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戦場の雨宿り

作者: 総督琉
掲載日:2025/12/31

砲台が火を吹く。

地煙が舞い、炸裂音が鼓膜を揺らす。


ここは戦場。

十年以上続く戦地にて、若い新兵がライフルを持って駆け回る。


「今日も雨か」


乱れた戦場。

崩落した瓦礫ばかりが積もる地で、男は雨宿りの場所を探していた。

戦場で男は一軒の駄菓子屋を見つけた。

そこは男が子供の頃に通っていた駄菓子屋であり、現在では半壊している。

中には散乱した駄菓子、それを見て男は懐かしさに笑みをこぼす。


だが安堵の笑みはすぐに消えた。

後頭部に銃口を向けられ、男はすぐに銃を落とした。

思い出の場所で死ねるなら本望。

そう思い、両手を挙げた男だった。

が、背後にいたその人物は銃を下ろした。


「どういうつもりだ」

「雨宿り中は停戦だろ」


男は振り返る。

背後にいたのはやはり敵兵だった。

彼女を見て、男はある少女を思い出す。


「駄菓子でも食べるか」

「食べるはずないだろ」

「そうか」


男の横で、女は淡々と駄菓子を食べる。


「まだ戦争が始まる前、私はこの駄菓子屋をよく訪れていた。だから懐かしくてな」


女は淡々と話し、男は黙って話を聞き続けた。

雨がやむと、女は駄菓子屋を飛び出した。

女が去っていく後ろ姿を、男はいつまでも見つめていた。


数日後、また雨が降る。

男は別の雨宿り場所を見つけていたが、雨の中を突っ走り、駄菓子屋へ向かった。

中には既に彼女がいた。


「やっと来たか。少年」


男は黙って腰を落とし、駄菓子を手に取った。

二人は雨の中、駄菓子を静かに食べる。

敵兵と二人きりの密室だったが、男の緊張感は既になくなっていた。


それからも雨が降る度に、同じ光景が繰り返された。


だがいつまでも続かなかった。

終戦へ向け、戦地での攻防が激化していく。

既に男の陣営は勝利を間近に控えており、進軍を進めていた。

激しい戦場で、男は引き金を引き続ける。

やがて敵兵士の一人を撃った。

男はとどめを刺すために足早に近づく。

だがその足は近づくにつれゆっくりと、しまいには足を止めてしまった。


快晴の空の下で、ポツンと一滴の粒が落ちた。


いずれこうなることは分かっていた。

いざその時が来れば、それを簡単には受け入れられない。

それでも戦わなければいけない。

男は曇った視界で敵兵の心臓を捉えた。


思い出すのは初恋の記憶。

少年時代、あの駄菓子屋で、男は見知らぬ少女に恋をした。


「…………」


言葉は出なかった。


銃声とともに、初恋は終わりを告げた。

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― 新着の感想 ―
争いは悲劇しか生みませんが… あまりにも悲しく切ない結末です。 でも、実際にどこかで起こっていてもおかしくないですね。 ふと、東西ドイツや朝鮮半島のことが頭に浮かびました。
1000文字以内とは思えない濃密な内容で書かれていました。思わず小説情報を見直しました。 読ませて頂きありがとうございました。
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