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異世界

激しい眩暈と耳鳴りによって目が覚めた。


辺りを見渡すと、そこはただの森だった。


……一体どういう事だ?

先程まで俺は、乾燥した山岳地帯で任務に就いていて、樹木は殆ど無かった筈だ。


……思い出した。

あの時俺は仲間たちと共に、輸送ヘリに搭乗して作戦地域から離脱しようとしていたが、人民解放軍の戦闘機に撃墜されたということを。


現在の状況を整理しようとしたが、情報が殆んど無いので、一旦考えることをやめて装備をまとめて移動することにした。


暗殺任務で使用していた銃器や装備類はあったが、乗っていた筈の輸送ヘリの残骸や仲間を見つけることは出来なかった。


司令部との連絡を試みてみることにして、軍用携帯無線機の電源を入れた。

《こちらチャーリー、搭乗していたヘリが人民解放軍の戦闘機によって撃墜された。 生存者は、捜索したが、俺以外は何処にも見当たらない。 緊急回収を要請する。》

送信用のボタンを離した。

……

…………

………………

無線機からは何の音も聞こえてこない。

別のチャンネルに切り替えて通信を試みたが、結果は同じだった。


一体どういう事なんだ?

無線機と言う物は、必ず何かしらの電波を拾ってノイズとして雑音を発生させる筈だ。

なのにも関わらず、無線機からは微かなノイズすら聞こえてはこない。

無線機が落下の衝撃で壊れたと考えて、別の無線機でも試みたが、やはり結果は同じだった。


そもそも軍用規格品の物が人が落下して無事なのに、衝撃で壊れるということは滅多に無い。


司令部との無線交信を諦めて、GPSマップを起動したが、『No Signal』と表示されて地図も使うことが出来ないことが分かった。

電子機器全てが故障したという訳でもなく、レーザーレンジファインダーや、腕時計などは何も問題無く使うことが出来た。


途方に暮れつつ、サバイバルコンパスをチェストリグから取出して、地雷などのトラップに注意を払いつつ前方作戦基地がある筈の東へと向かって歩き出した。


2~3時間歩き続けて太陽が真上に来た頃に、森林地帯を抜けて平原へと出た。

丘が見えたのでそこに登り、この地域の状況を確認することにした。


狙撃に警戒しつつ丘の上へと登った。


ふと、今まで森林地帯では、樹木と足元しか見ていなかったので空を見上げると、とても澄んだ青空が見えた。

あの戦場も、高地で乾燥していたから景色はよかったが、ここまで綺麗な青空を俺はまだ見たことが無かった。


カメラでその絶景を写真に撮って荷物の中に戻した時にそれを見た。


下はただの平原だと思っていたが、辺り一面が死体で埋め尽くされていた。


SIG716を構えてスコープの倍率を調整しながらそれの様子を確認すると、どういう訳か中世ヨーロッパの物語で登場するような甲冑を着て、地面には矢が刺さり剣が至る所に落ちていた。


(一体なんなんだこれは? 腐臭がしないからまだ新しい戦場のようだが……)

取り敢えず何か情報があるかもしれないので、バンダナをマスク代わりにして丘を下りた。

レッグホルスターからp226を抜いて警戒しながら死体を漁り始めた。


一番最初に漁った遺体からは、雑に描かれた地図と数枚の硬貨の様なものが出て来た。

「何だこれは?」

思わずそう呟きつつそれを眺めてみると、他の所持品と比較して精密な刻印がされていることに気付いた。


他の死体からも材質は違うが同じような刻印がされた物が出て来たので標準かというところまでは分からないが、通貨ということだけは分かった。


派手な赤いマントを羽織り甲冑を着用していて、目に深々と矢が刺さっていた死体からは、金と見られる金属で作られた硬貨が大量に入った袋が入っていた。

恐らく指揮官の遺体だろう。


取り敢えず無作為に漁っていたが、非効率なので指揮官や階級が高いと見られる服装をした死体を漁ることにした。

3時間以上戦場跡から使えそうな物を探したが、そこまで価値のありそうな物を見つけることは出来なかった。


(……ん? 紫色?まだ見てない服を着た死体がある)

早速紫色のローブを着た死体の所に移動して、その男を見たときに、驚いた。

何故なら、その男が手に認識票ドッグタグのような物を握りしめていたからだ。

何かの手掛かりになりそうなので、取り敢えず回収しておくことにした。


その男の所持品を漁ってみると、布で丁寧に包まれている彫金の施された木箱が出て来た。

何かを収納する以外の使用方法が思いつかないが、価値のある物のようなので一緒に回収した。


腕時計を見ると針が14:50と指していて、太陽もまだ大分上にあったので移動を続けることにした。





2時間歩き続けてようやく戦場跡から離れることが出来たので、今日はここに野宿することにした。



早い内に夕食を取ってしまい、後は火を消してしまうことにして、折り畳み式のシャベルで50cm程の穴を掘り、そこに拾った枝をくべてメタルマッチで火を付けた。

戦闘糧食の缶詰をバックパックの中から取り出しナイフで蓋に数か所穴を開けてそのまま火にくべ待つこと27分で本日の夕食となり、メニューは鳥飯となった。


装備品を一カ所にまとめて、ポンチョライナーを取り出してポンチョと紐を結んで就寝する用意を整えた。


今日一日で得た情報を整理すると、

・場所 異世界

・時代 中世ヨーロッパ

という曖昧な結論になった。


一体、今後どうすればいいんだ……と考えている内に連日の疲労もあったせいか焚き火を消すことなく眠りについてしまった。







Side ?

時間は約2時間遡りその女性は、ロングボウを構え獲物を狙っていた。

「……お願いだからそのまま動かないでちょうだい、昨日から何も食べて無いから……」


前方約40m先で草を食べている鹿に狙いを定めて弦を引き絞った。

一呼吸置いてから矢を押さえていた指を離した。

しかし、その女性の願いが叶うことは無く、矢が鹿に命中する直前に狼が鹿の喉元に噛み付いたことによって矢は何も無い地面に深々と刺さった。

代わりの矢をつがえようとしたが、矢が既に無くなってしまったことに気付いた。

「あ、もう矢が無い…… どうしよう……」


「はぁ、しょうがないからもう真っ直ぐサウスホルンに向かおう……お腹すいたぁ」

若干泣きたい気分だったが、そんなことをするよりも直接向かった方がいいということに気付いた為再び歩き出した。


太陽も沈んできてだんだんと周りも暗くなってきたので、野宿できそうな場所を探していると、遠くに焚き火の明かりを見つけた。

今日はあそこで野宿をすると決めて歩き続けた。


「着いたけど……誰も居ない?」

確かに焚き火があって荷物も置いてあるが付近に人影は無かった。


「誰かいませんか?」

何も返事が返ってこなかった。


取り敢えずもう眠いので寝ることにした。

(明日の朝に見せて貰おう)


翌朝になったが周りには誰も所有者と見られる人物はいなかった。

所有者は野生動物にやられてしまったんだろうと思い、置いてある荷物の中身を見始めた。


(これは何?)

何やら筒2本が横に繋がっていてガラスがはめ込まれている物を見つけた。

覗いてみると、様々な物がすぐ手を伸ばせば届きそうな位置に見えた。

「凄い!! 遠見の魔法具!?」


(じゃあこっちは何?)

と思い、細長い棒の先端に筒が付いた物に手を伸ばそうとしたときに後ろから何かを押し付けられる感覚と共に「動くな」と言われた。


Side out






「凄い!! 遠見の魔法具!?」

この一言で俺は、目が覚めた。

p226を取出し、ふと横を見ると焚き火が付いたままになっていた。

(しまった、誰かに気付かれたか!?)

炎が風で揺らぎ、向こう側に置いた荷物のところで双眼鏡を弄っている女性の姿が見えた。


どうやら初めてみる技術らしく興味深そうにしているように見えた。

そのままだったら、明日まで放っておこうかとも考えたが、狙撃銃に手を伸ばすのが見えたので後ろからp226を押し付けて「動くな」と言った。


「それから手を離して両手を後ろにしろ」

後ろに両手を後ろにきてから、手首をケーブルタイで拘束した。


正面にまわって、「なんで人の荷物を漁ってたんだ?」と聞くと、

「ご、ごめんなさい!! 声を掛けたんですが、返事が無かったので、野生動物とかにやられてしまったと思ったので……」

恐らく、事実だろう。

涙目になっていて若干かわいそうだが、かわいいと思ってしまった。


「で、双眼鏡とかを弄ってたと」

「本当にごめんなさい!!」と言った直後に『グゥゥ』と言う音が聞こえた。

「もしかして、腹減ってるのか?」


その質問に対して、彼女は、顔を俯かせながら恥ずかしそうに「はい」と答えた。


後ろにまわって、ナイフでケーブルタイを切ろうとしたところ、ナイフの刃のついていない部分が彼女の手に触れて、体を震わせながら「ヒッ」と言った。

「すまない、危害は加える気は全くないからちょっとだけ動かないでくれ」と言うとおとなしくなった。


ナイフの先端をケーブルタイに沿わせて切断した。


「疑ってすまなかった。 お詫びにこれでも食べてくれ」缶詰を火に掛けながら言った。

「うぅ、わかりました」


「俺のことは、オカザキとでも呼んでくれ。 君の名前は?」

「……サーニャ・コリンズです。 サーニャと呼んで下さい」

「よろしくな、サーニャ。 双眼鏡は弄っても構わないが、「いいんですか!?」但し、これは絶対に触らないように」

「はい」


缶詰から湯気が出てきたのでそろそろ頃合いだろう。

「熱いから注意して」

「分かりました」


恐る恐る鳥飯の一口目を口に入れた。

「……美味しい!!」

余程空腹だったのかそれだけ言ってその後は、無言で完食した。


「じゃあ、詳しい話を聞かせてくれ」

「はい、わかりました」


こうして異世界2日目が始まった。

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