佐藤は知らなかったが、真上の部屋は曰く付き物件だった
どこの世界にも闇はある。表では奴隷禁止を掲げているが、借金をして返せない者や捕まった犯罪者などが裏で奴隷として取引されている。最近テクノポリスの者達が大量に若くて健康な者を治験奴隷にする為に買い漁ったおかげで、供給が追い付かないそうな。
特にこの界隈は――
「お嬢さんかね?売り者があると聞いたが」
暗い廃墟にローブを深く被った二人の怪しい者達がいる。
「はい。こちらです。強盗、殺人、強姦、何でもござれの悪党です」
「ほう?この二人は若くて好い顔をしてる。これは小柄で童顔、いいぞ」
「⋯⋯そこは顔ではなくて尻ですが?顔はこの布の下です。ご覧ください」
ここは知る人ぞ知る闇取引現場だ。あるバーで暗号を渡すと注文のドリンクと共に日時が書かれた紙を渡される。そして記載された時間にそこに向かうのだ。
ちなみにギルド長から教わった。
「残りの三人の顔は薄汚い。まぁそれはそれで場末にでも売れば好いか」
「⋯⋯そこは男の三点セットですね。顔ではありませんね」
ローブで顔が見えないが、声からしてダンディーなのに微妙にズレている気がする。この世の顔とは下半身の事だったのか?では頭にパンツでも被るべきか。ダメだそんなの変態じゃないか。
「ふっ、君はまだ年若い女性なのに醜悪な下半身を見ても驚きもしないのだな。さすが次世代の獣王。これからもよろしく」
「⋯⋯見慣れてますから⋯⋯それとこれはいかがでしょうか?」
『騎士団は完全に太陽~裏社会は闇~その間が私達諜報の世界よ~』
『裏社会からも情報は買うし~こちらも与えるのよ~持ちつ持たれつ~』
交渉は成立した。ギルド長から色々教えてもらっていてよかった。
「早くおっ勃ちなさい!跨りなさい!あなた達は今日からうちのニューフェイスよ!じゃあイキますよ~!」
ダンディーおじさんの隣にいた屈強な男が軽快に話し出した。多分彼は店長なのかもしれない。
所でニューフェイスのフェイスはどの部位の話か。
「うむ。タンデム型三角木馬はいいではないか。好く鍛えるが好い」
佐藤の人生では一度も見た事が無い、複数乗りが可能な三角木馬にカタコトと乗せられて外道共は連れて行かれた。 これが夜の世界のドナドナ⋯⋯三角木馬で売られてイクよ⋯⋯
「⋯⋯どこ鍛えるんだよ」
シュクルのつぶやきは暗い闇へと飲み込まれて行った。
「おはようございます。ニーナさんいますか?」
「はい!おはようございます」
町で一泊してニーナさんの家に戻った。彼女は昨日より元気そうで安心する。
「これオレンジとレモン。妹さんにどうぞ」
「ありがとうございます!柑橘なら食べられると思います」
昨日の取引で結構纏まったお金を手に入れた。特に若い二人と小柄な男がいい値で売れたのだ。
「さて、これからの話は内密にして欲しいのですが約束出来ますか?」
「はい。必要とあらば」
ニーナさんに男共を裏で売ったのでもう二度と現れない事を伝えた。
「町の端に売り出している農家と農場があるんです。そちらを買って生活しませんか?治安もここより断然安全ですし、この家と比べるとかなり小さくなってしまうと思いますが、いかがでしょうか?」
「え?お金は⋯⋯」
「この家と土地を買いたいという方がいます。少し借金になってしまうかもしれませんが、農業を続ければすぐに返済できると思いますよ」
「本当ですか?でもどうしましょう?不動産の売買とか、そういう経験がなくて⋯⋯」
「妹さんの子が近い将来産まれるのでしたら、やはり町に行くべきだと思いますし、こんな機会はなかなか訪れないと思います。その不動産屋を紹介しますよ」
「お姉ちゃんごめんなさいね。私があんなヤツらの子を妊娠してしまったばかりに⋯⋯そして冒険者さん、本当にありがとうございました」
とてもやつれた妹さんが話に加わって来た。
妹さんは両親との思い出のあるこの家を手放すのは心苦しいけれど、酷い思いをしたこの家から出てやり直したいという気持ちが強いそうで、また同じ事が起きたらと思うと夜も眠れないと言った。
「決めました。この家から出ます。詳しい話を聞いてもいいですか?」
「勿論ですよ」
次の日私はニーナさんを連れて待ち合わせ場所である町のバーに行った。しばらく二人で待つと一人の男がやって来た。
「こんにちは。物件をお探しですよね?今日は見学という事でよろしいですか?」
「はい。よろしくお願いします」
三人で世間話をしながら歩き、しばらくすると町の端にある農家の家に着いた。
「こちらの物件です。中に物が残っていますが、そちらもお使い下さい」
「え?家具付きですか?食器もありますけど⋯⋯」
「すべて込みで売り出しております」
「凄い⋯⋯」
この物件は裏金で借金を繰り返し、借金返済の目途が立たず裏社会で売られた人物が所有していた物件で、抵当として引き渡されていた。
素行の悪い者が住んでいた知る人ぞ知るグレーな家である。
「それでですね、今ニーナ様がお住いの家と土地を我々で買い取りたいと思います。それでこちらの家を購入という形でいかがでしょうか?」
「え?よろしいのでしょうか?私の家は辺鄙な所ですし、土地は広いですが、家屋は古くて」
「大丈夫ですよ。では交渉成立でよろしいですか?書類を用意しましょう」
ニーナさんは喜んで契約した。なんと借金をせずに済んだのだ。
「ではすぐにでも荷物をまとめて妹と移り住みます!ありがとうございました!失礼します!」
「ニーナさん気を付けてね!」
「はい!」
プラン通りの結果にシュクルも自然と笑顔になる。




