中編 私の部屋の絵描きさん
4月6日
私は、何故か
ずっと謎だった“お隣さん”とデートすることになりました。
「準備できた?」
優希斗さんはもう着替えて…
るけど……
「え、ちょっ、その服…!」
「え?」
いつもの汚れた服ではないのですが…
無地のTシャツ一枚。
ボロボロのジーンズ。
鞄もボロボロ。
ちょっ、その服は無しでしょ!
「優希斗サン…他の服ないんですか…?」
「ん、これが一番マシだと想う」
マジですか。
「じゃあ、遊園地に行く前にちょっっっっっと服屋に行きましょうか」
「…………」
優希斗さんはやっぱり心底嫌な顔をした。
でも、でもさぁ
ス…好きな人との初めてのデートだよ?
最初で最後かもしれないんだよ?
私はこの日、服を買いに行ったのが正解だったのだろうか。
服なんかいいから、もっと優希斗さんと遊べばよかったかな。
どっちにしても、デートをするのは
これが最初で最後だった。
「優・希・斗・さ~ん。自分の服ですよー。自分で選びましょうよ~」
「興味ない」
優希斗さんはボーっと私を見てた。
「あの、さっきから何ですか?私何か変?」
「イヤ?可愛い」
「―――――――――ッ!」
絶対からかってる!
その証拠にすっごい笑ってるし!
「もーいーです!これ着て来てくださいぃ!」
「はぃはぃ」
うぅぅ…
遊園地でも絶対からかわれる。。
「進藤さん」
優希斗さんはもう着替えてた。カッコイイなぁ。
「…ホントもったいない」
「ん?」
「何でもないです。店員さ~ん、これ全部くださ~い」
「かしこまりました。全部で14800円になります」
ん、んんん??
「え、もう一度」
「14800円になります」
店員さんはニッコリ笑って、すごい額を口にした。
「進藤さん?」
「………………………」
どーしよー!
私今10000円しか持ってないし…
遊園地代とかお昼代とか無くなるし…
「ありがとうございます。14800円ちょうどお預かりいたします」
…?
「進藤さん、行くよ?」
「え、ちょ、待って…」
「ありがとうございました。またの御越しをお待ちしております」
「ちょ、優希斗さん!待って…」
「ん?」
「わ…私が服買いに行くって言ったのに…」
「ん、だって進藤さん、お金持ってないでしょ?」
うッ…
「さすがに高校生に服買ってもらうのは…ね」
「で…でも……」
「それに、今日は進藤さんの誕生日でしょ?甘えていいんだよ」
優希斗さんはいつもは見せない笑顔で優しい言葉を言った。
「優希斗さんの“ゆ”は優しいの“優”ですね」
「ん?」
「何でもないです。行きましょう」
今日は一番楽しい日にしよう。
心のどこかでそう思った。
この先どうなるか、どこかで気づいてたのかもしれない。
私達には
明日は来ない