表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/20

第7話 冒険者たちの初陣

 それから数日、俺は自分でも驚くくらい真面目に働いた。

 モンスターを錬金しては配置し、罠を組み立て、通路の角度を決め、扉の開閉条件を考える。まるで学生時代に「自分だけの秘密基地」を夢中で作っていたあの頃の再来だ。


 そんな俺を、フェリシアは毎日きらきらした目で応援していた。

 「マスター! お見事です!」だの「その配置は冒険者を惑わせますね!」だの、やたらポジティブな相槌を入れてくる。

 一方でセレナーデは、俺が半端な錬金に失敗して煙を充満させたときにだけ、口元を押さえて「うふふ……もっと無茶してくださって構いませんのに」なんて危険なことを言うのだった。


 そんなふうにバタバタしながらも、俺は徐々に「自分のダンジョン」が形を帯びていくのを楽しむようになっていた。


 そして今日。

 いよいよ、その成果を世に問う日が来てしまった。


 「本日、とうとうダンジョン開放ですね!」

 胸を張るフェリシアは、凛とした秘書のように誇らしげな顔をしていた。その堂々ぶりに、逆に俺の方が気圧される。やめろ、プレッシャーが増す。


 「……ほんとに来るのか?」

 「はい。登録した以上、冒険者ギルドの方から“初級探索対象”として告知されました。すぐにでも駆け出しの方々が挑戦に参ります!」


 うわあ。胃が痛い。


 「では、マスター。こちらを操作して“確認モード”に入ってください」

 フェリシアが端末を示す。


 俺が言われるがままに指を滑らせると──視界がすっと切り替わった。

 自分の姿は消え、まるで幽霊のようにダンジョン内部を浮遊できる。


 「……おお、ゲームでいう“ゴーストモード”だ」

 「はい! 冒険者たちからは見えませんし、実際の戦闘も臨場感そのままに体験できます!」

 「便利すぎるだろ……」


 と、感心していたその時。

 入口の扉ががたりと開いた。


 入ってきたのは若草色のクロークを羽織った魔術師風の少年。妙に気合いが入っていて、「俺たちの初陣だ!」と声を張り上げている。

 その横では、盾を抱えた戦士らしき大男がガチガチに震えていて、足取りすらおぼつかない。

 さらに、やる気のなさそうな盗賊風の女が欠伸をかみ殺し、「めんどくせえ」とでも言いたげな顔で後ろをついてくる。

 最後は牧歌的な笑みを浮かべた僧侶。場違いなほど穏やかな雰囲気で、むしろピクニックに来たのかと疑うレベルだ。


 (……出たな、初級パーティ)


 いかにも駆け出し。俺が子どもの頃にプレイしたRPGの「冒険者ギルドで組まされる最初の仲間たち」感がすごい。

 だが油断は禁物。こういう奴らに限って、妙なラッキーパンチで突破してしまうこともあるのだ。


 フェリシアが小声で囁いた。

 「マスター、始まりますよ」


 俺はごくりと唾を飲み込み、冒険者たちが足を踏み入れるのを見守った。

 ──果たして俺のダンジョンは、“初陣”の彼らをどう迎え撃つのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ