佐藤は今日も元気に親父を引き付ける
「うさ耳転生おっさん元気でね~!」
「⋯⋯うん。苺さんもね。また来るよ~手紙も書くからね!」
ギルド長は証拠品を持って王都に行きそのまま仕事が入ったらしく、私はニーチェと地元のパックまで戻る事になった。今住んでいる家はそのまま苺さんが住むらしく、結局魔亀はこの家の広い庭で生活を始めた。一度人に飼われると自然に戻るのが面倒臭くなるのかもしれない。
「ドラゴンなニーチェと旅だなんていいじゃないか。アニメの冒険者っぽい」
行きはギルド長の怪しい馬車で一気に来たが帰りはニーチェとのんびりでもいい。異世界旅を堪能するのも異世界の醍醐味ではないだろうか。新たなる経験ポイント大量ゲット間違いなし。
「ニーチェよ。我々の前には二つの街道がある。右へ行くべきか左に行くべきか、それが問題だ」
「ウー(お腹すいた)」
「最近ニーチェは常に腹ペコだな。成長期なのか?だが私もだ。よし森の多そうな道にしようか」
左の道にする。ニーチェは森の草を、私は魔獣を狩って食べよう。魔獣には是非ともどんどん私を襲って欲しい。なぜならモヴェーズ先輩達との別れ際に――
『可愛い子はどこにいても危ねぇからな、この剣やるから使えよ!怪しいヤローは即切り倒すんだぞ!いつでもこっちに遊びに来いよ?いいな?』
と言われ剣をもらったのだ。
「これは相当お高いだろうな。でも貴族学院に入学するには剣が必要だろうし、本当によかった。一生大事に使おう!」
しかも同じものが二本もあるのだ。凄いなぁ~
「それに蜂蜜にお菓子にぬいももらった。それと自分で購入したテクノポリス皇国のお土産とアテナで買ったお土産もあるし、ちょっと荷物が多すぎるかな⋯⋯」
山盛りの荷物だがこれも訓練とするか。ニーチェと乗合馬車には乗らず歩いて次の町まで行く。疲れたら乗ればいいかな。出来るだけ森で採集をして各地にある冒険者ギルドで売って宿代を稼ごう。それに各地の春の味覚も調査しなくてはな。ギルド長がいつも言っている。経験が大事よ~と、味わった事の無い新たな銘柄の酒に対して。
左右が森の道を進む。たまに馬車や農家の荷台が通るだけの静かな道だ。きっとマイナスイオンとかで充満しているのだろう。排気ガスのない道は素晴らしい⋯⋯?
「前言撤回!馬糞が至る所に落ちていて、犬の糞の街、パリくらい歩きにくい!」
これが馬車道の真実だ。次の町までまだ距離がある。このまま行けばパリジェンヌみたいにおしゃべりしながら無意識下で糞を避けられるようになるかもしれない。
ニーチェは草を食べながら、私は売れそうな薬草を見つけながら進む。馬の落とし物は植物にとっていい栄養になるのだろうか、道の脇の植物の成長がいい。
道を楽しく進んでいると、丁度半分くらいの距離に来た時にそれは起こった。
「おじょうちゃん、すごい荷物だね。よかったら荷物乗せるかい?」
簡素な荷馬車の男三人組だった。
「いえ、結構です。お先にどうぞ」
怪しい輩は刺激しない様に敬語で追い払う。
「そんな事言わずにさ~大変だろ?乗りなよ?」
「結構です。私が歩いて家まで帰れたら、将来凄く幸せになれるっていう願掛けをしているので歩きます」
「は?」
「子供の頃遊びませんでしたか?この白線からずれたら死ぬとか、落ちたら負けとか。それをしています」
シュクルは子供だからな。たまには子供の遊びもいいだろう。 私は遊び心の無いおっさんじゃないのだ。
「何なんだよお前!いいから乗れ!荷物を寄越せ!売り飛ばすぞ!」
「きゃぁ~!正当防衛です~」
言質をとったので新しい剣で試し切りを⋯⋯ダメだ。私は辻斬りおっさん侍じゃない。ブッコロは駄目だ。それに男共は動ける体じゃないと大変だ。ロバの件でシュクルは学んだのだ。
適当に蹴りを入れてダメージを負わせる。男共がうごめいている間に荷台にあった一本のローブで三つの輪を作り、男たちの首にはめる。走るのに腕はいらないだろうから肩関節を外す。
「あ~あ~私の幸せになれる願掛けの邪魔をするなんて酷いですぅ~。まぁいいか。忘却はよりよき前進を生むらしいからな!それは忘れよう。じゃあニーチェは荷台に乗ってね!ほら、お前達がんばって走らないと首が絞まるぞ?」
私はローブ片手に荷馬車を走らせる。三人の男達は三人仲良く首で繋がっているので必死になって走っている。
何度か躓いた男達がドミノったが、適当に起こしてそのまま近場の町の冒険者ギルドまで引きずって行った。
「え?!あなたがこのならず者達を捕まえたの?一人で?」
「たまたまです。荷物寄越せとか、売り飛ばすって言われてビックリしました」
「それは怖かったわね。こいつら最近この街道で盗みをしている悪い奴らなのよ!捕まって良かったわ」
「それですみません、ここのギルド長とお話出来ますか?」
「え?あぁそうね、報償金の関係もあるし呼んでくるわ」
男達に蹴りを入れて武器などの所持品を確認してたら何やら出て来たのだ。面倒くさい物が。
「私に会いたいのはお嬢さんかな?私がこの町、ガナイの冒険者ギルド長だけど」
「こんにちは。私はこういう者ですが⋯⋯」
私はギルド長から渡されているバッチを見せる。これはギルド長セリーヌの所属する騎士団の特殊任務に当たる者が所持している身分証みたいな物だそうだ。ギルド長クラスならそれを知っているらしい。
「え?まだ若いのに⋯⋯そうか獣人だもんな。こっちの部屋に来てくれ。手の空いてる者はその男達を牢に入れておいてくれ」
「で、何事かな?あの三人のならず者達に何かあるのかい?」
「はい。至急獣王のセリーヌさんか王宮第三騎士団に伝えて欲しいです」
あの三人の武器は第四騎士団の海上警備兵が持つ物だった。それに荷台には人や魔獣を拘束する物もあり、確実に今回のテクノポリス皇国の件に関わっている。
もしかするとまだ騎士団のガサ入れがあった事を知らないで獲物を探していたのかもしれない。だが⋯⋯
「セリーヌ・ソバージュ公爵令嬢と第三の団長宛か?じゃあ俺の使い魔に手紙を運ばせる。ピッピ!」
「うお?!」
ピッピと呼ばれた使い魔の鳥は私の頭ギリギリを飛んでガナイのギルド長の肩に止まった。
ピッピはカモメの使い魔だった。
「またしてもカモメか!⋯⋯⋯⋯おい、お前の瞳孔小さすぎないか?三白眼どころじゃないぞ?それで見えるのか?」
目を心配した私に対しカモメは『フン!ボケナス』と目で伝えて寄越したのだった。
「手紙を書きました。これをお願いします」
「よし。ピッピよろしくな」
「お前、途中でゴミ箱漁っちゃダメだぞ?うぉぉおぉぉ?!」
ピッピはわざわざシュクルの顔すれすれを通り過ぎて『ショボガキ!』と捨て台詞を伝えて旅立った。ちょっとカモメに嫌われ過ぎだと思うシュクルであった。




