佐藤が海賊ならマストの見張り台に行きたい
「ねぇカイザー君、君何かしたの?昨日怖い上級生達が君の事を知りたがってたらしいよ?」
「え?」
何?まさか私が諜報員だとバレたのか?まだ何もしていないのに?ありえないだろう⋯⋯
「君の好きな物とか、名前とかクラスのやつらが聞かれたらしいよ。身に覚えはある?」
「えぇ?!無いよ。そもそもまだ入学して二日目だぞ?上級生と会話だってした事ないし、この地に知り合いもいないよ」
「そう?でもあのモヴェーズ商会の息子が君に興味があるのは絶対だよ。気を付けてね」
「?!」
モヴェーズ商会の三男が私に興味を持っているだと?これは絶対に私達がモヴェーズ商会を探っているのがバレたな。まさかギルド長が何かミスったのか?それで逆にギルド長が商会に探りを入れられていて、たまたま私がギルド長と一緒にいるのを見られたとか?
状況は分からないが危険だな。しばらく動くのは控えよう。
「あ!カイザー君!例の上級生達が僕達の教室の扉にいる!君を見てるよ!」
「うぉ?!」
何で?!ジャンの指さす方向を見たらヤバそうな上級生が四、五人いた。そして目が合った⋯⋯
「カイザー君、あの人たちこっちに来るよ、どうしょう?!怖いね⋯⋯」
「⋯⋯ジャンは逃げていいよ。俺が対応する」
教室にまで押しかけて来るなんてヤバいな。こちらはどう対応するべきだ?まさかここで戦闘になんてならないよな?
私は周りで戦闘に使えそうな物を探す。筆記用具、分厚い本、鞄、椅子、机、逃げ道は窓かな⋯⋯
「よう!新入り!お、おはよう。あれだな、お前は小さいからな、これとか必要なんだよ!」
「そうだぞ、べ、勉強も大変だろ?新入生だからな!これヤルよ!礼はいらねぇんだぞ!じ、じゃあな!」
「え?えぇ?ありがとうございます?」
何故か二つ袋をくれて出て行った。
「あ、そういえばあの人達は昨日の⋯⋯」
学食でフルーツをくれた親切な上級生じゃないか。あれは最高に美味しかった。食べ物をくれる人はいい人だ。ならばこの袋は?!まさか?
「カイザー君大丈夫だったかい?あれ?何かもらったの?」
「うん。何かな?」
警戒と期待を持て余しつつ一つ目の袋を開けると⋯⋯
「あぁぁぁ!!蜂蜜!!きゃあ!!嬉しい!!」
なんと高級食材である蜂蜜だった。しかも特級アカシアの花の蜂蜜。嬉しさのあまり瓶を抱きしめ頬擦りする。今日は絶対蜂蜜瓶と一緒に寝る。一日一匙だけペロペロしょう。
もう一つの袋は何だろうか?私の中で期待値が爆上がりしているのを感じざるを得ない。だが期待しすぎた結果、撃沈したくないので気合を入れて期待値を下げる。
「何かな~?何かな?あ、ああああああ!筆記用具!しかも超~可愛い!!」
高くて買えない高級筆記用具だ!お花柄のペンと白いノート。価格の桁が庶民向きではなかったので買えなかったペンが今私の手元に。それに白い紙自体お高くて買えないのに、それを何枚も束ねたノート。これは本当にもらっていいのだろうか?
親切を通り越して心配になってきたぞ。まさか賄賂じゃないよな?
「えぇ?カイザー君、君は本当に彼らと知り合いじゃないんだよね?」
「昨日学食でフルーツをくれた親切な上級生達だよ。今日ももらってしまった。さすがに何かお礼をしないと」
もらいっぱなしはダメだよな。でも私に買えない物を軽々とくれるくらいお金持ちなんだろから何を渡したらいいのかわからない。困ったなプレゼントのセンスなぞ私には無いぞ。
「おはよう!みんな元気だな。授業を始めるぞ。今日は小型船の仕組みについての続きだ――」
へぇ~エンジンの無い帆船かぁ。これは初めて勉強するぞ。ポイントゲットだな。
「まず小型の船舶だ。ここが船体にマスト、帆、ブーム、そしてホールで操縦だったな――」
中々面白い。風で船を進ませるので風の方向を知り、帆の張り方を選ぶんだな。海賊映画っぽいぞ!
船にとって高い波が危険なのは当たり前だが、風は強ければ強いほど速く進んでいいと思っていた。でも帆をきちんとしないと転覆の危険があるんだな。そう言われれば確かに理解できる。でもまぁ風が強ければ波も高くなるか。
「次は風魔法を使った操縦だな。風魔法と組み合わせて速度を出す方法だが――」
えぇ?ここで魔法を使った航海も出てきたぞ。異世界だな~
その後も興味を引く授業を満喫出来た。いつか是非とも船に乗ってみたいものだ。




