後編 隣の部屋の優希斗さん
「進藤さん、何乗りたい?」
「優希斗さんが乗りたいのでいいですよ」
「でも、今日は進藤さんの誕生日だし」
「私何でもいいです」
・・・。
「これじゃあ埒が明かないですね。じゃあ、一番最初はアレしかないでしょ」
「え。」
最初に選んだのはやっぱり、定番の絶叫系。
「ん~、やっぱり一番はジェットコースターですよね!」
「そうだな」
「?優希斗さん顔色悪い」
「あ、や、そんなことないよ」
「そうですか?キツかったら言ってくださいね」
優希斗さんは何かを無理してるみたいだった。
普段外に出ずに絵ばっかり描いてるから、久々の日光は辛いのかな、なんて思ってた。
なんであのとき、私は何もしなかったんだろう。
何かしてても、あの未来は変わってなかったかもしれないけれど、
もしかしたら、もう少しお話できたかもしれないのに。
もう少し、優希斗さんは絵を描いていられたかもしれないのに。
もう少し、優希斗さんのあの優しくて柔らかい希望に溢れた絵を見られたかもしれないのに。
お昼、
私たちは、一緒にホットドッグを食べていた。
「そーいや、優希斗さん」
「ん」
「最近キャンバスだけじゃなくて、スケッチブックにも何か描いてますよね」
「え、あーうん」
「何描いてるんですか?」
「……秘密」
「えー」
「完成したら見せてあげるよ」
優希斗さんはホットドッグを頬張りながら言った。
「ふーん……じゃあ、楽しみにしてます」
「ん」
優希斗さんは微笑んだ。
それから、私達はたくさんの乗り物に乗って、最後は観覧車に乗った。すごく、すごく楽しかった。
「楽しかったですね」
「あぁ」
「あ、明日から学校だ」
「そっか。俺は明日からも絵描こうかな」
「はい!頑張ってください」
翌日
「あ、優希斗さんおはようございます」
「おぁよぉぉぉ…」
「私、学校行かなきゃなんで、そこに朝ご飯置いてますから。行ってきま~す」
私と優希斗さんが次に会うのは、病院になる。
なんて、この時は想ってなかった。
帰ったら、いつもみたいに、一生懸命絵を描いている、
優希斗さんがいると想ってたんだ。