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佐藤は心配事があると眠れない

「ただいま~!ギルド長、ニーチェ帰ってる?」


「お帰り~遅かったわねカイザー。ニーチェならまだ戻ってないわよ~一緒じゃなかったの?」


 肝試しを終え、いつもより遅い時間に帰宅したのだがニーチェはまだ家に帰っていなかった。普段なら日が暮れる時間になるとちゃんと自分で家に帰るのに今日はどうしたのだろうか。


「いえ今日は放課後、モヴェーズ商会の先輩達と港の海岸沿いにある洞窟に肝試しに行ったんですよ。そしたらそこにあの変な魔術師がいたんです!ボロボロで臭くてヤバかったですよ。あれギルド長の言っていた潜入捜査員ですよね?捜査の邪魔はしないようにそっとしておきましたが⋯⋯

ところでニーチェはどこでしょう?おかしいですね。今日は月明りがあるとはいえ遅過ぎますよ。ニーチェに何かありましたかね?もしかして⋯⋯」


「⋯⋯ニーチェが突破口を開きそうね⋯⋯カイザーはここにいてね。私が様子を見てくるわ~安心なさい、あの子は結構頭がいい子なのだから上手く立ち回るわよ~」


「⋯⋯お願いします」


ギルド長がニーチェを探しに出て行った。ニーチェ⋯⋯まさかとは思うが⋯⋯


「私とギルド長の話を聞いてたのか?」




「ニーチェが自主的に捕まったとするのならアソコかしら?」


今日は月明りがあって虎獣人である私にとっては昼間も同然の視界だわ。


ニーチェはドラゴンの卵討伐で片羽を無くしたシュクルの使役魔獣だけれど、私が想像していたドラゴンとは違って驚くほど頭がいい。人の話す言葉も分かるし、物事をよく見て学習している。だから多分⋯⋯


『今回の捜査の決定的な証拠が欲しいですよね。モヴェーズ商会の商品は黒だったんですよね?で、人材の方はギルド長の知り合いが潜入捜査中で、そうなると残りは⋯⋯』


『動くのは夜よね~そうなると満月付近かしらね?モヴェーズ商会の商船は大体二週間に一度の出航だから~次の出航は満月の日辺りだわ~当たりね!でもそちらの決定的証拠も欲しいわ~』


きっとこの会話をニーチェは聞いていたのよね~



さてさて囮のサバン君は元気かしらね~?


「サバン~じゃなくて借金ユーゴ、生きてる~?てか噂通り臭!」


私はカイザーが言っていた海沿いの洞窟へと向かった。中の気配を探ると人間はサバンだけだったので堂々と中に入る。


辺りを見渡すと両脇に魔獣が入った檻が置かれている。魔獣の糞尿で風通しの悪い洞窟の中は悪臭が漂う。


「あ!セリーヌ!お前なぁーこの潜入捜査地獄だぞ!しかもさっきまで俺のツヤ髪をこの魔獣に毟られてだな、今はレーヴ草焚いたから眠っているけどよぉ」


「まぁ!頭髪について話したのも覚えていたなんて~やっぱりニーチェは天才ね~」


先日のカイザーと私の会話――


『魔術師――悪臭付き短小フード被りな性病男です――精神攻撃しておきました』


『次は髪の毛量関係で攻めるといいわよ~』


を覚えていて実行したのね。記憶力もいい! 初めて会ったのに噂のサバンだって気づいたのね~天才!


「これお前ん所の魔獣だろ?首輪に獣王のバッチが付いててビビったわ。魔獣にまでおとり捜査させるなんて人使い粗すぎだな」


ニーチェの首には使役魔獣のタグや使役魔獣所有者のタグ、それに獣王のバッチも付けておいた。ドラゴンな使役魔獣は大変珍しいので用心の為だ。獣王のバッチは知らない人も多いが、騎士団のエンブレムも小さく入っているので分かる人は多い。


「で、どうなのよ?」


「あぁ明日だ。それにこのドラゴンを運んで来た奴らにはしっかり印を付けたからな。魔術師団もすでにアテナの町で調査を終えたはずだ。主にモヴェーズ商会の会長や次期社長は調査を済ませてあるとの事だ。おい、こちらの情報を渡したんだからセリーヌも何か聞かせろ」


「先程噂で聞いたのだけど~この洞窟に夜な夜な雄たけびを上げる性病おじさんが住んでるらしいわ。物凄く汚くて臭いらしくて、しかも虫まみれなんですって!怖いわ~そんな生物は一生独身でしょうね」


「えぇぇ?俺?!待てよ?!さすがに噂が早すぎる!おい、まさかあのうさぎ獣人か?」


「あははは~ニーチェ!この薄毛の男に何かされたら残りの髪も毟りなさいね~じゃあ明日の夜かしら~?またね~!!ニーチェお休み~」


「ン―(お休み)」


「おい魔獣!寝てねぇじゃねぇかぁ!おい!セリーヌ待て――!!」


サバンがいればニーチェは大丈夫ね。では明日の為にも家に帰って寝ましょ~


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