで連中の数を減らしていたが、倒した奴がこいつを持っていてそれをギルドの職員に渡そうと思ってな」

それを読んでいくうちにクリスが慌てだした。


「っておぃ!? どういう事だよそれ!?」

「恐らくそのままの意味だ。 だから一旦ギルドへと向かっているところなんだ。 その手を離せ」

「……すまない、逃げたと思っていた」


「現在の状況は!?」

「潜伏していやがった連中を掃除していたが、門の外から連中が街に侵入して今のざまだ」


「こっからギルドへは走ってどの位で着く?」

「走ればせいぜい3分って所だな」


装備品を確認してから、ギルドに向かって走り出した。



明かりがまだ灯っている商業ギルドのドアを開けると、ロビーは避難民で埋め尽くされていた。

避難民達は皆、恐怖で怯えている目でこちらを見てきた。


今は、それを無視して人混みをかき分けて、ギルド職員のいる事務室へと向かった。


「そこの職員! こっちに来てくれ。 重要な情報がある!!」

「どうしたんですか!? 今の現状以上に大変なことって一体何があるんですか!?」


職員に例の洋白紙を見せると、最初は理解が追いついていなかったが、だんだんと理解してきたようで顔が青ざめていった。


その職員が立ち上がり、他の受付の職員に声を掛けた。

「こっちに来てくれ!!」

「どうしたのですか? ……え...」渡された洋白紙を見てその職員は気を失って倒れてしまった。


「こちらに来て下さい」職員が、奥の部屋のドアを開けて入るように促した。

部屋に入ると、初老の男性が椅子に座っていてどうやら彼がここのギルド代表らしい。

「一体どうしたと言うんだ?」

「これを見て下さい」職員が代表にあの手紙を渡した。


「ついに奴ら、ここまでやりおるか……」

苦虫を噛み潰したような表情で代表が呟いた。


「で、今後どうする気なんだ?」

その一言で、周りに集まって小声で相談していた職員達が沈黙した。


その沈黙を破ったのは、やはりギルド代表だった。


「職員諸君、我々は、長い間この土地を発展させ続けてきた。 だが、今我々のすぐ側にまで大きな脅威が迫って来ている。 我々が今、出来る選択肢は三つある」


そういってギルド代表が、近くの黒板に歩み寄り、貼り付けてあった掲示物を剥がしてチョークを使って大きな文字でこう書き始めた。


・住民達と共にこの慣れ親しんだ街から離れ、新天地で再建する。

・住民達や冒険者と協力して連中に立ち向かう。

・住民達を置き去りにして我々だけが逃げる。


これを黒板に書き、チョークを元の位置に戻した。



「この三択の内のどれを取るかは、君達次第だ。 私が強制することも無ければ、決して君達が決めたことを非難するつもりは全く無い」


職員達が騒めきだして、すぐに静かになった。

「そこの君、すまないが数を数えてくれ」黒板から一番近くにいた職員に声を掛けて、集計をさせるつもりのようだ。


「では、まず一つ目の案に賛成する者は手を挙げてくれ」

数名の職員が周りを気にしながら手を挙げた。


「次に二つ目の案に賛成する者は手を挙げてくれ」

最初は、少数だったが手を挙げた職員が居たのを見て、だんだんと手が挙がり最終的に15人程の職員が手を挙げた。


「最後に、三つ目の案に賛成する者は手を挙げてくれ」

この提案に賛成して手を挙げる職員は誰もいなかった。


「ふむ、では今から、連中に対して義勇軍を組織して抵抗をするのと、市民を安全な場所に避難させるのに別けたいと思うが、異論は無いか?」

反対する者は誰もいなかったらしく、先程までの沈黙した空気が続いていた。


約半数の職員が、約43Km離れた街に住民達を避難させてその間に、残った職員達で冒険者を中核とした義勇軍を組織して組織的な抵抗をすることになった。


「……この件は、私から伝えようと思う。 では各自の作業を始めてくれ」

そう言ってギルド代表が、ドアを開けて住民達がいるホールへと降りて行った。

ドアが開いた瞬間に、それまでざわついていた住民達が、静かになり代表が何を言うのかに耳を傾けた。


「サウスホルン在住の皆様に重大なお知らせがあります。 ……現在この街は、重大な危機に瀕しています。 今、この建物の外ではギルドから委嘱された冒険者が盗賊団を駆逐していますが、この街から見て南に57Km離れたグスタフ領が本格的な攻勢を仕掛けてきて、あと2日もすればこの街に進攻して来ます。 皆様には、職員達の誘導に従ってハルシュベルクに向かって下さい。 この後、すぐに自分の家に向かい、今後必要になる最小限の荷物を持って1時間以内にここに戻って来て下さい。 なお、義勇軍の募集は、こちらの窓口で行います」



職員達が慌ただしく動きだし、先程までは書類が山になっていた長机の上を払いのけて街の周辺まで詳細に描かれた地図をそこに敷き効果的に連中の動きを阻害することが出来る地点を選定し始めた。


事務室のドアを開けて下の受付を見ると、義勇軍を募集している受付には処理能力を大きく超える行列が伸びていて、闇に包まれていた筈の街は既に朝陽が昇りだしており、ギルド会館の重たいドアを開けて冒険者の召集を行っている場所へと向かうと既に50人近くの冒険者が集まっていた。



周りの冒険者達を見て思ったことは、人種が異なる者が集まってはいるものの、皆、それぞれが使い込まれ摩耗したロングソードや修理の箇所が何箇所もあるクロスボウなどを手にしておりそれなりに実戦の経験があるように思えた。


この非常事態にも拘らず、殆どの者が緊張感を持たないで雑談を交わしていた。


辺りを見渡していると、後ろから声を掛けられた。

「あ、岡崎さん!!」

「ん?」振り向くとサーニャが駆け寄って来るのが見えた。

「岡崎さんも招集ですか?」

「そうらしいな」

彼女は、あの時と同じくロングボウと鉄製の矢の他に、細身の剣を腰の位置に取り付けてある鞘に収めていて、ベルトのホルダーに指揮棒タクトのような細い木製の杖を挿していた。

「ところで、そんなに軽装備で大丈夫なんですか?」

「こいつか? 矢や軽い斬撃ぐらいなら防げる……と思う」

数日前までいた筈の地域では、何人もの兵士がこのIBAインターセプターボディアーマーに助けられていた。

幸いなことにあの作戦でも俺は、セラミックプレートを挿入していたので、余程のことが無い限り問題にはならないだろう。


「集団での実戦経験がある方は、ギルド3階の会議室に行って下さい。 それ以外の方は、そのままこちらで待機して下さい」



(さて、俺はどっちに行くべきなんだろうか?)

現代戦(対テロ戦争)は基本的に集団戦闘だが、こちらの世界ではどちらかと言うと、至近距離での格闘戦が主流のようなので、役にたたない可能性が高いからどちらに行くべきか悩んでいると、 サーニャが「じゃ3階に行きましょう」と言いながら迷彩服の袖を引っ張った。

急に引っ張られた為、体勢を崩しながらギルド内に入った。


3階の会議室に入ると、既に地図が至る所に敷き詰められていて敵がどのように進攻してきて、どのような対策を取るかの議論をしていた。


周りを見ていると、職員が何も無い空間に対して「何!? 約800人規模だと!?」と言った。

その一言を聞いた冒険者の内の数人が落ち着きを無くし始めた。

集団での実戦経験があるとして参加した冒険者は20人程いたが、この様子を見ていると実際の戦闘(戦争)に慣れている冒険者は殆どいないように思える。


ふと疑問に思い、サーニャに「あの職員は、誰と話しているんだ?」と聞くと、若干呆れた様子で「遠くに離れた相手と通話する魔法ですよ」と言いながら自分の杖を出して見せた。

どうやらトランシーバーのように使うことも出来るらしい。



地図を見ると、バリケードを示すと見られる記号が街の外の山岳地帯の方に集中していたのでつい「山岳地帯の方に設置しても意味が無いだろ。 街の中心部に障害を設置した方がいいと思うぞ」と呟いた。


あの忌まわしい武装勢力が良く使う手だ。


あの時も圧倒的な戦力差があったが、奴らは執拗に路地などの狭い道を使って待ち伏せやIEDを使った攻撃などをしてきた。

今回の場合も、立場が逆と言うことを除けば同じことが言える。


呟きが聞こえたらしい細身の男が、「すると、街の中にバリケードを構築した方が良いと? 何故そう言えるんですか?」と聞いてきた。

その質問に対して、「連中はこちらの戦力の数倍以上の戦力を持っているのに、正面から防衛線をしても全く意味を持たない。 それよりも、連中が食事をしたり就寝しているところを狙って確実に数を減らすべきだ」と答えた。


「確かにそうですが、あなたにはそれを実行出来るんですか?」

「一人では厳しいが連携していけば敵戦力を大きく削げる」


「うーん、分かりました。 他に有効な手段がある訳でも無いから協力しますよ」


「……そういえば、ギルドの部隊から離脱して行動しても大丈夫なのか?」

「それなら大丈夫。 うちのパーティーは、ギルドから自由に行動していいっていうお墨付きを貰っているから一緒に行動すれば問題無いよ」眼鏡を掛けた女性が言った。

サーニャが『誰?』と言うかのように首を傾げながら

「えーと、お二人は同じパーティーなんですか?」と聞いた。


その質問に対し、細身の男が「ああ、そうだよ。 あそこにいる彼も同じパーティーのメンバーだよ」と答えた。


指を指した方向を見ると、ドア近くの椅子で居眠りをしている男が見えた。

「……あれか?」

確認の為に尋ねると、眼鏡の女性が居眠りをしている男に近づいていき手にしている杖で頭部を勢い良く叩いた。


鈍い音がなって数瞬後に「もう少し優しく起こしてくれと何度言ったら分かるんだ……」と叩かれた男が眼鏡の女性を非難した。

「ごめんごめん、ついイラッときて思いっきり叩きたくなったから」


細身の男が思い出したように自分の手を叩いた。

「自己紹介をしていませんでしたね。 『辺境の冒険者』リーダーのクルト・シュタイナーです」

「ライラ・パーシバルです。よろしくね」

「サム・ニコラスだ。 よろしく」


「岡崎だ。 彼女は...」

「サーニャ・コリンズです。 よろしくお願いします」


「自己紹介も終わったことだしさっさと出発しよう」とクルトが言ったが、ある疑問が浮かんだ。

「作戦プランはあるのか?」


「作戦プラン? そんなものは無いよ」クルトがおどけた様子で言うと、「少しは考えろ」とライラがクルトの頭を叩いた。

「俺の考えた作戦プランは、この後すぐに出発して、連中の野営地を見渡せる地点を探し、陽動と指揮官を暗殺するチームに分けて陽動チームが連中の物資を使用不可能にして、混乱している内に指揮官達を暗殺する。 他に何かプランはあるか?」

「特に無いな」


「じゃあ30分後に南の関所に集合だ」

そう言って狙撃銃を背負い直し、職員寮へと向かった。

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