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佐藤はいらぬ所に細かい

 こうして私は兄妹と共に学校へ通い始めた。


「ではお道具箱の確認をしましょうね。まずは糊よ。みんな持ってるかな?」

「「「「はい」」」」


私は糊の蓋を開け、匂いや性能を確かめる。粘着力が甘い。乾いた後に剝がれるか、水分量過多のために紙が湿ってボコボコになりそうだ。この糊の成分を分析したい。

でもこの文明の低さだ。きっと化学物質無しのナチュラル由来で、子供の肌に優しい成分でできているのかもしれない。そこは好ポイントだな。


「次ははさみよ。みんな持ってるかな?」

「「「「はい」」」」


私ははさみの切れ味を確かめる。切れ味が悪い。研ぐか?でもわざと切れ味を無くしているのかもしれない。子供達の安全のために。 だがはさみのネジ部分の滑らかさが足りない。シフォンで拭い、グリースを塗布するべきか。


「次は定規よ」

「「「「はい」」」」


「ん?これは⋯⋯」


正確性に欠ている。少し湾曲しているではないか!メモリの間隔が一定ではないだと?手作りなのか?!長さの基本となる定規がぁ! これではピラミッドは造れない!!


「次は黒板よ」

「「「「はい」」」」


小さな黒板が一人に一つ配られた。質の悪いチョークで書くらしい。私は少し書いてみる。ザラザラとして無駄にチョークから粉を出す感じが許せない。きっちり閉めたのにちょろちょろ蛇口から漏れる水くらい許せない。チョークの 粉塵を吸い込みそうだ。


「次は黒板消し」

「「「「はい」」」」


え?これ布じゃん?黒板消し布じゃん?しかもこの模様どこかで見たな⋯⋯⋯⋯


「あぁ!赤ちゃんの時に着てたピンク服じゃん!」


「シュクルちゃんどうしましたか?」


「先生、この布に見覚えがありまして」


「この布?確か昔、無料同然で売られてたのよ。夜逃げした一家の家に残された布切れだったかしら?」


「⋯⋯⋯⋯」


異世界学生生活もなかなか波乱万丈だ。




学校では読み書きや計算を習う。私はすることが無いので図書室にあった図鑑を一人読んでいる。


「な、なんと。やっぱり魔獣がこの世界にいるのか!どんな魔獣がいるんだ?井戸の中はどうだ?あそこは闇が深そうだ。きっとSランクだろうよ」


まずは森にいる低難易度の魔獣から見ていく。最初は魔獣ウサギ、狂暴で噛みつき、蹴り出してくる。


「そんな危険なウサギがこの世界にいるのか?牙が怖いな。世界共通、ウサギの口はY型もしくはX型であるべきだろう?」


次は魔蛇。普通の蛇より大きく、歯に毒があり、巻き付ける力も強い。


「毒蛇か。私はうさぎ獣人であってマングースではないからな。用心しなくては」


魔獣ねずみ、通常のネズミの数倍はあり、ボスを主とした集団で襲い掛かって来る。


「集団?危険だな。ネズミは夢の国で踊っていれば良し」


魔鹿、通常の鹿より大きく、荒々しい。角を前面に出して角で刺す。


「鹿の角は鋭利で怖いな。鹿は漢方薬になるか煎餅でもかじって、悪マナー客を襲っていれば良いアルヨ」


「シュクル何読んでるの?もうご飯だよ」


「あ、クラリスもう授業終わってた?じゃあご飯食べよう。お腹減ったね。あれ?ノエルは?」


「ノエルはお友達できたからそっち行っちゃったよ。私達もお友達できるかなぁ?」


「クラリスは可愛いからすぐ人気者になるよ。でも怪しい人物がいたら教えてね。井戸の餌にするから」


「あやしい?うん?今日のお弁当は何かなぁ?お母さん何いれたのかなぁ」


「今日は昨日私が狩った豚だよ。凄いツイてたんだよ。急に豚の方から私の方に向かって走って来たの。天の恵みかね~クラリスへの供物かな?」


「シュクルはすごいね。ありがとう」


「あのぅ、一緒にご飯食べてもいいかなぁ?」


「お?」


可愛らしい茶色の髪の女の子が少し緊張した面持ちでやって来た。


「いいよ!」


「あ、ありがとう。私エメっていうの。一人だったから寂しくて。最近引っ越して来たからお友達いないんだ」


「ほう~どこから引っ越して来たの?」


「王都だよ。お父さんが仕事をここでするから来たの」


「凄いね!王都かぁ~お姫様とかいるのかなぁ?」


クラリスは年頃の女の子らしくお姫様や王子様に憧れがある。ほほえましいがクラリスの可愛さを思うと危険しか感じない。薄汚れて荒んだ性がきっと王都には蔓延っているに違いない。


「ふふふ私も見た事ないよ。でも王妃様は綺麗なんだって!王子様もかっこいいってみんな言うよ」


「素敵だわ!」


チッ、王族で見た目もいいだと?いいもん食って飲んで着てるんだろ?人生どんだけイージーモードだよ。大金でガチャ回しまくりだろうよ。百万円でこの店の物どれだけ買えるかな?とかしてんだろ!モゲろ。禿げろ~~~呪いあれ。


シュクルは醜悪な嫉妬&呪いポイントをゲットした。


「でも二人共凄い可愛いよね!!そのシュクルちゃんの耳がハアハア⋯⋯チョっとだけ、耳の先ちょだけ。ほんの触れるだけでいいから触らせて下さいいいいい!!!」


「ええ?」


これはお触りか?!同性だし子供だし有りか?!まあ減るもんじゃないし⋯⋯⋯⋯


「まぁいいよ」


「フウ~~、ありがとう!フ~ではいざ参らん、ああああああああああ!暖かいいいいいいいいい」


まぁ血液流れてるし、室内で暖かいし。


「えええええズルい!!!!」「抜け駆け禁止!!!」「おピンクうさたーん!!」


「え?何?!」


そばにいたクラスメイト達が叫び始めた。目が怖い。こいつら集団魔獣ネズミか?!


「ダメだよみんな。シュクルは耳から病気になるから耳大事にしなくちゃいけないんだよ。見るだけだよ」


「ご、ごめんね」「触っちゃ嫌だよね」「見るだけ、見るのはいいよね」


天使クラリスのお言葉は皆に届いた。だが、最後のヤツはちょっと怖い。角度を変えて立体的に見てるのが怖い。

七歳の子供達ってこんな感じなんだな。そういえば佐藤がたまに会っていた甥っ子もアホだった気がする。


クラリスとノエルはすぐに友人もできて学校生活にも慣れた。

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