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佐藤はオヤジ狩りも痴漢の冤罪も怖くてたまらない

「強盗魔捕まえました~」


 シュクルの最近のルーティン。まず大きい町に着いたらギルドへ向かう。そしてパンイチおじさんを引き渡しお金をもらう。そのお金でご飯を食べたり宿に泊まったり、ポワールを屋根のある厩舎に夜間預けたりする。とても効率的でよい。魔獣を追って森を彷徨う必要も薬草を探して集める必要もないし、何より社会の為になるのだ。


「あ!あなたね!今有名よ?悪い盗賊やならず者を成敗してくれるピンクうさぎ獣人がいるってね」


「ええ?そうなのですか?」


耳が邪魔だからローブのフードを外していたのは失敗だったか。


「ちなみにオヤジ狩りうさちゃんって言われているわ!」


「オヤジ狩り⋯⋯」


何故だろうか、凄く悪い人になった気分なのだが⋯⋯しかも佐藤的に冷やりとする恐ろしいワードだ。


今日のおっさんはそこそこ有名な強盗、人攫いだったらしく、お尋ね者の似顔絵がギルドに貼ってあった。そこそこの報償金がもらえる。



「あ、あの、すみません、あなたが悪い人を捕まえている方ですか?」


若い二十歳位の幸薄そうな女性が、賞金の受け取り待ちをしていたオヤジ狩りうさぎに声を掛けてきた。どうしたのだろうか。


「⋯⋯この間盗賊に襲われたんです。それで怖くて⋯⋯家までの護衛を頼めませんか?」

「⋯⋯」


さてどうするべきか。先を急ぎたい気はするがお金は欲しい。テクノポリス皇国でもアテナでも観光気分で散財してしまったのだ。う~ん最近荷馬車に乗ってばかりで体も鈍っていたし、久しぶりにいいかもしれない。


「あの⋯⋯それほど遠くありません。今から行っても日が落ちる頃にはここに戻れると思います。褒賞もお支払いします」


「ではギルドを通してもらえますか?クエストにしてもらえるのなら引き受けます」


「え?⋯⋯はい分かりました」


私はクエストを引き受ける事にした。


女性は日用品の買い出しの為に町へ出てきたそうで荷馬車を持っているらしい。私はポワールと、大部分の荷物をギルドに預けた。クエスト中は少々お金がかかるが安全に持ち物を預かってもらえるのだ。


女性の名はニーナさん。彼女の荷馬車にニーチェと乗り、ニーナさんの家がある郊外の農家に向かう。


「あの⋯⋯そのロープは何故持っているのですか?」


「近頃投げ縄が趣味でして。二本同時に投げられるのか試したいんですよ。それと結び方を変えればで用途別で色々使えますし、ロープとは奥深いです。まぁ子供ってそういう謎な努力とかしますよね?あ、チェリー食べます?種が沢山必要でして」


「い、いえ」


荷馬車は人気のない細い道を進む。確かにこの道は危険な匂いがする。


「着いたらニーチェは草でも食べててね。今夜は美味しい物でも食べたいなぁ~」


しばらくすると廃虚みたいな廃れた農家に着いた。


「あ、あの、ここです⋯⋯」


「ニーナさん案内ありがとう。下がってな!」


下がってな!なんて初めて口して心躍るシュクルだった。




「待ってたぜ!お前が俺達の仲間に手を出したガキか?」


「ここじゃあ誰も助けには来ないぜ!ククク」


「こりゃ高く売れそうだ!なるべく傷付けんなよ!」


六人の男達がぞろぞろ古びた建物から出て来た。ニーナさんはこの男共からの命令でシュクルをここまで連れて来たのだ。


まぁそんな事は初めから知っているシュクルだった。


「うむ。子供は必殺技に名前を付けたくなるよな。このチェリーの種を股間に当てる攻撃技の名は何だろうな?チェリーアタック?それじゃあ童貞狩りみたいじゃないか⋯⋯ウム⋯⋯チェリースナイパー?それでは童貞狙いの女⋯⋯」


いいアイディアが浮かばない。チェリー=童貞ってイメージが強すぎないか?そもそも何故チェリーなのだ?形か?二つ連なった球体が原因か?ならカチカチして遊ぶアメリカンクラッカーはいいのか?⋯⋯カチカチは痛そうだな⋯⋯アメリカンチェリーにアメリカンクラッカー。やはりアメリカが童貞=チェリー発祥の地だな。アメリカと言えばチェリーパイ?チェリーがパイパイを――


「おい!聞いてんのかよ!怖くて言葉も出ないか~?イヒヒヒ」


「あ、すみません聞いてませんでした」


何か大事な事でも言われたか?月曜日の学校への持ち物とか?うっかり忘れちゃうから連絡帳に書きたい。


「そいつを捕まえろ!」「エイサー!」「俺が押さえつけるぜ。ムヒヒ」  


「サクランボール、チェリークラッシュ!さくらんボム、アメリカンクラッシュ!さくランボー?チェリー射的⋯⋯駄目だな全くかっこよくない」


「「「ぐはっ⋯⋯」」」「「「あぁぁ」」」


「おい!服脱げよ。パンイチになれ!おい寝るな!起きろよ!まだロープ投げ二刀流試してないぞ!」


どうやらショボい必殺技を叫んでいつもより力んでしまったのか、おっさん達の気を失わせてしまったらしい。


「あ、あの、すみませんでした!」


後ろにいたニーナさんがあやまってきた。


「ニーナさんも脅されたんですよね?大丈夫ですよ」

「はい――」


ニーナさんに事情を聞いてみた。ニーナさんの家族は人里離れたここで農家をしていたのだが、ある日、町に買い物に行った帰りに盗賊が両親を帰らぬ人にした。


ニーナさんには年子の妹がいて、いきなり二人での生活を余儀なくされた。何とか二人で農作物を育てて町に売りに出た帰り、二人を尾行していた盗賊たちがニーナさんの家に押し入った。そして勝手に住みつきニーナさんと妹を奴隷の様に扱いだしたそうな。


今日もニーナさんは私をここまで呼んで来いと命令されたそうだ。ニーナさんには常にお前を監視する男がいると脅され、家には妹が人質としているので町の人に助けを呼べなかったらしい。


「ニーナさんはこれからどうしたいですか?この男共はいなくなりますけど、こんな人里離れた所ではまた同じ事が起きるかもしれませんよ?」


「家と土地を売ろうとしましたが辺鄙な所で家も古いですし、買い手がつかないと言われました。本当は 町で生活したいですけれど、農業以外した事もなくてどうしたらよいのか⋯⋯」

話を聞きながら家の中にあった男達の持ち物を荷台に積む。そして別の袋に金目な物も集める。


「妹さんはどこですか?」


「寝ていると思いますが呼んできましょうか?今妊娠していて体調が悪いんです」


「⋯⋯なるほど?それは許せませんね」


シュクルは久しぶりにイラついた。両親を殺したと思われる男の子を身ごもらせるなどどんな仕打ちだ。一つの家族を滅茶苦茶にしたこの男共に鉄槌を⋯⋯


シュクルは男共の顔を見る。六人いる中で二人は若く、一人小柄な男、残りの三人は不細工だった。


「ニーナさん、ちょっと荷馬車を借りますね。これを運んで来ます」


「はい、わかりました」


男共を二本のロープで三人ずつ結び、意識がないので仕方なく荷台に乗せる。


そして町へと戻った。

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