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真説・碧宙の星々のレムリア -The First Story That Vanished-  作者: 久遠 魂録


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タケルのミス⁉︎

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

凄まじい着地衝撃と共に、アウローラのキャタピラが地下ドックのコンクリートを激しく削った。背後で重厚な防壁が閉まり、追跡者のサーチライトが遮断される。それまで張り詰めていた空気が、エンジンの停止音と共に一気に抜けていった。

「ふぅ……。死ぬかと思ったぜ、全く!」

マックス(大林マックス)が操縦席のハッチを跳ね上げ、汗を拭いながら這い出してきた。

「死ななかったのは、僕の『気合の物理修理』のおかげだよ、マックスさん」

哲人(緒妻哲人)が、手に持ったスパナをくるりと回して笑う。その隣では、憂(大神憂)が揺れる視線でアウローラの車内を見渡していた。

「……着いたのね。レオ、各部の損傷チェックを。マックスは弾薬と燃料の補充。さあ、さっさと動いた動いた!」

シャーロット(朝宮シャーロット)が、赤のジャケットの襟を正しながら、女王のような威厳で指示を飛ばす。

地下ドックは、古い鉱山跡を改造したような無骨な空間だった。そこには財団の高度な科学技術の結晶が並び、どこか懐かしい機械の唸りが響いている。

「おーい! 理事長! 帰還ご苦労様っす!」

ドックの奥から、騒がしい声と共に一人の男が駆け寄ってきた。オレンジ色のつなぎを着て、鼻先にすすをつけた青年は、シャーロット財団に最近入団したばかりで、この拠点の管理を任されているタケルだ。

「……タケル。あなた、また何かやらかしたわね?」

シャーロットが訝しげに目を細める。

「失礼な! 完璧に整備してたっすよ。ただ、ちょっとその……新型の自動調理器を試作してたら、少しばかり火柱が上がっただけで……」

タケルの後ろで、案の定、キッチンコーナーらしき場所から黒煙が上がっていた。

「おいおい、俺の飯に妙なもん混ぜるんじゃねえぞ!」

マックスが呆れたようにタケルの首根っこを掴み、ドタバタと奥へと消えていった。

そんな喧騒を余所に、憂がふらりとアウローラから離れ、ドックの隅にある古い観測機へと歩み寄った。

「……憂さん?」

哲人が声をかける。だが、彼女は答えない。憂の胸元にある碧いペンダントが、かつてないほど激しく、脈打つような光を放ち始めていた。

キィィィィィィィン……。

不意に、ドック内の全てのモニターがノイズに包まれた。計測器の針が意味をなさず、天井の照明が明滅を繰り返す。

「何だ、この磁場異常は! レオ、異常を確認しろ!」

シャーロットの声に、レオ(鳴門レオ)がコンソールを叩くが、返ってくるのは警告音だけだ。

「……ダメです、ペンダントから発せられる未知の情報波が、電子回路を直接書き換えている。このままだと基地のシステムが自壊するぞ!」

「憂さん! しっかりして!」

哲人は駆け寄り、憂の肩を掴んだ。彼女の身体は熱く、震えていた。

「……音がするの。宇宙の……真理の音が。怖い……全部が、壊れてしまいそう」

憂の瞳から、一粒の涙がこぼれ落ちる。それは、全知全能の力に翻弄される、か弱い少女の叫びだった。

「大丈夫だ。僕が……僕が何とかする!」

哲人は焦りの中、必死に頭を回転させた。物理的に叩いて治せるような相手ではない。だが、機械の仕組みを理解するように、彼女の「心の波形」を合わせることはできないだろうか。

彼はリュックから、自作の「広域電磁波同調機」を取り出した。本来は幽霊現象を観測するためのガジェットだが、今はこれに賭けるしかない。

「憂さん、僕の目を見て。……この音、聞こえる? 僕が作った、世界で一番不器用な機械の音だよ」

哲人は同調機のスイッチを入れ、あえて「ノイズ」を発生させた。規則的で、どこか安心させるような、手作りの機械特有の温かいリズム。

「……哲人さんの、音」

「そうだよ。難しい宇宙のルールなんて、今は聞かなくていい。僕の作った、このガチャガチャした音だけ聞いててよ」

哲人の真っ直ぐな言葉と、彼が放つ不器用なリズムが、憂の周囲に満ちていた荒ぶる力を少しずつ解きほぐしていく。碧い光が徐々に収まり、ドック内の電子機器が平穏を取り戻していった。

「……ふぅ。命拾いしたわね」

シャーロットが大きくため息をつき、哲人の頭を乱暴に撫でた。

「あんた、やっぱりただの発明マニアじゃないわ。憂の心の『調律師』ってところかしら」

「そ、そんなんじゃないですよ。ただ、機械も女の子も、放っておくと機嫌を損ねるから……って、あわわ!」

哲人が赤くなって慌てていると、そこへ再びマックスの声が響いた。

「おい! タケル! 何てことしやがった!」

「うわああ! ごめんっす! 違うんすよ、さっきの停電でシステムのロックが外れて、通信アンテナが最大出力で送信を開始しちゃって……!」

「何だって!?」

レオが顔色を変えて、メインモニターに飛びついた。

「……最悪だ。タケルのミスによる誤送信だ。現在、この基地の正確な位置座標が、全方位に向けてブロードキャストされている」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、ドックの外、山肌の至るところで爆発音が轟いた。

モニターには、無貌教団むぼうきょうだんの大型飛行戦艦が、雲を突き破って降下してくる姿が映し出されている。

「……来たわね。本当に、退屈させてくれないわ」

シャーロットが、不敵な笑みを浮かべて腰のホルスターに手をかけた。

「マックス! レオ! 迎撃準備! タケル、あんたはドジの埋め合わせに、アウローラの外装を十秒で磨き上げなさい!」

「イエス・サー! 死ぬ気でやるっす!」

「哲人さん……ごめんなさい、わたしのせいで」

不安げな憂に、哲人は力強く頷き、愛用のスパナを構えた。

「憂さんのせいじゃない。……それに、ちょうどよかった。さっきの同調機を改良して、教団のレーダーを狂わせる装置を思いついたところなんだ!」

ドックのハッチが開く。

夕闇を切り裂くサーチライトの群れ。その向こう側には、終わりなき冒険のさらなる嵐が待ち受けていた。

「さあ、相棒! 時速百二十キロの続きだ!」

マックスの叫びと共に、アウローラが再び咆哮を上げる。少年と少女、そして騒がしい仲間たちの戦いは、今、さらに激しさを増していくのだった。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

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