表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真説・碧宙の星々のレムリア -The First Story That Vanished-  作者: 久遠 魂録


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/8

【第一部】ドタバタは突然やってくる!

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

「よし……反応あり! 今度こそ、今度こそビンゴだ!」

佐賀県、吉野ヶ里遺跡のさらに奥深く、地図にも載っていない未踏の丘陵地帯。切り立った岩肌の狭間で、緒妻哲人おつま てつとは歓喜の声を上げた。

彼の手にあるのは、廃家電のパーツとジャンクの基板を組み合わせて作り上げた自作の「高周波磁気センサー・プロトタイプ第4号」だ。その液晶画面には、自然界ではありえない規則的な波形が踊り、激しく電子音を鳴らしている。

「この空気の揺れ……間違いない。この岩肌の向こうに、巨大な人工的空洞がある。僕の発明が、ついに都市伝説の扉をこじ開けたんだ!」

哲人は、背負ったリュックの中でスパナやドライバーがカチャカチャと音を立てるのも構わず、前のめりなエネルギーのままに岩の隙間へと身体をねじ込んだ。

14歳の少年としては人並み外れた機械への執着と、未知のものへの飽くなき好奇心。それが哲人の原動力だ。冷たい湿気を帯びた岩の産道を抜けた先、彼の眼前に広がったのは、およそ現代の土木技術では説明のつかない巨大な石の神殿だった。

天井からは、電源も配線も見当たらない未知の発光体が、淡く、それでいて力強い碧い光を放っている。

「すごい……。何千年も前の遺跡のはずなのに、このエネルギー反応は何なんだ?」

哲人は息を呑み、足を踏み出した。神殿の中央、静謐な空気が満ちる台座の上には、一人の少女が横たわっていた。

彼女は、まるで時間が止まったかのように深く、穏やかな眠りについている。そしてその胸元には、神殿全体に満ちる光の源であるかのような、深く澄んだ碧いペンダントが輝いていた。

「……きれいだ。これ、本物のロストテクノロジーか?」

哲人が、吸い寄せられるようにそのペンダントへ手を伸ばそうとした、その時だった。

少女――大神憂おおがみ ゆうが、ゆっくりと、その瞼を持ち上げた。

夜空をそのまま写し取ったような深く透き通った瞳が、困惑したように哲人を捉える。

「……ここは?」

その声は、鈴の音のように澄んでいた。

「あ、えっと! 僕は哲人。怪しい者じゃなくて……いや、調査に来たんだけど、君を助けにきたっていうか!」

哲人は慌てて手を引っ込め、顔を赤くしながらまくし立てた。

「哲人……さん?」

憂がゆっくりと身体を起こした、その瞬間だった。

ゴオォォォンッ!!

神殿全体を揺るがすような、凄まじい衝撃音が響き渡った。天井からパラパラと土砂が降り注ぎ、哲人は反射的に憂の肩を抱き寄せた。

「何だ!? 地震か!?」

「いいえ、これは……“欲”の足音」

憂が短く告げた直後、背後の通路から複数の影が猛烈な勢いで飛び込んできた。

灰色のローブを纏い、顔を奇妙な仮面で隠した集団。無貌教団むぼうきょうだんの襲撃部隊だ。彼らは手にした異形の重火器を哲人たちへ向け、冷酷な声を響かせる。

「見つけたぞ、レムリアの器! そのペンダントを渡してもらおうか!」

「な、なんだよ君たち! 誰の許可でこんな歴史的遺産を荒らしてるんだ!」

哲人は恐怖を怒りで塗りつぶし、憂の前に立ちはだかった。彼は腰の工具袋に手を突っ込み、未完成の「高光度・広帯域閃光音響弾プロトタイプ」を掴み取った。

「僕の、とっておきの発明を食らえ!」

「やめろ、ガキが何を――」

教団の兵士が引き金に指をかけた瞬間、哲人は全力でその黒い塊を床に叩きつけた。

カッ!!

神殿の碧い光をかき消すほどの強烈な閃光と、鼓膜を突き刺すような爆音。

「うわあああっ! 目が、目が潰れる!」

「今のうちに! 憂さん、こっちだ!」

哲人は混乱する兵士たちを尻目に、憂の手を強く握りしめた。彼女の手は驚くほど冷たく、そして小さかった。二人は崩れかける通路へと必死に駆け出した。

だが、無貌教団は甘くはなかった。視界を奪われながらも、彼らは背後から異形の浮遊機械を放つ。それは機械仕掛けの猟犬のように、鋭い駆動音を立てながら哲人たちの背中を追い詰めていく。

「くそっ、しつこいな! 逃げ道が……行き止まりか!?」

通路の先は、先ほどの衝撃で崩落した巨岩によって塞がれていた。背後からは無数のライトが迫り、教団の包囲網が狭まっていく。

その時だった。

ドガァァァァァァァンッ!!

頭上の岩盤が、内側からの爆発ではなく、外側からの凄まじい「物理的な衝撃」によって粉砕された。

「――ちょっと、そこどきなさいな! 私のルートを塞ぐんじゃないわよ!」

降り注ぐ土砂と煙の中から響いたのは、凛とした、そしてあまりにも尊大な女性の高笑いだった。

煙を切り裂いて降臨したのは、丸みを帯びた重厚な鉄の塊。多脚駆動とキャタピラを併せ持つ、シャーロット財団の誇る万能戦車アウローラだ。

そのハッチから身を乗り出したのは、真っ赤なジャケットを羽織り、金髪をなびかせた美女、朝宮シャーロットだった。

「あら、可愛い少年と少女じゃない。レオ、マックス! ついでに拾ってあげなさい!」

「理事長、毎度毎度、無茶苦茶ですよ!」

操縦席から聞こえるのは、冷静だが呆れ果てた様子のレオの声。

「おらぁぁ! どかねえ奴は、このアウローラ様が挽き肉にしてやるぜ!」

そして、雄叫びと共にレバーを叩くマックスの熱い声。

アウローラは着地の衝撃で教団の浮遊機械を文字通り圧殺し、哲人たちの目の前で急停車した。

「乗りな、若人わこうど! ここからは時速120キロの世界だぜ!」

マックスが力任せにサイドハッチを跳ね上げる。哲人は躊躇わなかった。彼は憂を抱え込むようにして、オイルと金属の匂いが充満するアウローラの車内へと飛び込んだ。

ハッチが閉まると同時に、アウローラはホバーユニットを最大出力で噴射。遺跡の壁を、まるで紙細工のように突き破り、外の世界へと躍り出た。

「……私、どうなるの?」

激しく揺れる車内、不安げにペンダントを握りしめる憂に、哲人は全力の笑顔で答えた。

「大丈夫! 理由は後で考えよう。今は――この冒険を楽しもうよ!」

追跡してくる教団の装甲車を、アウローラは泥と砂塵を跳ね飛ばしながら、圧倒的な加速力で引き離していく。

夕日に染まり始めた碧宙あおぞらの下、少年と少女を乗せた鉄の獅子は、運命を切り裂いて走り続ける。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ