前編 私の隣のおばけさん
これは、一生で一番の出来事。
忘れられない春休みのお話。
私は、アパート『海風』の3階の端………から2番目の部屋に住んでいます。
そして、3階の端の部屋は…
1年住んでるのに一度も会ったことがない“お隣さん”
その方の名前は、真代優希斗。
そんな人といきなり同居することになりました。
あ、申し遅れました。私は進藤南乃と申します。
同居することになった経緯を…どうぞ。
今はちょうど3月の終わりごろなのですが、去年のこれぐらいに越してきた私は、4月に高校2年生になります。
隣の方の噂はいろいろ聞いていたのですが、実際に会った回数0回。
噂その①
実はお化けである。
噂その②
いやいや、実は幽霊である。
噂その③
いや、実は妖怪なのでは・・・??
噂その④(私も実際に体感しました)
夜中にペタペタと不気味な音をさせている・・・。足音?夜行性の妖怪?
キリがないのでこの辺で紹介はやめて…
とにかく!“お隣さん”の謎を解明します!!
そう決意してからもう何ヵ月も経つ。
終業式が終わり春休みを迎えました。
帰ってくると、珍しく、昼間にあのペタペタという音が・・・
チャーンス
壁に耳を押し当てて何をしているか暴こうと想った・・・・・瞬間!
―――――バタンッ
な…なぬ?!!
急にお隣さんちつながっている壁が倒れた。
壁は半分新しく、半分古かった。
前にも同じことがあったのだろう。
“お隣さん”は、偶然新しい壁の前に居たため怪我はないようだ。
どどどどどどうしよう・・・!!
「うわー・・・・すげー・・・・」
壁しか目に入ってなかった私は、不意打ちをされて転びそうになった。
いつの間にか“お隣さん”は私の背後に立っていた。
「うっ…ぅお…ッ。ぃぃぃぃいたんですか…!!!」
「まぁ、とりあえず。」
“お隣さん”は汚れた服を着ていた。
「大家さん、呼んできて。」
いつもの癖で
「何で私が!!」
ッて言いかえしてしまって…。
「え?だって壊したの進藤さんでしょ?」
軽く言いかえされてしまったので、反論する意欲も失い(てか、もともと私が悪いんだけど)大家さんに言いに行きました。
「ありゃぁぁ~……派手に壊れたね」
「・・・・・・・すいません」
「いやいや、謝らなくていいよ。でも、修理屋さん当分使えないからこのまま1ヶ月ぐらいは置いておくしかないねぇ」
・・・・・と、こんな感じで同居(?)生活がスタートしました。
部屋がつながってるだけなのですが、壁が半分ないというのは向こうの部屋がガンガンに見えるわけで。
見えちゃったらお世話をしてあげないといけないわけで。
(放っておけないのです・・・)
なぜなら………
まず、洗濯してない。
次に、ご飯も一日一食(も食べてないみたい)。
そして極めつけは、ずっと絵ばかり描いている!!
謎はひとつ解けました。夜中のペタペタという音はキャンバスに筆をあてる音だったということ。
「ご飯出来ましたよー」
「ん、ちょっと待って…」
私は、真代優希斗さんが描く絵が大好きになった。すごく美しい絵を描いている。絵を描いているときの優希斗さんの眼もすごくきれいだ。
優希斗さんは筆をおくとテーブルの前に座った。
「絵は完成しましたか?」
「ん、まだ」
優希斗さんは、汚れた手でおにぎりを食べようとした。
「優希斗さんストップ!手洗ってから!」
「…………。」
優希斗さんはイヤそうな顔をしたけれど素直に手を洗いに行った。
こんな感じで過ぎていってた訳です。
そして、4月5日。
「あ、そういや明日誕生日だなぁ…」
「ん、そなの?」
「うわっ、ビックリした…」
「じゃあ…どっか、行く?」
「で、でも優希斗さんまだ絵完成してないじゃないですか」
「もうすぐ終わる。何処行きたい?」
「えっ…えっと……」
こ…これって……
デートじゃん!!!
「ほ…ほら!優希斗さんも忙しいでしょ?だ…だから、気を遣わなくてもいいですよ!!」
「別に。ほら、何処行きたい?」
「え、えっと…べ…別に、特に…行きたいとこ…ろ…は…」
「んじゃ………遊園地、行く?」
「え、あ、はい?」
「じゃ、決定」
こうして何故か謎だったお隣さんとデートすることになりました。