佐藤は露出狂の気持ちがわからない
「はーはーはー酸素!酸素は素晴らしい!」
人々がいる湖から全速力で潜水して進みやっと人気の無い場所で湖から上がれた。
「シュクルお疲れ~タオルどうぞ~」
「アザス!」
すぐに着替え、その場から立ち去った。
「「「「お疲れ様!!」」」」
私、ギルド長、苺さんに諜報員のブレイズさんの四人でホテルで打ち上げをする事にした。
「それにしてもあの新商品の便秘薬効くね。即効性が速攻過ぎだよ」
「はは、だってシュクルがお茶に三倍量入れたからだよ!」
バストラ製薬の社員と密会していた怪しい二人に即効性の便秘薬を規定の三倍量お見舞した。そうしたらすぐにトイレに行ってくれたので意識を奪い、ギルド長とブレイズさんに湖に連れて行ってもらった。苺さんの開発した商品で悪さをする輩には当然の報いだ。
「そういえば何であの二人裸だったんですか?」
「あ~~三倍量の下剤がね⋯⋯」
本来であればあの二人に神の天罰が落ちた感じのド派手な演出をしたかったのだが、小汚いという事で汚れた服を脱がし蔓植物から吊るしたそうだ。 よく知らないが神殿には罪人がトゲトゲのつる植物から逆さ吊りされる宗教画があるらしい。
「あのED薬も面白かった~!開発したの私だけど、メッチャ効くね!あいつらのモジモジして落ち着きの無さが笑えたよ!商品の説明中に笑いそうになったわ」
確かにあれは笑えた。授業中に居眠りをして、目覚めた時にソレが元気になっていて困っている中学生みたいだった。まぁ 実際は薄汚いオッサン達だったが。
ヴィクトワール王国のEDに悩む男性達に魔獣の毒を盛ったのだからこれくらい可愛いものだ。
「それは苺さんがお茶に規定量の五倍のED薬を入れるからだよ。それにしても遅効性の便秘薬もいいタイミングで効いてビックリでしたよ」
正に女神の天罰が下ったと思わせるタイミングだった。ED薬と下剤は同時に飲んでも効くのだな。だが腹痛で倒れるという結果が出た。実に興味深い。
生きた人間を治験奴隷として買い、安全性が絶望的な毒の研究に使うのならお前らもなればいい。
「昨日から町民たちを湖に集まるよう扇動しましたし、かなりの人の目に触れました。皇弟派には大打撃を与えたと思われます。それに戦争や毒の件も多少人々の耳に入りましたので、この件についての詳細を皇太子派の者に渡したいと思います」
ブレイズさんは明日の早朝宮殿のある都へ向かうらしい。
「そういえば皇弟は何をシュクルに言ったの?いきなり皇弟が吹っ飛んでたからびっくりしたよ!アレ何だったの?」
「⋯⋯いや、大した事じゃないよ?皇弟が吹っ飛べばみんなの視線はそっちに行くでしょ?その間に逃げたんだよ。手品の手法だよ」
クソ皇弟め。もうすぐ十一歳の女子に貧乳などと⋯⋯物理的にEDにしてやろうか⋯⋯
「あぁ~あのヤモリがいなくなると虫が飛んで来て嫌ね~窓閉めようかしら~?でも暑いしい~」
ウーパーヤモリは今日神の使いとして皇弟に渡した。やはり大きすぎてヴィクトワール王国まで連れ帰るのは難しいし、海を渡る時にニーチェと違いギルドタグも無いので魔獣の密輸になってしまう。元はと言えばヴィクトワール王国の魔獣だが。
ウーパーヤモリは大人しく、一頭だけなので繁殖の心配もない。食事も虫を食べるだけなのでこの国に残しても害は無いだろうとのギルド長の判断だ。
「亀はどうしますか?それにしても大人しい魔獣ばかりが密輸されていて驚きましたよ。だって強い魔獣の方が毒も強くて多そうじゃないですか?」
研究所で魔獣研究資料を証拠品として押収したが、実験用の魔獣が大人しくて小さい魔獣ばかりで不思議に思った。輸送の関係だろうか。
「シュクル~アテナの養成校出のチンピラなんて弱っちいのよ?強い魔獣なんて捕まえられないわよ~だから魔亀とか大人しいヤモリ魔獣しか輸出出来なかったのよ~。それにここの研究員も攻撃的な魔獣を扱えないわ~」
「そういう事ですか」
魔亀は普通のペット亀としてヴィクトワール王国に持ち帰る事になった。
翌日の早朝ブレイズさんは魔獣研究所で手に入れた証拠品と、皇弟一派が持っていた証拠品と共にバストラの町を旅立った。
「ニーチェ、もうすぐ私達もここを立つよ。その前に散歩でもしようか?」
「ウー(うん)」
今日も天気がいいので暑くなる前に湖の方へ散歩に出かける。最近は人出の多い場所ではあるが早朝なのでまだ人はいない。少しひんやりした空気を肺一杯に吸い込み、もうここに来る事は一生無いのだろうな~と思い少し寂しさを感じる。
「ニーチェ、誰もいなければ葉っぱでも食べて帰ろうか?」
「ウーウ(誰かいる)」
「本当か?」
急いで気配を探ると湖のほとりに誰か一人いた。場に不釣り合いな白いロングローブの大きい男だ。早朝の散歩だろうか。するといきなり――
「私のレーダーが反応した!!」
「え?!」
いきなりこちらを振り向いた男は裸に白いローブを羽織った白いビキニの皇弟だった。白い布地とサラサラロングの金髪が朝日を反射させてュクルの目を刺激する。
「水の女神様だな!!私のレーダーに狂いは無い!!」
「え?!違います!善良な一般的市民です!その、レーダーって何ですか?!」
「コレだ!」
皇弟の指し示す所は白いビキニ。そして⋯⋯白いビキニの中の何かが私を、力強く指し示している⋯⋯気がする。これは⋯⋯
「へ、変態だぁ!!」
そういえば姉ちゃんが言っていた。
『暖かい時期になると変態が増えるからマジ勘弁』
『変態に時期なんて関係あるの?そもそも変態ってどこにいるの?』
『やっぱ露出狂系も冬は寒いんじゃん?春先から冬眠明けて出て来るんだよ。変態は人通りが少ない所とか、少し林になってる公園に生息してる。友達は川沿いで発見したって。少し暗くて人通りが少ない時間に発生する』
『何それ?虫みたいなんだけど』
それを総合すると、暖かい時期の人通りの少ない時間、林や水場には変態が生息しているという事か?姉ちゃん合ってるよ!! ついでに対処法も聞けばよかったー!
「女神様ー!待ってー!」
「嫌!来るな変態!あっちに行け!私は女神じゃない!!」
ニーチェを抱きしめ元来た道を走る。変態のくせに結構足が速い。コイツは背が高いからコンパスの差か?何が悲しくて遠い外国の爽やかな早朝に変態皇弟に追われなきゃならんのだ?!
「絶対に女神様だー!待ってくれー!その貧乳は絶対にそうだぁ!」
「⋯⋯あん?お前、今何て言ったゴラァ!」
足を止め変態ビキニ男と向かい合う。聞き捨てならないセリフを吐かれた気がする。
「やっぱり女神様だ!小さい!」
――プチ――
「誰が貧乳で小さい胸じゃ!変態成敗!ラ・パン家秘伝ウサキック!!!」
昔母は言った。
『いい?基本は逃げる事。でももし逃げられない状況に陥ってしまったら、このウサキックでシュクルが蹴った記憶すらも消し去って逃げるのよ?いい?』
「ぐはっ⋯⋯」
――バタン――
「うむ。レーダーを壊したからこれで安全だ。ニーチェ、行こうか」
「ウーウ(お腹すいた)」
「私もだ。お土産も買いたいよな~ラベンダーのサッシェを買って、間違っても将来お洒落迷走しないようにしよう」
その後、変態第一発見者のお散歩老人は、半裸で白いローブと赤ビキニを身に着けた青年が倒れていたと語った。