佐藤は男子にモテモテ
「次は剣術の授業だよ?早く着替えて外に行こう!」
「お、おう」
着替え⋯⋯男物の下着着ているし問題ないよな。全く何で『ハラハラドキドキ♡男子校に入学しちゃいました!』みたいな少女マンガ的体験を私がしなくてはならないのだ。素で嬉しくない。『正体がバレちゃう♡』じゃなくて、『正体がバレちゃう(殺)』である。
ささっと白シャツと黒いパンツに着替えて外に出る。剣術の授業かぁ楽しそうだ。
「まずは校庭を走れ!」
「「「「はい」」」」
いいな~暖かい日差しの元、爽やかにランニングで汗を流す。これは青春かな?
「よし!剣を持って一対一での訓練を始めろ!」
「「「「はい」」」」
どうやらすでにグループができているみたいだ。私は誰とするんだ?
「カイザーは剣術の腕の方はどうなんだ?残念だが今日は組む生徒がいなそうだな。とりあえず先生とやろうか」
「よろしくお願いします」
父以外と剣を交えるのは初めてかもしれない。ギルド長との戦闘訓練は何故だか暗殺、瞬殺、各種様々なシチュエーションでの殺戮方法を教え込まれている気がするので方向が違う。
今は佐藤が生前の時の剣道の試合の様なドキドキ感が襲う。青春だな~
「え?ちょっと待てカイザー、お前の剣何か⋯⋯外国人だからか?うーん誰に剣を教わったんだ?」
「父です」
「そうか、やりにくいな。剣にはその人の性格が現れるらしいが、カイザーの剣は子供っぽくない。しかも訓練をしている感じじゃない。実戦というか、どう相手を無力化するかを考えながら剣を振ってるな」
「⋯⋯そうですか?」
この先生は何を言ってるのだろうか。剣術を学ぶという事は、ある意味殺し合い方法を学んでいるんだよな?どうしたら勝てるかを考えながら戦わなくてどうする?
「久々だなこんなに真面目に剣を振る生徒は。俺は嬉しいぞ!エイ!」
「うひぇ~!重い!おりゃ!」
「カイザーこれは剣術の授業だ、蹴りはダメだぞ!いや待てよ、それもいいじゃないか!来い!」
「ふん!」
「石ごときで俺の目は潰せないぞ!ははは!剣を二本持て!俺は二刀流なんだ!カイザーに二刀流の神髄を教えよう!それには腕の筋肉増量は必須さ!」
「アベル先生もう授業終わってます!」
担任のアベル先生と超仲良くなってしまった。どこへ行こうともオヤジの魂はオヤジを引き付けるのだ。
私が今日最も楽しみにしていた学食に行く。学食はロマンの塊だ。まず学生時代のみ食べられる期間限定という特別感に、とにかく安い値段。マズイ物ももちろんあるが大人になってからふとまた食べたくなるメニューの一つくらい皆あるものだ。給食もしかり。
「だが、今日は乗り遅れた⋯⋯アベル先生と盛り上がり過ぎた⋯⋯」
すでに半数のメニューは売れ切れていた。きっと残ったのは不味いメニューに違いない。
「う~魚が食べたかったのにな。クソう明日からは絶対に学食争奪戦争に負けない。すみません!何が残ってますか?」
「野菜炒めとレバー、赤ソーセージにレンズ豆、サンドウィッチとドーナッツがあるよ!」
「ドーナッツ!!」
ククク⋯⋯ドーナッツを五つも手に入れてしまった。育ち盛りの必須栄養素を完全無視した欲望丸出しのチョイス。だが私の舌が油ギトギトドーナッツを期待していたのに、これは油で揚げたドーナッツではなくて菓子パンのようだな。それでもいい!軽くだが高級品である砂糖がまぶしてある。ふ~ではいただきましょうか。
「いただきます。ん~んん甘い。幸せの味だ!」
一口一口じっくり味わう。さらに目を閉じて噛みしめる。水を飲んで口をリセットし、また食べる。
「おい、お前新入りか?随分小せぇな」
「ん?そうですが⋯⋯」
気づいたら私の周りを大きめな生徒達が囲んでいた。これは新人いびりか?まさかカツアゲか?金なら無いぞ。お前らより無い。
「そんなモン食ってんのかよ」
「⋯⋯そうですが」
何だ?ドーナッツは食べちゃダメなのか?もしや私のドーナッツを奪うつもりか?!
「だからチビなんだよ!そんなんじゃ足りねぇだろうが!これやるから食えよ!じゃあな!」
「え?ありがとうございます」
ただの親切な人達だった。
――五分前――
「おい、あそこの隅にいるヤツ見た事ねぇな?」
「そういえば一年に新入りが今日から来るって聞いたな。そいつじゃねぇか?どれどれ?⋯⋯可愛いな」
「ドーナッツを幸せそうにモグモグしてるな。可愛いな」
「うさぎ獣人なのか?可愛いな。人参とか与えたいな」
「そりゃダメだろ?獣人であってうさぎじゃねぇんだからよ?何かこう⋯⋯可愛い子が食べる物がいいだろ?フルーツとかじゃねぇか?」
「いいなそれ。買って来ようぜ!それで食べてもらおう」
「何だったんだ?あの上級生は。で、何くれたんだろ?おぉぉぉ?フルーツじゃん!地元じゃ冬の間は絶対に食べられない高級品なのに!うわ~嬉しい!」
この養成校には新人に優しい先輩がいるんだな。では感謝していただきます。
「ん~?!甘い!うっそ~!幸せ~!」
「どうだろ?俺達があげたフルーツ食べるかな?」
「初対面だし警戒されるんじゃねぇか?可愛い子だからな」
「お?おぉぉぉ?嬉しそうだぞ!見ろ!」
「食べてるぞ!笑顔だ!可愛いな!なんて可愛さだ!」
「「「はぁ~可愛い~」」」」
カイザーは本人の知らぬ所で一日目にして上級生のアイドルとなった。




