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佐藤は船での海外旅行に憧れてた

 月明りがあるので獣人である私には周囲がよく見える。さすがに今夜は洞窟内を動き周る数人の気配があるので中には入らず、洞窟の入り口が見える木陰で監視する。


このクロヒョウ服悪くないな。そこそこぴったりしているから服の擦れる音もしないし、黒いから闇に紛れるのだが、ポイントは真っ黒ではなくて模様がある所だ。より自然に背景に溶け込むのだ。


それにフード付きだからここぞという場面では耳を隠せるな。耳を無理やり曲げると変な気持ち悪さを感じるから極力やりたくはないが。


「お?檻が運ばれる。借金奴隷のユーゴとモヴェーズ商会の男達かな?」


あの闇金はモヴェーズ商会の傘下だった。借金で首が回らなくなった者を海を渡った先にあるテクノポリス皇国に奴隷として売るのだが、船が出航するまでの間は魔獣の管理を任されるそうだ。当たり前だが奴隷として売り払われるなんて本人たちには知らされていない。魔獣の世話や船での下働きなどで借金返済分の労働をすると思っている。


「おら!ユーゴ!お前力ねぇな!女かよ?俺にケツ振ってみろ!ガハハハ!!」


「ぷっ」


ヤバ、つい笑ってしまった。私が見えていないはずのユーゴがこちらを睨む。おっさんにケツを蹴られた態勢のまま。


「おい!早く檻運べよ!お前ちゃんと〇〇〇ついてんのか?マジでモヤシじゃねぇか」


「⋯⋯うぅ」


ユーゴがまだ睨んでる。その顔止めてくれよ、笑ってはいけない制約がより笑いを止まらなくさせる。それは葬式中しかり説教中しかり監視中しかり⋯⋯


ユーゴ⋯⋯お前が立ち尽くして私を睨んでいる間に、手元の檻の中の魔獣が脱糞しているぞ?そのまま檻を斜めに持ってるとお前目掛けてスライドするぞ?


この人魔術師なんだから高位貴族だよな?酷く残念過ぎる。


「やっぱ今回は少ねぇな。最近魔獣が森にいねぇらしい。あいつら狩り過ぎだよな!」


「こんな怖そうな魔獣誰がどうやって捕まえてるんですか?」


おぉ?ユーゴいい質問してくれる。私も知りたい。


「騎士養成校出の奴らだな。海上警備兵も小遣い稼ぎしてるのいるぜ!やっぱ戦闘訓練経験してねぇと出来ねぇよな」


それは知っている。養成校を出ても仕事にありつけなかったヤツらがリストアップされているのを校長室で見つけた。海上警備兵はランダムに船の積み荷の確認をする仕事があるが、モヴェーズ商会の商船の抜き打ちチェックは何故か行われていない。


それに夜間とは言え魔獣の檻を船に積み込んでいたら誰かしら気づくだろうし、中には警備隊に通報する者もいると思う。灯台も近くにあるのだから明らかにおかしい。


「?!」


あ、ニーチェだ!ニーチェは檻の中で大人しくしている。怪我はなさそうで本当によかった。


「これで全部か?んじゃ行くぞ!」


荷馬車に乗せられた魔獣達とユーゴは港方面へ進んで行った。 マジ物のドナドナだな。




船の岸壁で荷馬車は停止した。勿論モヴェーズ商会の商船前だ。


「おい!ユーゴそれを船に乗せるぞ!」


「はいぃ」


ヤメロ。『はいぃ』って何だよ。この男いちいち様子がおかしい。天然なのか?

私もいつ乗船するべきかな?すべての積み荷を積み終えてからがいいか。

あ、ニーチェの檻も運ばれていく。それほど数はないので魔獣の檻はすぐに運び終わった。



「ん?何だ?」


静電気の様なパチンとした感じが顔に当たった。ユーゴが船の横からこちらを見ているので私への合図だろう。周りを見渡すと誰もいなかったので乗船せよとの命令に違いない。私は気配を消してユーゴに近づく。


「今のうちに乗れ」


「臭⋯⋯」


「お前なぁ!俺だって臭いと思ってるよ!俺がちょうど檻を持ってた時、魔獣が糞尿をしたんだよ!それで運悪く俺が糞尿まみれになっちゃったんだ!」


運悪く?違うだろ。お前が斜めに檻を向けてたから転がったんだろ。ユーゴはアホだな。


「大声出さないで下さい。乗船します。決行の合図は?」


「火薬が上がるらしい。それで一斉に始める。この船は大きいが、船員達が過ごす場所は限られる。後で人数を確認して伝えるから、お前は魔獣を保管している場所にいてくれ。乗船して少し左側に階段がある。それをすべて降りた所だ」


「了解」


モヴェーズ商会の商船に乗船した。

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